↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/44

23話 生き残る教皇

その時、男の声がする。


「ああ、ついに…」


蒼黒の闇の縁から、溶け出すように人影が浮かび上がる。


そこに座っていたのは教皇だった。


「教皇、ご無事で?」


カームが向かおうとすると、サナがそっとカーム手を押さえる


「だめ、カーム」


手を包むように押さえる。


その仕草は生前のサナと同じだった、カームは違和感より既視感を感じサナを思い出す。


「アレはもう人なのかな?」


「え?」


カームは戸惑う


そんな二人をよそに教皇は変なトーンでしかも大声で言う


「あ゙っ あ゙っ サナさんお帰りをお待ちしておりましたよ、あ゙っ 私は見ていたのですよ あなたのシルバーコードがあ゙っ あ゙っ 再び紡がれるのを」


教皇がこちらの方に向き立ち上がる時に初めてその異様な光景を目の当たりにする。


「今、道は開かれてぇいまづ」


教皇が立ち上がって、初めて分かった。


彼が腰掛けていたのは椅子ではない。肉塊となった人間だった、

恐しくもに立ち上がった時……


――グチャぁ


と気味の悪い音を立てて血なのか、粘液解らないものが糸を引く


さらに恐ろしい事に教皇の 頭部から背中の中央部まで 肉片がへばりついているのが見える


「おい、これって」


肉塊はドクドクと蠢きその度に教皇の身体がビクつく


「あー。キキキ、ワワワ私も失敗してしまいました、ギヒィ でも“残祷のロザリオ”と、あ゙っ 騎士団長のお陰で生き延びました…あ゙っ 」


抑揚が無く不自然なイントネーションだ


「しかし、あ゙っ 2つの禁呪が失敗したこの状況こそが…あ゙っ まさにこれが…私たちが求める世界の始まりが、 あ゙っ 」


そう言いながらサナの方を向こうとした時寄生している肉塊が蠢き変な音を立てながら首があらぬ方向に不自然に曲げてしまう




三人は呆気に取られ、動きを止めていた。


異常な光景そのものへ意識を縛りつける――それもまた、セシアンの幻術だった


「キモ」


若者らしい言い方だったが、次に出た言葉は幻術を解除するを唱えていた。


「真ならざる形、現世に根差さぬもの、その結びは、静かにほどけゆく――


虚像解縁、(ファントム・アンバインド)


教皇の周りの空気が揺らいだ、貼りついていた景色が、薄皮のように浮き上がる。


ヴァリシアはその呪文に気づきその綻びを視線でなぞり追随する


――「何だか懐かしいわ、この呪文は対なのよね……」


ヴァリシアは昔を思い出しながらこの後に続けるべき呪文を唱える


「光は姿を証し、魂は真実を証す、像と本質、その重ならぬ場所に境は現れる――


True Sight — Revelation.(トゥルー・サイト、レヴェレーション)


先程まで見えていた人間の腕は闇に解けるように消える


カルラとカームは「はっ」と我返り戦闘態勢に入る。


セシアンの幻術が解けて見えてきたものは何とも禍々しい姿だった


教皇の腕は触手とも、あるいは花弁ともつかぬ長い器官が湾曲しながら開いており、

まるで、腐敗した昆虫とサンドワームの髭を混ぜ合わせた様である教皇の腕部分は生態を感じさせず、霊的でありながら触れてはならないものの輪郭だけを晒していた。


腕は地面に着くほど長く その先は 鎌のような鋭利な刃物に変わっていた


「いけません、いけませんねぇ」


「良質な魂が刈り取れそうだったのに残念です。この空間を広げ、め繰り上げるには良質な魂が必要なのです」


幻術をかけてきていた。サナとヴァリシアが解呪の呪文を唱えてなかったら危なかったかもしれない。


「テメェ」


血の気の多いカルラは切りかかる、


刃は教皇の左肩から右足の付け根までの前身頃を見事に両断されるが、

内臓がこぼれ落ちそうになると教皇はそれをかき集め 体にとどめようとする。


それと同時に背中についていた肉塊がまるで内臓があった部分に割り込むようにすごい勢いで入り込もうとする


「ああ、素晴らしい、素晴らしい、くはぁぁ」


教皇は恍惚の表情を浮かべながら気味の悪い生物に変化していく


「な、ん?」


カルラは驚き 恐怖する。


もう教皇の姿は 人間の形をしていなかった。


傷を負ったところからかさぶたのようになり、鎧のようなものが出来上がっていく。その割には他がぷよぷよで気味の悪い 液体が落ちている


教皇は何とか 人の形を保っているがもはや おぞましい生き物のように見える。


伏せていた教皇は口元だけで笑う。


それだけでだけで  にちゃー とした音が聞こえてくるような生物に成り下がってしまった


「私は待っていたのですよ、サナさんがオーバーソウルを連れてきてくれると」


「しかし、想像以上の…魂も、その肉体も、」


言い終わるや否やサナに向かって 肉片や汁ををまき散らしながら手の鎌のような物を振り下ろす


教皇の腕から振り下ろされる得体の知れない鎌の様な攻撃をカームが受け流しと体捌きで

そらしサナをかばう

――ガキンィン


攻撃をそらしたカームだったが、カームはその場にへたり込む


その攻撃はカームの魂を削り取っていた。


物理的に返したものの、それ以上の何かがすり抜けていた


「カーム?」


カームはよろけながら立ち直し


「くぅ、なんだこれ、防いだはずなのに……」


カームは態勢を崩す


「太刀筋の軌道からは避けて、多分、あの腕はこの世界の理のものではないわ、魂も切られるわ」


次々にサナが指示を出す


「カルラの倶利伽羅剣は魂斬りを防げるわ、でも初見で近接攻撃は駄目よ」


カルラを制止しサナはカームに指示を出す


「カルラ、隙を見てカームと剣を取り替えて一度下がって」


「カーム一撃だけいい倶利伽羅剣(くりからけん)で焔雷白熾刃(えんらいはくしじん)…いや、焔雷白熾弧閃刃(えんらいはくし・こせんじん)を」


サナは防御壁を展開しながら指示を出す。


「ヴァリシア、教皇にはデバフは掛からないわ、自分たちの能力を底上げして」


次々と指示が飛ぶそれは本当に生前のサナそのものであり、4人をまとめ上げていた


カームは魂にダメージをくらいながらも既視感を感じていた それはサナの生前 同じパーティーでのやり取りと同じだった


その間にも教皇にも何やら呟く


「あー。…あれで殺せないとは…どうやら、まだ熟成されていないようですね…」


教皇は自分の身体をまじまじと見ていた。

腕の部分以外はブヨブヨの肉塊、肉塊が安定していなかった。


「ライカ…の世界の周波数が強いようです…」


そう言うと戦おうとせず教皇は背を向け霊廟を包む蒼黒の闇に向かって歩き出す。


カルラがその行動を見て足止めをしようとする


「位相、定まれ、焔に止、」

――不動・羂索焔静(ふどう・けんさくえんじょう)


教皇自体を止めようとしたが、スキルは彼を止められなかった。


既に霊的な周波数が違う様だ、もう実体も有るか怪しい

教皇は霊廟を包む蒼黒の闇に手をかけ左右に開くように引き延ばす。


「もう少し…いや、もっと広げなければセシアン界の周波数が捲れに繋がりません」


そう言いながら更に力を込める、蒼黒の闇が更に光や色、魔力を吸い込み闇の端の空間が割れ広がる。


その衝撃で教皇の胴体部分はベチャベチャと音を立てて汚い腐った肉塊が堕ち身体を保てなく成っていた。


同時に蒼黒の闇がその肉塊を啜る。

胸から上まで蒼黒の闇に飲まれ更に首まで飲まれた時に…


――ゴトリ


鈍い音を立て首が床に落ちる。堕ちた瞬間異様なまでに笑い教皇は言い放った。


「サナさん…、いや、女神ライカ、根の国でお待ちいておりますよ、ええ、ちゃんとお迎えはよこしますので、安心してください」


そう言いながら蒼黒の闇に消えていく


「な?」


カーム、カルラはそのセリフに固まってしまう。


しかしヴァリシアは蒼黒の闇からなにか来ることを、サナの思念で感じ共有していた。


「これがお迎え?」


蒼黒の闇からまるでゴキブリのような動きで出てきたものは人の3倍もある不気味な生き物?いや霊体なのか?


「セシアン界の生命体」


サナは呟く。

その生命体は禍々しかった。


その巨大な…それは染みのように揺らいでいた。


黒とも緑ともつかない濁った色をしたその異形は、左右対称に広がる輪郭を持ちながら、決して整った生き物には見えない。


頭部らしき位置には、ひしゃげた冠のような突起があり、その下に、肉の裂け目じみた暗い窪みが口のように覗いている。


眼と呼べるものは判然としない。だが見られている気配だけは濃く、闇の奥にいくつもの小さな光が沈んでいるようにも見えた。


胴は細く長く落ち、そこから無数の触手にも、濡れた髪にも似た線が垂れている。


それらは風もないのに揺れ、溶けるようにほどけ、また寄り集まって一本の肉へ戻る。


両脇には、腕とも翼とも、あるいは巨大な花弁ともつかぬ長い器官が湾曲しながら開いており、全体の姿を人型から遠ざけていた。


それはまさに先程の教皇の腕とほぼ同じで

まるで、深海の生物、朽ちた神像、腐敗した昆虫、そのどれもを混ぜ合わせた末に生まれたもの。


生命でありながら生態を感じさせず、霊的でありながら神聖さを持たず、ただそこに「触れてはならないものの輪郭」だけを晒していた。


それが6体も蒼黒の闇とこの世界の空間の狭間に噛みついている。


「これは?襲ってこない?」


カームは呟きながらスキルを当ててみる


――焔雷白熾弧閃刃(えんらいはくし・こせんじん)


見事にすり抜け焔雷白熾弧閃刃の閃光は蒼黒の闇に消えていく。


「何の歯ごたえも無いな」


空間の狭間に噛みつつ、何か苦しそうに咆哮を叫ぶ。


1体が咆哮を叫ぶと釣られるように、他の個体も叫び始める。


その声は鼓膜より先に脳に響く低い低周波のようだった。


個体によっては金属が擦れるような甲高い音を出す者も混ざっており

それらが無秩序に吠え地面が揺れる感覚におそわれる。


その度に蒼黒の闇が広がりその奥に数え切れないほどの影が重なって見えた


「この数? ちょっとこれ、まずくない?」


ヴァリシアは異様なこの光景に慌てる


ふと咆哮が終わると今まで動かなかった肉塊が気持ち悪い音を立てながら

一斉にこちらに向かってくるのがわかった。


「うわ、これ動けるのか?」


カームとカルラは臨戦態勢に入る。


声に成らない声を発しながら血だらけのイモムシのようにサナ達は囲まれる


――しかし。


サナ達の横を素通りしていく


「な?に?」


一瞬、戦わなくて良い事に安堵するが、その安堵は違う方向で裏切られる


肉塊は蒼黒の闇に吸い寄せられていた


――ぐちゃ、ぶちゃ


「……………っ」


6体のセシアン界の生命体が凄まじい勢いで肉塊を食い散らかし始めた。


肉塊は

――ぐぎぎっ

とか

――ゴボゴボ

とか

中には

――ぐぎゃぁぁ


と人の悲鳴に成るものもいた。


その度にセシアン界の生命体は動きが早まり蒼黒の闇が広がる


攻撃は通らない、攻撃はしてこない、蒼黒の闇が、広がる


「私たちに何が出来る?」


カルラは立ち尽くしていた


「サナ、方法は無いのか?」


カルラは振り返りサナを見る



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。