↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/44

22話 霊廟の中にて

再会を分かち合うサナたちであったが、霊廟の中は異様な暗さであった

本来なら、常に色とりどりの燐光石でライトアップされ、

複数ある柱の螺旋古代語を照らし出しているはずだった。


しかし、その華やかさは無く、

燐光石は魔力を失い、光を消していた。


先ほど突破した結界が僅かにひかり中心に行くほど濃い闇と成っているように思える


何も見えない中で、何かべちゃっとした様な音が時折り成るのと、

この匂いかすかに甘い…様な酸っぱい様な…少し鉄のような金属臭もする。


「これは…」


何かが、また「べちゃり」と音を立てた。

目が暗闇に慣れてくるにつれ、その輪郭が浮かび上がる。

大きな肉片――いや、肉塊だった。

それが一つではない。何十個もある。


奇妙なことに、肉塊は何かを内側へ巻き込むような形をしていた。

その隙間から、衣服の切れ端が覗いている。


「な、…これは…」


カルラから声が漏れる。


人間が捲れているのでは無いかと思わせる肉塊。


それは未だ、息づいていた。


「これはセシアンの服ね…こっちはライカ聖教の…」


ヴァリシアはソウルリンカーであり、人の心や魂には敏感だ。

入る前までは一切気配の無かった人の気配を感じとる。


かなりの数の…


禍々しさ…嫌悪、拒絶、憎悪、嫌気、反感、忌避、etc…

言葉では拾い切れない負の感情が、一斉に押し寄せる


「ううっ」


魔族として長く生きていても、おそらく経験できないであろうそれらの感情が皆の動きを完全に止めていた


ヴァリシアの目にはその肉片に恐怖に怯えた魂がしがみついている事が解る。


そこに黒い蒼黒の魂が覆いかぶさっている。


「レイスと同じ…サナが言っていた異世界の生命体…」


異世界の生き物、又は霊のような者が、本来の人間の死を妨げていた。

苦しそうに蠢きヴァリシアの方に手のような肉塊を伸ばす


「これが、異界の生命体と人の魂が融合する前の?」


ヴァリシアが呟く。


その瞬間、サナの表情が変わった。


何かを理解したように、肉塊を真っ直ぐ見据える


「歩みを止めよ、咲け“蒼蓮紅獄”」


蒼い炎が肉片を包むと肉片は切り刻まれ、赤い血は吹き出すと同時に凍結し赤い花のように咲く、その光景は死体の周りに咲く彼岸花の様だ。


それと同時に闇のように黒い漆緑の魂は金属音の様な不快な悲鳴のような音を立て、離散する。


肉片にしがみついていた本来の魂も存在を薄め消えて行く。


肉片は凍てつき動きをゆっくりと止めた。


サナはつぶやく


「セシアンの…禁呪…戻れないし、魔物化させない…今なら魂は…また戻って来られ……」


サナは声を詰まらせ途中で喋れなくなる

先ほどの肉片が人間だった頃の記憶や思念を読んだのだろう


涙が頬を伝っていた


カルラがため息を付きながら問う。


「サナ、説明しろ」


そう言いながらカルラはカームを起こす。


「ううっ」


カームは意識を取り戻しながら周りを伺う。


「サナは…」


無意識にサナの痕跡を探しているようだ。

サナは眼の前に居るのに気づくことが出来ないカームをちょっと可愛く思いながら言う


「まずは状況確認かしら?」


そう言いながらヴァリシアはこの異様な状態を確認するべく全ての燐光石に魔力を戻そうとする。


器を結び、魔力を分かつ

欠けたる器へ、応じたる力を。


Mana Resonance(マナ・レゾナンス) Constellation(・コンステレーション)


そして燐光石にひかりが戻り始める


霊廟の光源に光が戻る…


しかし、それでも漆緑の霧がかかり霊廟の本殿部分は更に深い蒼黒の闇が本殿を覆い隠している。まるで本殿を覆い隠している蒼黒の空間が霊廟内の色を吸い上げている様に思える程だった


カームが意識を取り戻し目に入る光景は暗い緑色をした空間に複数の肉塊がもぞもぞと動く光景だった。


「ううっ…これは?うわぁ、何だ、こりゃ」


慌てるカームをよそにカルラがサナに近づきサナの顎を手で持ち上げる


「サナ、おまえ何か混じってるな?」


とっさにヴァリシアがサナを背中から抱きしめ


「カルラ、サナの真実を知れば私たちは…」


サナはカルラとヴァリシアに挟まれて微妙な顔をして言う


「あーダメダメ、♫喧嘩はやめて~♪呪いもやめて~♪私の為に争うなんて~♫もうこれ以上うー♫」



「んーやっぱ、いつものサナだな?」


カルラは呆れた顔だ。それを見たカームは生前のサナを見ているような既視感に襲われななら言う


「お前ら、こんな状況に成るといつも余裕かますよな?状況を見ろ状況を、」


カームはこの4人でパーティーを組んで天然ダンジョンに入ったことを思い出していた、この女衆は行き詰まったりピンチの時は必ず変な寸劇がはじまるのが常だった



ヴァリシアはサナを抱きしめながらサナの耳元で囁く


「もう、良いんじゃ無いかしら?」


サナは観念したようにため息を付いた


「ごめんね、カーム、カルラ、わたし、死ぬまでの記憶ほとんど思い出せないんだ」


「は?」


「どうゆうことだ?」


「覚えているのは、セシアンたちの禁呪を阻止しようとして多分 こちらも 開発中の禁呪を使ったのよ。覚えているのは体が即身成仏する辺りからよ」


「セシアンの禁呪だと?」


「いや、開発中の禁呪ってのも気になりますが…」


「サナてめぇ、禁忌をいじるってどうゆう事だ??」


状況を無視した会話に紛れ微かに声がする


「ああ…救援部隊か?」


肉塊の隙間で、僅かに人影が動いた気がした。


「おい、あいつ生きてないか?」


カームは肉塊の合間に人間の形を保っている者を見つける。


「あんた、騎士団長じゃないか?」


うつ伏せ状態から顔を起こし こちらに近づこうとする。


「あんた、カームか…。カルラ先輩も、有名人が来るとは心強いな、」


「他の生き残りは?教皇は大丈夫なのか」


カームが近づき息を飲む

騎士団長は右腕、両膝から下は無く、切断面は内側から捲れたように肉が飛散していた。

それでも騎士団長は這いながら近づき言う


「教皇はご無事か?」


騎士団長の意思は強いが声は消え入りそうである


「奥が暗くて解らん…しかし、ここで何があった?」


カルラの表情から、先ほどまでの軽さが消えた。


治療を試みようとするが、傷口と呼べるものが見当たらない。


肉そのものが内側から捲れ、欠損しているように見える。


幸い出血は止まっている。


だが、何が起きているのか分からない状態で術を掛けるのは危険だった。


カルラは治療を断念し、普段とは違う面持ちで騎士団長に言う。


「騎士団長ロレイン、勇敢なる騎士よ!まだ命の火は消えていない、息を整え、我らに戦況を伝えよ。お前の言葉が、戦いの勝利の布石となる、として報告せよ」


騎士団長ロレインは少し嬉しそうな懐かしそうな顔をして答える


「教皇の護衛で… 直ぐ後ろで構えていました… セシアン達と交渉が決裂してから」


「おそらく大規模呪文が行われたようで、それを阻止する為にソウルラウンダー達と私たちは力を合わせて行動しましたが…」


「セシアンの指導者が、“全ての魂を……境界へ……”と叫んだと思います。その時、色が失われ、空間がグニャリと揺れた…」


「説明しにくいですが、二日酔いのようだった、頭痛と吐き気、目眩、肉を引き裂くような違和感…その上、皆、霊廟に引き込まれるような状態に成り…」


ロレインは吐血し、言葉も弱くなる


「教皇が結界を貼ろうとしたので私もその結界に合わせてAegis Riftでお手伝いをしようと…」


「その時、教皇の残祷のロザリオが発動し…引き込まれながらも何故か弾きとばされ…」


「そこから先は、気がつけばこの有様で、自己治癒をかけながら今に至ります…」



Aegis(イージス) Rift(・リフト)騎士団長ロレインが、祖霊固有魔術とアーティファクトの盾を組み合わせて展開する空間断絶系の防御術。


その盾は失われ、そして術を使った本人も、右腕と両脚を失っている


しかも、教皇の“残祷のロザリオ”まで起動してこの状態でこの状況ある。

禁呪のエネルギーの強さが想像をこえている


「カルラ総長、教皇もご無事で無いかも知れません」


「そうだな、しかし先程から気配はする、後はまかせて今は眠れ」


痛みは遠く、息は静かに、 

脈は絶やさず、命は近く。

心、深山に伏す。


――鎮身封覚護命(ちんしんふうかくごめい)



騎士団長は少しだけ持ち直し、眠る…。


カームは眠ったロレインを抱え、出来るだけ霊廟中心の闇から離れた場所へ移した。


「ここなら大丈夫か、しかし燐光石の光が届かないな」


そう言いながらカームは皆の所まで戻ってくる


霊廟の燐光石は段々と暗くなっていた。どうやら中心の闇に魔力を吸われているようだ。


その闇の中に気配を感じ――



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。