20話 王都到着
とりあえず霊廟に、そう思ったサナだが、孤児院の子どもたちを学園に受け渡す事を思い出す。
コルサ初め皆をサナが手ほどきをしていて、特待試験はほとんど合格するはずだ、
「かるるん、先に学園の方によってもらって良い?予定通り送り届けたいの?」
意外に子供好きのカルラは上機嫌だ、道中も子供たちに冒険譚を語っていた
「あ?あー、わかった、ギルドに置いてもしょうがないしな」
王都の空は雲が厚みを増し、降り出す寸前の静けさが降りてくる
そんな中、王都神授守聖護学園前でライカ聖教のシスターが心配そうに待っていた。
「おらぁ」
カルラは馬の手綱を凄い勢いでで引っ張る。
何だか馬は迷惑そうだが、カルラの迫力有る気に当てられ、仕方なさそうな雰囲気だ。
「シャルトリューズ様の所の子たちね、あれ?カルラさん?容疑者は逮捕出来ましたか?」
カルラの話によると、心ある国の貴族、王族、ライカ聖教の聖職者達はどうやらこの異常事態を把握しているらしく、内部に潜り込んだセシアン達と共犯者等の洗い出しにギルドの協力を得て進めて居たようだ。
シスターは見慣れない馬車に不安そうにしている
「ん?ああ、逃げたな、まぁ、サナのお陰で未遂で終わったな」
カルラは物足りなさそうだ
「はぁ?それでカルラさんが?」
シスターは驚きながらも子供たちを誘導する
「はーい。君たち雨が降りそうなので、急いで宿舎に入ってください。」
「で、サナさんいらっしゃるの?」
シスターはキョロキョロと辺りを見回す、シスターの知るサナは25歳の女性だ
眼の前にいるサナは15歳で顔も変わっていれば、流石に解らない、
その時、ついに雨が振り始める、
雨が土をほどき、微かな営みが一斉に息をする、
漂う…特有の心地よい匂いを嗅ぎコルサが興奮気味に声を上げる
「すごい、アレ何?ライカ聖教の神殿周りが…」
コルサがフラフラに成りながらもライカ聖教の神殿を見上げ、目を丸くする
虹彩が薄く光る
「Aeris Roris?――アエリス・ロリス」
風と水を内包する確かな存在を感じ、コルサは詠唱なのか魔術名何か解らないと言った感じで疑問符を最後につける、それは鑑定であり検知であり鷹の目でも有り魔眼に近い。
しかし、更に
「Praevidentia ――プライヴィデンティア」
そう言うと、また、フラフラとよろめく
水の記憶を風が読み、水滴が弾けた。
次の瞬間の“分岐”が、薄い影になって重なる
Aeris Roris Praevidentia ――アエリス・ロリス プライヴィデンティア
「コルサおめでとう、それ、祖霊魔術よ」
サナはコルサを支えながら、嬉しそうに笑う。
「あそこに…ライカ聖教の神殿が黒い…矛盾…が口を空けてる」
どうやら見えるらしい。
シスターは驚いていた
「虹彩が変わりましたよね?特待試験受ける前に祖霊魔法が使えるの?」
コルサは答えながらシスターの方によろめく
「あ、はい。今、初めて…で、ライカ聖教の下の方…」
今度はシスターに支えられながらコルサは怯える
「抜け落ちる闇の…奥…あれは、何?」
コルサがガタガタと震え始める
「目で…無いものに…見られている…無数の…え?何?…」
コルサは見える恐怖と能力の開花に戸惑っていた
「コルサさん、とにかく休みましょう、解るのね…いま、地下の霊廟は…あ、ひょっとして、サナさんは、もう先に霊廟の方に?」
カルラは、忘れてたと言わんばかりに
「ああ、その件なのだが、手筈通りに避難してくれ、今から霊廟をぶち壊しに行く」
「はい、その件でしたら、準備万端です。孤児院の子たちで最後ですので私たちも一緒に避難します」
ライカ聖教の方で既にセシアンと霊廟の場所は何か言い表せない状態で有ると解っており技能者と
シスターはコルサ含め孤児院の子たちを連れていそいそと移動を始める
「おお、そうしてくれ」
サナは、どさくさに紛れてカルラと共に馬車に残った。
コルサに見えた物はサナには常に見えていた。
その重く暗い矛盾が、ライカ聖教の地下にある霊廟から出る異様な魔力に胸を押しつぶされそうに成りながらカルラを急がせる
「…気分が悪いんだけど行こうか?」
カルラは
「馬車酔いかぁ?まあ、ギルドまで我慢してくれ、セインが人を集めているはずだ、新しい情報も入っているかも知れないしな」
――馬車酔いちがうわよ…と、思いながら
「わかったわ」
「セインとヴァリシアも来てるはずだ」
サナは少し遠い目をしながら答えていた
「うん、そだね」
カルラが未だ転生してこの身体に成っていることに気がついていない。
サナはヴァリシアやカームがどんな反応してくれるだろうと心配していた
「ヴァリシアはともかく、カームは解らないかもしれないな…」
ギルド到着
「サナ、私は先に応援者に説明をしてくる、セインに話を聞いてみてくれ」
カルラはそう言うとギルドの奥まで行ってしまった。
「この姿じゃぁ…」
普通、15歳程度の子供がギルドに来たらお使いか、普通迷子だ
「どうしたものか…ヴァリシアなら、解るかも知れない…」
不安なのか、恐怖なのか、緊張でもときめきでも無い、もどかしい何かがサナの心を占領していた。
「うーん」
珍しくサナは悩んでいた。
そこに突然セインが出てきて声をかける。
「そこの君、」
サナは心の準備が出来て居ない状態で戸惑う
「あへ?」
「さっきマスター(カルラ)に送ってきてもらってた子でしょう?」
セインは優しくサナの頭を撫でる
「大変だったね、怖くなかった?」
サナは、大人びた雰囲気で腕組をしながら顎に手をあて言う
「怖かったよカルラが…」
まぁ戦いたくない相手だ。
「ふふっマスターは怒ると怖いからね」
セインはカルラの戦闘状態を見たのどろうと優しく頭を撫でる
「うん。まったく…首を引っこ抜かれるかと…」
――セイン、実は私が殺されそうだったんだけど…
セインは心配そうにサナの顔を覗き込み、女殺しの可愛い笑顔で言う
「じゃあ、こっちにおいで、助け出した子達は上の部屋で待機してもらってるんだ」
――そうか。被害にあった子達もいるんだ
「あ…」
サナはセインの物腰の柔らかい誘導に何となく連れて行かれる
セインの子供の扱いが上手いのは、天性の才能かもしれない。
「あ、うん。まぁ…」
ギルド内は、まるで戦争する前の様に強者の冒険者と騎士団関係者が集められセシアンに対しての対応と霊廟の異常魔力に対しての論議が行われていた
セインに手を引かれて行きながらカームやヴァリシアを目で探す。
先程まで感じていた気配が薄く成るのを感じていた
――まぁ気配で何となく解っちゃうんだけど…」
少し先にカームとヴァリシアは霊廟の謎の結界へ出向いたようだ、
―――
一方、カームとヴァリシアは一足先に霊廟に向かっていた。
「ヴァリシア、どうした?」
何かヴァリシアが珍しく落ち着かず何度も振り返るので声をかける
「いえ、何か、ん?何だろう?ちょっと気になることが…」
「大事なことか?」
今、サナの気配を強く感じたが、霊廟とは違う場所に感じた。
しかし、混乱させるかも知れず、カームの前で言えないヴァリシアであった。
「いえ、大丈夫です」
そう言いながら霊廟に繋がる回廊にたどり着く。
ライカ聖教の大司教とその取り巻きが管理していた。
「ここは、立入禁止です、今はソウルリンカーさんも許可出来ません」
ヴァリシアは胸元から…胸の間に挟んでいた羊皮紙を取り出す。
「枢機卿から許可を頂いてます。」
ヴァリシアの豊満な胸の間から出てきたほんのり暖かい羊皮紙に大司教は目を白黒させる
「ヴァリシア、そりゃ聖職者にそれはちょっと」
カームは半笑いだ。
「え、そうかしら?」
当本人は全く意識していなく、大事なものは、そこに挟む癖があった。
戸惑いながらも、気まずそうに羊皮紙を取り、確認する
「コホン。…確かに、カルラ殿は?」
「少し遅れております。直ぐに追いついてきますわ」
「出来れば、結界だけを解除出来れば私たちも手伝う準備が有ります」
大司教はそんな事を言いながらため息交じりだった。
それもそうだ、既に大半を霊廟に総動員させている
その大半が結界の中に居る、そして大きい魔力の気配、確認は出来ないが、
何かが起きていることは想像に難くない
いつもは自信に満ちたエルダーだったが、
今日は何処か自分の手が届かなかった場所を見つめる子供の様な顔だった。
「ええ、カルラさん楽しそうでしたし、出来るだけ善処しますわ」
「ふうぅ、ヴァリシア殿とカーム殿はまともで助かります」
そう言うと大司教は額の汗を拭った
カルラは日不見の神を信仰する修験道の人間。
神仏を壊すことが好きではないが何かを正す事に関してハッスルするようである。
それに加えサナがカルラと一緒に調子に乗ると誰も停められない…
過去にそんな事があったらしい
「おまかせ下さい」
ヴァリシアは然もありなんという雰囲気で大司教の心労を和らげようとしていた
しかし 状況は深刻であるということを誰もが悟っていた
更に大司教は願うように言った
「教皇が霊廟から戻っていません。よろしくおねがいします」
「わかりましたわ」
そんな事を言いながら、ライカ聖教の地下に有る霊廟にたどり着く
本来なら、霊廟の入り口は神々しく美しい装飾がなされた大きな扉が心を落ち着かせるはずだった、が………
「ん、なんだ、コレは…」
「……………」
ヴァリシアは言葉が出なかった。
霊廟の扉の背は高く6,7メートル程の高さに成る、艶やかな装飾が、物語を感じさせる細かなレリーフが、彫られているその扉が内側から押し出されそうに成ったかのように、湾曲に歪み、それが氷付いているかのように見え、時間が止まっているような錯覚にさえ感じる
「氷じゃ無いわね…」
ヴァリシアは近づいて温度差が無いことに気づく。
「水晶か?」
結晶が階段状に連結し、中央に向かって規則的に凹みながら
水晶の様なものを構成している。角度によって屈折率が変わり歪んで見える。
カームは小刀で突いてみると、“ビーン”と切っ先が揺れ刃こぼれが起きる
「おおっ?なんだ、これは?」
安易に触っては行けない物かと思いヴァリシアを見たがその瞬間ヴァリシアも動きを止めていた
「そんな、なんてこと…」
視線の先を見ると、結晶の奥の扉に何かレリーフでは無い柔らかなシルエットが見える。
おそらくライカ聖教のシスターの誰かであろう、
前身頃が霊廟の扉と融合しているのだ、
肩から太ももの正面までが扉からせり出して融合している
「……………」
二人とも言葉に出来なかった。
カームは途方にくれて上を見上げると高いとことに未だ何人か扉と融合してしまっている者が何人か見て取れる
ただ融合している訳でなく人の様な形ではなく身体をもみくちゃにされて融合している者も居れば途中から骨をむき出しにして半分は肉が付いた状態で融合している者もいる。
「うっひでぇ…」
「カームさん、物理的に破せそうですか?」
ヴァリシアは低い声で言う。
扉に融合している人はもう生きていない事を察する様な声のトーンにカームも心を決める
「武器を接触させないなら、この方法か…」
カームは精神を集中させ構える。
発動に時間をかけて、ゆっくりとカームのシルエットが薄い紫色に染まる。
――焔雷白熾弧閃刃
カームから振り下ろされた剣から数メートルの光の帯が周りの空気を焼き、対象に向かって飛んでゆく。
以前町中で見せた祖霊魔術とは違い最後の呼名が違った。
これは“焔雷白熾刃”と違い、大型の魔獣やドラゴンに対抗するための技で建築物にも破壊力はとてつもない技だ。
しかし、結晶は不気味な音を立てそのエネルギーを振動で相殺していた。
それなりに結晶は削れたが、その分、分厚く結晶が成形される。
物理でない、魔力でない異質な何かに心折られる
「まじか、」
カームはその場に立ち尽くし
「そんな…」
ヴァリシアはその場座り込んでしまった。




