18話 学園に行く理由
数日後、孤児院の事務所内
「まったく、どういう事?」
サナがシャルトリューズの向かいに座っているが、様子が違う。
背も伸び、見た目は14,5歳に見える程、成長しているのだ。
「さぁ…」
サナはいつもの調子できょとんとしている。
実際には祖霊魔法を使ったのと、一部の記憶が戻った事が原因で有ると思われるが、
定かではない。
多分そうであろうと思いながらもサナ自身はあんまり気にしていなかった。
「確かに私たちエルフは見た目が止まってしまって、年を取らなく成るように見える事はあるんだけど…」
サナの様子を見ながら、シャルトリューズは、なんとも言えない顔をしている
「急に育つって、知らないわよ」
「ふぉふぉふぉ、エルフはそんなもんじゃ、わしなんか、気がつけば爺じゃわい、」
ラケル爺さんがチャチャを入れる。
シャルトリューズはラケル爺さんの言葉に大きなため息をつきながら、
「まぁ、病気に成るより良いわ…」
色々と、最近変わったことが多い。
孤児院のコルサを含め、数名が王都神授守聖護学園の特待生候補に成った。
開校前の特待生試験に合わせ、全てが急ぎ足で進む中、
追い打ちをかけるように、サナが口を開く
「私も王都神授守聖護学園の特待生試験を受けさせて欲しい」
シャルトリューズは戸惑いながらも言葉をもらす
「ええ?不可能では無いけど…」
確かに15歳くらいの見た目に成っているので可能だ。
特性は…定まっていないが、殆どの魔法は水準以上であるが、何でも卒無くこなす器用貧乏の様な印象なのだろう。
それでも、優秀な部類に入るので適性試験代わりに学園の試験を受けるのもよく有る話である。
「サナは何が得意だっけ?」
「そうですね、鑑定とテイマーだと思います」
実際は全く違うが、サナは森でアルラウネから高額で売れる蜜と花粉を採取して孤児院の経済を支えていたので、もっともな嘘を付く。
「ああぁ。」
シャルトリューズは、なんとなく腑に落ちたような顔をしている。
サナは悩ませる前にメリットのある話で畳み掛ける
「まぁ学園も近いですし、月に1,2回は戻ってきてアルラウネから蜜と花粉をちゃんと、もらえますよぉ、」
「それは助かるけど…」
「まあ、だめだったら戻って来ますよ、特に何も変わりませんよ、ね、ラケルおじいちゃん」
「王都から近いのはありがたいのう。で、サナちゃん、わしもアルラウネちゃんに会いたいのう…」
「あー。こんど来てくださいよ―、あ、でもお触りは厳禁ですよ、ツルで逆さ吊りです」
「ほう…興奮するのう…」
爺さんはボケている…多分…
「…」
シャルトリューズは考え込んでいた
本当に、この子は15歳?…いや、こないだまで7、8歳の幼女だったが…。
会話が…元々子供らしからぬ事が多い。
「エルフの子供には稀に有るが、なにか、気に成る…」
まぁ、経済面でも支えてくれそうなので、良しとすることにする
シャルトリューズは考えるのをやめた。
「でも、サナちゃん無理はしないでね」
「へへ。ありがとう。でも大丈夫ですよー。」
実は王都神授守聖護学園の特待生試験の内容は生前のサナが考えたもので、大体解っている。
実技試験もそうだが、高得点なのは自分の特性を自分で正確に見定めているかが重要に成っている。
そう考えると、孤児院の子たちはサナの指導の元、かなりの高確率で合格するだろうと予想していた。
「へへー。これで、王都の霊廟に行けるなー。」
サナは上機嫌だったが、霊廟の事を思い出して真顔になる。
まだ、その時の記憶はハッキリしていない。
しかし、カーム、ヴァリシアの事は思い出して、胸が熱くなる
しかし服が無いので困ったものだ…真顔に成る
「コルサから、お下がりをもらおうかなー」
はたから見ると、サナはニヤニヤしたと思えば、スンと真顔になったりニヤニヤしたり感情が忙しい子供であった。
シャルトリューズその様子を見ながら呟いた
「何だか別の意味で心配だわ…」
―――
孤児院に王都神授守聖護学園の特待生専用の乗合馬車が来ていた。
「よろしく おねがいします」
シャルトリューズは心配性だ、馬車を引く者が、王都の騎士では無かったので、送り出す事に躊躇していた。
「ああ、大丈夫ですよ、ナタリア、任命書とって」
男はシャルトリューズに羊皮紙に書かれた任命書をわたす。
「確かに…」
シャルトリューズは馬車を引く者が男だけなら乗せない心づもりだったようだが、
夫婦で馬車を引いていると解り少し警戒を緩める。
馬車の中には子どもと保護者も同伴しており、それを見てやっと乗せるのを承諾した。
「王都神授守聖護学園開校で人手不足なんですよ」
ナタリアはシャルトリューズが安心するように話しかける。
「わかりました」
「みなさん、王都に付いたらライカ聖教のシスターが迎えに来ますので、ちゃんと言うことを聞いてね」
「はーい」
孤児院のある村から王都まで、乗り合い馬車で だいたい半日の距離、朝出れば夕方には着く近い距離にある。
その馬車に妙な気配を感じるサナ
「引っ張られてもやだなー。」
サナはソウルラウンダーなので、霊的干渉はすぐ分(解)かってしまう。
「まぁ、何処にでもいる類の子達だしなぁ……」
軽く塩をまくサナ。
「ちょ、サナ、何かあるの?」
同乗するコルサが不思議そうに聞く
「あー、いやいや、よくある類の……まぁ、景気づけだよ、えへへ。」
サナはよく解らない言い訳をするが、普段からサナの行動はあまり理解されない。
「では、出発しますよー」
その声に慌てて乗り込むサナとコルサだった。




