17転生受肉後のサナ
※ヴァリシア視点は終わりました。少し時間はさかのぼって受肉後のサナになります。
森の奥に向かっていた。
本来なら、孤児院長のシャルトリューズが危険だと言って怒られるのだが、
サナは自分の庭のように奥に入ってゆく。
ここは、サナが発見された場所である。
植物が結びトーラスの形を取っており、この空間をラケル爺さんが神聖視し立入禁止にしている場所でも有り、今はトーラスの森と呼ばれている。
「確かに周波数(エネルギー波)がちがうもんねぇ…魔物も嫌がってこないし」
ここで受肉転生後の小さな身体になれるため、ここで何をする訳でも無いのだが、居るだけで記憶も少しずつ戻ってきているような気もする
「それに…」
不思議なことに、サナが寝転がっているとリスやその他の小動物が樹の実を運んできてくれるし寒い日には動物たちが集まって身体を寄せてくれるのだ
「これもライカ様の加護かしら?」
その安堵感からいつもここにいる
サナの新しい身体は全てにおいて解像度が高く、少し意識を集中するだけで周りの地形、獣や魔物、人や、人成らざるものまで感知ができた。
何かの加護ではなく、この身体に備わっている何かだった。
女神ライカはサナにこう告げていた
―――第三の身体を持つ現人
サナは意味が解らなかったが、
「へへ。前世三十路前の私から言えば、そのままのスペックで8歳から再スタートよね、何か、得した気分…」
そんな事を考えなら、結びトーラス上で坐禅を組み瞑想している。
サナにとって昼寝みたいなものだった。
―――
そんないつもの場所に今日は先客が居た。
この森には絶滅したはずのアルラウネが居たのだ、成人のアルラウネを見たサナはその姿を見て思わず声を漏らす
「へー、すごーい、綺麗…」
この世界のアルラウネは、保護対象だ、居てくれるだけで森が元気になる。
「ラケル爺さん、喜ぶなぁ」
アルラウネは壺を一つ差し出す。
「この場所に居て良い?だから、お近づきの印…」
「へー。すごい。喋れるんだ」
サナは警戒もせず受け取り、直ぐに鑑定確認する、と言うか食べていた。
それは蜂蜜のような濃厚な甘い香りでは無く爽やかな甘い香りで、フルーティーなシロップの様で、今までに無い経験したことの無い新しい甘味である。若干のリフレクション向上のバフがかかる。
「わぁお、いい香り、良いのこれ?」
なるほど、この植物トーラスの場所は魔物が嫌がって寄ってこない。
アルラウネには良い避難所である。
サナは、ちょっと思いつく
「蜜はもっと少なめで良いよ、でも花粉も、ちょっとだけくれるかな?」
「希少物は少量、でも複数で有る方が、人間をコントロールしやすいんだ」
サナは金儲けに思いを馳せるが、それは又別で、有効な関係を維持する為の効率を考えてのことだった
アルラウネはキョトンとしていたが、自分の葉っぱを三角に巻き花粉を入れて、更に葉っぱで蓋をしてくれる、それをツタで結び持ちやすくしてくれる。
「ありがと、これでエルフたち人間達が大喜びね」
アルラウネはニコニコしている。
「だいじょうぶ、貴方、保護対象だよ、私が一番いい状態で保護してくれるように調整してみるよ」
アルラウネゆっくりと動く、ツタと根っこを進化させているのであろう、かなりゆっくりだが移動が出来るようだ。
「でも、護身用に何か魔法とか使えたほうがいいねぇ」
そんな会話をしながら日々を過ごすのであった。
―――
孤児院のちょっとしたお手伝いをこなし、孤児院長のシャルトリューズの所までやってくる。
「お手伝いも終わったし、少しお散歩行ってきますね」
書類を処理する手を止め、サナに目を配る
「はいはい、敷地内でお願いね」
サナは手を振り、トコトコと歩いて行く。
そんな、後ろ姿を見ながらシャルトリューズは声をかける、
「ねぇ、サナ、みんなと遊ばないの?」
少し気まずそうにサナが言う
「あへ?、へへ…日向ごっこしてると、何か思い出しそうなの」
そう言われると、シャルトリューズも〈なるほど、〉と成り、納得をする
出自が不明なだけに、サナも努力しているのかと考えると
胸が熱くなる。が、しかし、その日向ごっこが物議を呼んでいる
「そう言えば、いつもアルラウネと日向ごっこしているよね?」
「うん」
シャルトリューズはサナにテイマーの能力でも有るのか不思議であった。
「普通はエルフでも一緒に過ごせないよ?」
「ですよねー。でも一緒にいると機嫌良さそうなんだ、また、蜜と花粉もらって来るよ~」
「うーん。まぁ、花粉と蜜は嬉しいかなー。そのへんはよろしくね」
サナが貰ってくる蜜と花粉は森の保護を兼ねた孤児院の運営に関しては余りある予算だ、しかも花粉は化粧品の材料として重宝されている。
シャルトリューズはサナの動きを止める事は無かった。
サナは、ちょこんと頭を下げ部屋を出て行った。
「10歳未満の子は、みんなで遊んでほしいんだけな……」
そんな言葉を漏らしながらシャルトリューズは仕事を続けた。
――
サナは孤児院の西にある植物トーラスの上で座ったり、ゴロゴロしている。
「アルラウネが懐いてくれるのは、この身体のせいかなぁ…」
今日はアルラウネは居ないようだ、本当は魔物であるアルラウネに御霊菊理が可能なのか試そうとしていた。もちろん本人の了解を取ってだが……。
元々術者二人で行う事が必要で有る高等呪文だが、一人で行える術式を思いついて…と言うか思考に浮かんで来ていたのだった、サナは生前と同じように研究バカであった。
「教えてくれたのは祖霊かな-。いけると、思うんだけどなー」
実際は思いついたのか祖霊に教えてもらったかは、定かではない。
でも余りにも鮮明なインスピレーションは何に教えてもらったかで定義付けが出来、
作用反作用はその魂に繋がる事が出来る。
ひょいと座り直し手のひらを太陽に透かして見る
「しかし、本当に、この身体…」
調子の良すぎるこの身体に付いて、ライカ様の言葉を思い出していた。
―――第三の身体
「何だろうねぇ…」
祖霊達との交信もせずとも考えるだけで思いつく?もしくは思い出すように解る、
魔素の流れ、エレメントの存在、空気中の水の記憶、生き物の位置や、その個体の感情までなんとなく解る。
どれも、今までは、ソウルリンカー祖霊魔術等を使って得られるものだったが、今では簡単にわかってしまう、しかも前世少し苦手だった標準のエレメント魔法も人並み以上に使える。
生前はソウルラウンダーと言う職業で祖霊や、エレメントと絆を繋ぐ特殊職業だったが、御霊菊理のような複数術者が必要な特殊な祖霊魔法も今は一人で出来そうな気さえしてくる。
「まるで、生前のスキル全てが息を吐くように使えてしまう…これはもう…さらなる上位職とか?そんなん有ったっけ?」
記憶は、戻りはじめているが、まだ混乱している。
死んでいる時間をすごく長く 何十年と感じていたのだが、実際は1日も時間を使わずに死んで直ぐこの身体で現れていることになる。
「と成れば、霊廟の事が気になるけど…」
何か大変な事を行ったような気がする、王都でとんでも無いことに成っているのでは無いかと思うが、記憶があいまいだ。
しかし、この王都に割と近い孤児院が平和なところを見ると、大したことが起きてないと推測し、のんびり考える。
「うーん。なに使ったのだっけ?…」
サナが悩んでおると、ある獣人が近づいてくる。
「あー。やっぱ、ここにいたのかぁ」
振り向くと獣人の〈コルサ〉が来ていた。
コルサは16歳で、もうすぐ学園に入学予定で、孤児院を出ていく、
とてもしっかり者で見た目は人間の綺麗なお姉さん。
長い黒髪は丁寧に編み込まれていて、肩から背中にかけて一本の太い束が落ちている。
色白で、桜色のふわっとした服、肌との対比で桜を彷彿させる…そして何より、
頭の上。
ぴょこん。
狐耳。しかもふわふわ。反則だ。
「ちょっと相談があって…」
「ん。いいよー」
サナはモフりたい気持ちをおさえて、冷静さを保つ。
「サナ、私、魔法が得意では無くて…」
「へぇそうなの?」
「他の子から聞いたのだけれど、サナは特性が解るって聞いて…見てほしいの…」
実は、孤児院内で、サナは鑑定眼を使って大体の適性を伝える事を行っていた。
そうすれば王都神授守聖護学園の入学試験を有利に進められるのだ
入学すれば王都から支援金やら色々メリットが有り孤児院が潤うからだ
「うん。いいよー、孤児院に貢献したいもんね。」
孤児院の子どもたちは皆、孤児院存続のため色々考えているのであった、皆いい子である
「んんっ」
軽く咳払いをしながら、集中モードに入る
そして、息を吐くように術を使う。
ヘーゼル色の瞳が僅かに光り金色のように映る
「風と水、が近くに…、最適職はレンジャーかな?何世代か前にエルフの血が入っているのね…」
ここまでなら鑑定眼なのだが、今回ちょっと違った
「どう?くくる?」
サナは無意識に〈くくる〉と問うていた
「え?なに?まぁ…ぜひ…?」
コルサもいつものサナとの違いに戸惑いながらも意味も解らず了承する。
「じゃあ、成すね」
「ふうぅぅぅ」
サナが息をゆっくりと吐き出す。
「賜ひし霊の直霊よ、幸霊で想ひ和霊にて繋ぎ、奇魂にて再建し、荒魂にて顕現す」
すると空間が歪んだように見える、まるで水面に揺れる幻影のよう
「祖霊よ、元素霊よ、水の記憶をたどりて…血に住まう微小な者の原子転換の力を示せ」
その言葉と共に
サナの正面には霧のような空間が現れ、それは霧なのに電化していた。小さい稲妻が所々に受けられる。
まるで薄い雷雲のようにサナの前に現れる
「思、」
──内側での思考(自己完結)
一言、言うと手印を横に動かす、横一本に電化した霧が裂け、避けた部分は真っ直ぐに細く稲妻が走り留まる。
その稲妻は不思議なほど潤った稲妻だった
「想、」
──他者へ“向き始める”/言語化・共有の入口(脳内から外へ)
同じく手印を縦に切る、同じく稲妻が留まる
「願、」
──未来へ向けた感謝の方向づけ(目的ベクトルが立つ)
単語一つ一つに活きよい良く十字を切って相応する手印(契手)の結び、つぎに刀印で横・縦の順に五縦五横の直線を空中に画する
「祈、」
──上位存在・祖霊・世界・運命など「自分を超えるもの」へ委ねる形式
「念、」
──一点に集束し、持続し、離れない意識(定着・集中・持続)
「誓、」
──念を“撤回しづらい形”に固定する(誓約/誓願/盟約)
「謝、」
──謝意(支えへの認知と返礼意思)
「恩、」
──受け取ったものが“負債”として確定する(恩義)
「報、」
──具体的に返す(報恩・恩返し)
「礼、」
──社会的・儀礼的に形式化し、関係を安定させる(礼法・礼節)
十個の単語を言い終わると稲妻を五縦五横に編み込んだ格子が張られ稲妻を安定させるように霧がまとわりつく、
この一瞬でサナは心の中で術がしっかり組まれ構成しているか確認する
「……十字……――符号化――…」
サナの“十字”と思考と同時に“符号化”と言う思考が重なる。
「……印……――鍵交換――…」
又、同じように“印”と思考と同時に“鍵交換”と言う思考が重なる。
……刀印……――アドレス指定――
……五縦五横…… ――二十五ノード、インストラクション――
重なる言葉は違えど…その意味は統合した認知に至る
――この澄み渡る声は――
――ああ、そう言えば私たち……
ふふ、と、サナの口元がひとりでに緩む
「思想願祈念謝恩報礼」
今度は単語を続けて読みそれを刀印でコルサの前に押し出す、するとコルサを細い稲妻を内包する霧がコルサを包み込み拘束する。
「―――御霊菊理」
この言葉が終わった瞬間、稲妻の糸と霧の空間に包まれ、コルサは溺れるように、感電する、さらに稲妻の細い糸に縛り上げられ悲鳴を上げる
「こふっ…ん゙ん゙うぅっ…きゃぁぁ…あ…あ゙…あ゙ぁ…」
コルサは噎せ返りながら、ビクンと痙攣し悲鳴を上げ、気を失い崩れ落ちる。
サナはとっさに抱きかかえる。体格差が有ったが、ライカからもらった身体は、いとも容易く受け止める。
「おっと……。へへ、やれるもんだなぁ…」
一人で成功してしまい、その途中何かと統合した事に震えていた。
ふと、手触りの良い狐耳
「ふへへ、これで狐耳モフリ放題」
水分の帯びたコルサの顔を拭い、寝かせ膝枕をし存分にモフリ始める。
コルサはボンヤリとサナを見上げていた
「魔力の流れも、問題ないわね、ちゃんとヘテロクロミアに成ってる、祖霊さんが歓迎してる証拠(御霊菊理 成功後とスキル執行中には虹彩が変わる)」
サナは、普段、鑑定だけをしていたが、つい調子に乗って試しに、ソウルラウンダー時代の術を使ってしまった。
それは生前の方法とは大きく異なっていたが、何故か即興での改変であった
「媒体や日時、リンカーの協力、魔法式無しで御霊菊理が出来るとは…」
この身体ではやはり一人では無いと思い知る、しかも、思考に意味不明な言葉も多く流れてきていた。
「ちょっと覚えていないなぁ…」
でも研究したくてちょっとウズウズする
「ううーん」
コルサは少し泣きじゃくって寝てしまったような顔でスヤスヤ寝ている。
「そう言えば、カームもヨダレ垂らして倒れてったっけ…」
「!」
「かーむ、誰?、あぁ、カーム?」
サナは額に手をあて、痛みに耐えながら記憶を紡ぐ。
本格的に記憶を取り戻しつつ有るようだが、
頭痛と共に大掛かりな術式の記憶―
「なんだっけ?」
何だろう頭だけではなく全身が痛い…
「あいたたた…」




