16話 ヴァリシア視点 符合する真実
ヴァリシアは少し乱れた髪を直しながらため息を吐く。
「……」
こんなに幽渡エリゾンが上手く行った事は初めてであった。と同時に諜報作業が上手く遂行し、かなりの情報が取れた事に驚いたが、他に霊的干渉が無かったことが更に驚きだった。
――霊的エネルギーが霊廟中心に無くなっている
だからこそ上手く行ったのか?
そんな事を思いながらヴァリシアは目を閉じ、オレンジの髪をかきあげ、長い髪を右の胸元に抱き呟く
「サナの言う通りだったわ…」
ゆっくりと目を開ける。
そこには何から話すべきかと言う戸惑いの色が見える
「国の戦力弱体化も誘拐も…」
「セシアンの末端は何も知らない…だから私たち気づけなかった」
カームはサナの手紙を思い出していた
「サナの手紙に有った二重構造って話か?」
「ヒッケルさんの話と附合しますね」
セインも記録ノートを片手に確かめている
「大筋において予想どおりだな」
カームは椅子に腰をかけて居たが天を仰ぐようにのけぞる
「“ソウルラウンダーが居る限り、有利な外交は成立しない”って」
自分の肩を抱くようにしながら少し怯える
「外交の時の立ち会いの事か?」
サナが外交交渉が得意なことを思い出す
「内心(悪意)を読まれる国家は危険とか言って、数年前から諜報員が潜り込んで…」
内部から分断して…。」
「なるほど、確かにそんな揉め事は近年有りましたね」
セインは、成る程と、自分の調査内容と照らし合わせ、意思を固めるような仕草をする。
「でも変…」
「じゃあ何故魔族の管理する訓練用ダンジョンで多くの人間を殺害し、レイスまで召喚したのかしら…」
「ひょっとして、麗石導環の乗っ取りの件と関わりが?」
「それは、サナの伝言で別で動きがあって阻止出来ているわ」
「どうやらまた別の目的が有るのかも知れんな」
「セシアンもソウルラウンダーも霊廟に集まったようなの、でもそこから先は結界の様な物があり、幽渡エリゾンでも…いや、幽渡エリゾンだからこそ近寄れなかったわ」
「なるほど、まあ、訓練ダンジョンの件だけで十分な証拠です…」
「あとセシアンの上層部の会話から少し解った事が有るの、道なのかな?門?とか…捲る??」
「なんか気持ち悪い…人間が道具とか…使い捨て?セシアンの人間も同じって?空間が避けるとは?…」
「何ですか?その空間の裂け目とわ?」
セインが不思議そうに聞き少し混乱する。
しかし、カームはそんな事は気にせずヴァリシアに問う
「サナは無事なのか?」
カームの低い声が、部屋に染み渡るようだ。
「それは…」
ヴァリシアはその低い声に落ち着きを取り戻した
「前に話した通りですわ。ライカ聖教の箝口令があっても霊廟に向かいましょう、もし助けられるのであれば…」
死にきれていないコレが実は一番近いとヴァリシアは考えていため、カームを直視できない。
「訓練用ダンジョンレイス事件の情報も有って、ライカ聖教の箝口令もギルド経由であれば無視できます」
場の空気に少し焦ったようにセインが補足を入れる。
「そうか…」
状況を察しカームは肩を落とす
「貴方には信じられないかも知れませんが、サナの気配はとても薄いです。でも弱い波長は残っています、確かめましょう真実を。」
ヴァリシアの言葉を聞くなり
「…少し、一人にしてくれ」
カームはそう言うと外に出ていってしまった。
それを目で見送り軽いため息を付く、
「ふぅ…」
「セインくん。もしセシアン達の計画が本当に行われているとしたら霊廟に行った王都の沙庭職は……全て殺害されている可能性が有るわ」
「ええ?本当ですか?」
ヴァリシアは少し俯き髪で表情を悟られ無い様にしながら、話を続ける
「霊廟に全てが有るわ、セインくんは動ける腕利きを集めて待機してほしいの、それと祖霊魔法の使い手も」
「わかりました、ギルドマスター(カルラ)がもうすぐ戻ると思うので合流しましょう。」
セインは思い出したかの様に言う。
ヴァリシアもすっかり忘れていたようだ
「今はどちらに?」
「マスターは学園生の誘拐に関して調べを進めていますが、もうすぐ戻るはずです」
「そう…」
「ヴァリシアさんは、どうすしますか?」
セインは心配そうに耳を斜めに反らせる。
「私とカームで、ライカ聖教の祖霊の霊廟の様子を見てみるわ、まぁ…そんな事は無いと思うけど私たちが死んだら後をお願いしたいの、死者は少ないほうが良いわ、」
ヴァリシアは淡々と指示を出す
「わかりましたが、死なないでください。」
セインの尻尾は小さく丸まっている
「ふふ、ありがとう、可愛いわ、多分大丈夫よ」
そう言うとヴァリシアはカームを探しに出た。
―――
カームは王都を見下ろせる丘の双樹の根本に座っていた。
その姿は決意の固まった男の覚悟の匂いが漂っている。
おもむろにカームは言う
「ヴァリシア居るんだろ?」
ヴァリシアは少し驚きながらも優しく囁く
「はい。確かめに行きましょう。サナ事、空間の裂け目を…」
カームは腹を決めるまで待って居てくれた事を感謝しながら頭をかく
「何だか、済まないな、またせて、」
「良いですわ、じゃあ行きましょう、私はサナの事、諦めていませんわ」
「ああ」
二人は霊廟の方角に向く。
華やかな王都、それを見守るはずのライカ聖教の建物は不思議なほどに暗く重い




