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13話 ヴァリシア視点 カクテル 断片の解

その後、ヴァリシアは

ライカ聖教の辺りを思念体で探るが、ライカ聖教の中央教会には結界が施されていて入れない。

ライカ聖教側の同業者も国外に出払っていると言うが、実際にはダンジョンで殆ど死んでいる事を知っている。なぜ、隠す?


隠されると、カームの言う通り慎重に成らざるを得ない。


民間の同業種が多く失踪し、居なく成っていて何かに巻き込まれているのは確かである。


サナも、もしかしたら・・・


ヴァリシアは宿屋の横にある“バルーハウス・パブ”へ足を運んでいた。

夜の帳が下りるころ、彼女はカウンター席に腰を下ろし、小さく息を吐く。


「ふう……もう、かなりの大事(おおごと)だわ」


ため息まじりに言いながら、カウンターの向こうのウエイターを呼ぶ。

少し目を細め、懐かしむように微笑んだ。


「ジェルマン、ご無沙汰しております」


バーテンダーは “やはり来ましたか” という顔をして、穏やかに頭を下げた。


「ああ、ヴァリシアさん。久方ぶりですね。つつがなくお過ごしでしたか?」


この店を選んだのは、偶然ではない。


ヴァリシアがここに来た理由のひとつは、この男――ジェルマンの存在だった。


彼はエルフ族で、見た目は五十歳ほどに見えるが、実際の年齢は誰にもわからない。

奇妙なことに、彼は人族の寿命周期に合わせて、定期的に“別の顔”で現れるのだ。


今回の姿は少し垂れ目で、どこか人間味を感じさせる穏やかな顔立ち、

礼儀正しい口調はそのままだが、今回は、間の抜けた優しい話し方をしている。


ジェルマンは沙庭職でもないのに、特定の神――酒の神と交信し、

その“答え”をカクテルの形で示すことができるという。


ソウルリンカーは高位の神とは直接交信できないため、ヴァリシアはサナ・ククルの状態を、この男の“杯の神託”で占ってもらうつもりだった。


占いというより、酒の神に伺いを立てるに近い行為である。

ヴァリシアは何も言わずジェルマンの顔を見ていると


「沙庭職の方々には、かないませんね」


ジェルマンは肩をすくめ、カウンター越しに姿勢を正した。


その所作には、長い年月を重ねた者だけが持つ静かな品があった。


「今日は、何をお飲みになりますか?」


低く落ち着いた声。まるで熟成したウイスキー樽が香りを放ちながら語りかけるようだ。


「“断片の解”を、カクテルにしてくださいな」


ヴァリシアは少し斜め下を見つめながら答えた。


この所作と“断片の解”という名は、この店の常連だけが知る合言葉。


それを告げると、ジェルマンは“気まぐれカクテル”による特別な占いを行う。


依頼者の質問内容を知らずとも、酒の神の啓示を受けてカクテルを調合するため、

互いの秘密が守られる――それが彼の特異な能力だった。


「ほう……久しぶりですな。リンカーのあなたでも――いえ、作りましょう」


何の音も立てぬように、グラスを手に取る。その指先の動きは、何かを祈るように静かだった。


棚の奥からボトルを抜き出し、ラベルを一瞥。光に透かし、傾け、そして計る。


ジガーカップに流れ落ちる透明の線は、まるで真実を見通す鏡の様だった。


次の瞬間ライムの香りがほんのりと香る・・・

ライムの香りを逃さないように素早くシェイカーが閉じられるが、掌の温度で金属が微かに鳴く。


素早く、しかし静かに腕を一度伸ばし。呼吸を合わせ、リズムを整える。


氷と液体がぶつかり合う音が、狭い空間に短い旋律を描く。


最後の一振りで静寂が訪れ、シェイカーの口から液体が滑るようにグラスへと注がれた。


表面に浮かぶ微かな光を確認し、口元で柔らかく名を告げる


「ギムレットでございます」


「ああ、そんな・・」


ギムレットは「別れ」を意味するカクテルである。


ヴァリシアは落胆する、カウンターに角が当たるのでは無いかと思うほど うなだれる

黒い月の形の角がカウンターに近づきオレンジの髪が追いかけるように落ちてくる。

まるで、黒い月が夕日に沈む様に見え、うなだれるヴァリシアはとても美しかった。


「早すぎる・・・」


ヴァリシアはカウンターに突っ伏してしまった。


「もっと、やおらに笑って居てほしかったの・・」


もうその声はもう、鳴き声のように震えていた。顔を見られまいと突っ伏したまま横を向くが、カウンターの表面は鏡面でヴァリシアの美しい泣き顔が写りジェルマンも息を飲む。


しかしジェルマンは何かに気がついたように動き始めた。


「気を落とさないでください。」


そう言いながら、ジェルマンはシェイカーを振っていた。


「今回は、2杯めがありますよ?」


「え?」


その言葉に驚き、姿勢を戻すと、爽やかな柑橘系の香りが漂う


「コープス・リバイバーでございます」


ジェルマンは少し嬉しそうであり難しそうな顔をしている。


「ジェル、これは・・いったい・・・」


ヴァリシアは困惑していた。普通、神の啓示カクテルの解は一杯だけなのだ。

コープス・リバイバーは「死者を蘇らせる」という意味が込められている。こんな事はジェルマンも初めての様だ。


「私にはわかりません。ただ、次はコープス・リバイバーを作る様にと・・」


ヴァリシアはもう、すっかり気を取り直していた。


「お酒の神様?」


ジェルマンはカウンターに手を付いて少し身を乗り出し頷きながら


「ええ、しかも複数から・・」


ヴァリシアはギムレットを受け入れられない。


おもむろに、コープス・リバイバーを一気に飲み干し

ギムレットを放置して立ち上がるヴァリシアを見てジェルマンは言う


「ああ、もう、カクテルはそんな飲み方しないで・・、」


美人魔族がカウンターに居ると絵になるのでカクテルはゆっくり味わって欲しかったのだが、ヴァリシアは、もう、おっさんの飲みっぷりだった。


「みきわめるわ・・」


そう言ってギムレットを睨みつけていた


ギムレットは納得いかないが、コープス・リバイバーは好きなカクテルの一つとなった。


でも、やはり、一度死ぬと言う事なのだろうか、もしくはすでに死んで・・・・

でも、なぜ?だとしても、セシアン・コーディックススが関わっているのは確かだ

色々と思考するが、まずは、不明な点をはっきりさせないと、と考えるヴァリシアだった。


「やはり、セシアン・コーディックスス上層部の動きを掴まないとだめね・・・」


ヴァリシアは小さく独り言をこぼしながら足早にバーを出る、ふと見ると……


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