第70話 消息
リュシアが診療所へ姿を見せたのは、ノンノが眠り始めてからしばらく経った頃だった。
入口の扉が静かに開き、紙包みと布袋を両手に抱えたリュシアが中へ入ってくる。室内を見回してエルディアスを見つけると、すぐにこちらへ歩き始めたが、その途中で奥の寝台に気づき、足音を抑えた。
ノンノはまだ横向きに眠っている。港で見た時より呼吸は落ち着いていたものの、頬にはまだ血の気が薄い。薄茶色の髪が枕へ広がり、その間から覗く猫耳も力なく伏せていた。
リュシアは寝台の脇まで来ると、眠っている少女の顔をそっと覗き込んだ。
「……この方ですか?」
声はかなり小さい。
「ああ」
エルディアスも同じくらいの声で返した。
リュシアは少しだけ目を細め、それから手にしていた布袋を足元へ置く。
――思っていたより小さいですね。
そこから先は念話だった。
――言っただろ。
――聞いてはいましたけど。もう少し大きい方を想像していました。
リュシアが布袋を開く。中には簡素な上着と下衣、それに肌着が一組ずつ入っていた。身体へ沿いすぎないものを選んだらしく、多少大きくても困らない程度の余裕がある。
もう一方の紙包みからは、まだかすかに温かい匂いがした。
――着替えはこれで大丈夫だと思います。食べ物は、近くのお店で薄いスープを分けてもらいました。まだ無理そうなら、起きてからにします。
――助かる。
――先生は何と?
――吐き気止めを使って、しばらく休ませろって。水分を少しずつ取らせて、食べられそうなら柔らかくて油の少ないものから。
――では、これでよさそうですね。
リュシアは紙包みを寝台脇の台へ置いた。
そこで視線がエルディアスへ戻る。一度、胸元を見て、それからもう一度見た。
――エル。
――何だ。
――一度、宿へ戻ってください。
――何で。
――着替えてください。
エルディアスは自分の上着を見下ろした。港で水と風を使い、目立つ汚れは落としてある。見た目だけなら問題はない。
――もう落としたぞ。
――応急的に、ですよね。
――ああ。
――なら、ちゃんと洗ってきてください。
――あとでもいいだろ。
リュシアは寝台のノンノへ視線を向けた。
――私がここにいます。ノンノさんも今は眠っていますし、診療所なら何かあっても先生がいます。
――でも。
――エル。
念話なのに、妙に強く聞こえた。
――今のうちに行ってきてください。ノンノさんが起きてからでは、また離れにくくなりますよ。それに、依頼の完了報告もまだなのでしょう?
――……ああ。
完了札はまだ手元にある。倉庫の仕事そのものはとっくに終わっているのに、港でノンノを拾ったせいで、そのまま診療所まで来ていた。
――それも済ませてきてください。
――分かった。
――洗濯までですよ。
――分かってる。
リュシアはようやく満足したように小さく頷いた。
エルディアスは椅子から立ち上がり、もう一度ノンノを見る。寝息は変わらない。それを確認してから、診療所を出た。
◇
外へ出ると、昼の賑わいはすでに一段落していた。
食堂の前にできていた人だかりは消え、店先では使い終えた器を洗う音がしている。市場も朝ほどの勢いはなく、売り切れた籠を片づける店と、残った品を並べ直して夕方まで売ろうとする店が混じっていた。
それでも、セレイスそのものが静かになったわけではない。王都の調査隊へ送る荷車は相変わらず行き交い、乾燥食料や油、縄を積んだ車が黒碑王墓迷宮の方角へ向かっている。反対側からは空になった樽や木箱を載せた車が戻り、道端では次の荷を待つ人足たちが短い休憩を取っていた。
朝から続いていた忙しさが、昼を境に別の形へ移っただけらしい。
通りへ落ちる建物の影も、朝よりずいぶん長くなっている。
エルディアスは人の流れを抜け、宿へ戻った。
部屋へ入るなり上着を脱ぐ。水と風で応急的に処理しただけでも見た目はかなり戻っていたが、近くで嗅げばまだ分かった。
「……確かに洗うしかないか」
誰に言うでもなく呟いた。
替えの服へ着替え、汚れた上着を持って宿の洗い場へ向かう。午後の洗い場には誰もいなかった。
桶へ水を張り、洗濯用の石鹸を削って溶かす。汚れた部分を中心に揉み洗いすると、応急処置では落としきれなかったものが水へ滲んだ。一度水を捨てて張り直し、石鹸が残らないようもう一度すすぐ。最後だけ水の術式で布の間まで流した。
風も使えば乾かすことはできるが、無理に乾燥させれば布を傷める。水気だけを軽く飛ばし、あとは部屋の窓際へ掛けておくことにした。
ついでに手と顔も洗い直す。
そこまで済ませて、ようやく吐瀉物の臭いを気にせず歩ける状態になった。
◇
午後の冒険者ギルドは、朝とは客の顔ぶれが変わっていた。
依頼を受けるため掲示板へ集まっていた者の姿は減り、代わりに朝からの仕事を終えた冒険者たちが少しずつ戻り始めている。泥の付いた靴で受付へ並ぶ者もいれば、素材を入れた袋を足元へ置き、そのまま近くの椅子へ座り込んでいる者もいた。
エルディアスが受付へ向かうと、ミュリカはこちらを見るなり手元の書類から顔を上げた。
「エルさん」
「何だ」
「猫族の女の子を背負って歩いていたそうですね」
完了札を出す前に言われた。
「……もう聞いたのか」
「一人からじゃありませんよ。港の方から小柄な猫族の女の子を背負って歩いていたって、別々の人から聞きました」
思っていた以上に目立っていたらしい。
「具合を悪くして倒れたんだ」
「やっぱりそうでしたか。何か変なことを始めたわけではなさそうで安心しました」
「何だと思ってたんだよ」
「そこまでは何も。ただ、エルさんが知らない女の子を背負って歩いていたら、気にはなるでしょう?」
否定はできない。
エルディアスは完了札を差し出した。
「港の仕事は終わってる」
「あ、そちらが本来のご用事でしたね」
ミュリカは札を受け取り、依頼主の印を確認する。
「壁の方も?」
「原因は分かった。応急処置だけして、石工を呼ぶように言ってある」
「では問題なしですね」
記録へ書き込みながら、ミュリカはそのまま話を続けた。
「その子は大丈夫なんですか?」
「近くの診療所にいる。船酔いとマナ酔いだって」
「ああ……」
それだけで事情が繋がったらしい。
「海の向こうから来た方なら、たまにありますね。特に最近は、前より酷く出る人が増えたって聞きます」
「診療所でも似たようなこと言ってた」
「今のセレイスは、ずっと住んでいる私たちには分かりにくいですからね」
ミュリカは報酬を用意し、エルディアスへ渡した。
これで用事は終わりだった。
エルディアスはそのまま帰ろうとしたが、掲示板の脇に追加された紙が目に入る。
朝にはなかった補給依頼だ。第二層へ入る調査班向けの保存食運搬と、灯具と油の追加搬入。
朝ミュリカから聞いた通り、王都はまだ調査を続けるつもりらしい。
内容だけ確認し、ギルドを出た。
通りへ出たところで、腹が減っていることに気づく。
朝から倉庫で働き、ノンノを背負って街を歩き、そのまま診療所へ行った。昼食はまだだった。
診療所へ戻れば、またしばらく離れにくくなる。
近くの屋台で何か腹へ入れておくことにした。
午後も営業を続けていた店で、薄いパンに肉と野菜を挟んだものを一つ買う。昼時を過ぎて客は少なく、店主も片手間に鉄板の上を片づけていた。
通行の邪魔にならない場所へ寄り、簡単に食べる。
温かい肉と、少し酸味のある野菜が入っていた。
食べ終えて水を飲んだところで、左手の薬指から声が届く。
――エル。
リュシアだった。
――何だ。
――今、どこですか?
――ギルドの近く。
少し間があった。
――……遅くないですか?
エルディアスは手に残った空の包みを見る。
――着替えて洗濯して、依頼の報告して、今飯食った。
――ご飯まで食べていたのですか。
――昼食ってなかったからな。
――それはそうですけど。
念話越しでも、少し呆れられている気がした。
――ノンノ起きた?
――はい。かなり顔色も戻りました。今、少しずつスープを飲んでもらっています。
――ならよかった。
――ですから、そろそろ戻ってきてください。
――今行く。
――本当に今ですよ。
――分かってる。
念話を切る。
朝から何度「分かってる」と答えたか、もう覚えていない。
エルディアスは包みを捨て、診療所へ戻った。
◇
扉を開けると、薬草と酒精の匂いに混じって、薄いスープの香りがした。
奥の寝台では、ノンノが上半身を起こしている。
リュシアが買ってきた服へすでに着替えていた。淡い色の簡素な上着は少しだけ大きいが、肩からずり落ちるほどではない。汚れていた旅装はきれいに畳まれ、寝台脇へ置かれている。
顔色もかなり戻っていた。まだ白さは残るものの、港にいた時のような青ざめ方ではない。完全に伏せていた猫耳も半ばまで起き、周囲の音に合わせて時折向きを変えている。
両手で小さな器を持ち、少しずつスープを飲んでいた。
寝台の脇にはリュシアが座っている。
何か話していたらしく、ノンノはエルディアスが入ってきたことにすぐには気づかなかった。リュシアの言葉へ耳を傾け、時折その顔を見上げている。
リュシアが入口へ視線を向けたことで、ようやくノンノもこちらを見た。
「あ……」
「少しはマシになったか」
「はい。さっきより、ずっと」
声にも力が戻っている。
――やっと戻りましたね。
リュシアの声が内側へ届く。
――行くって言っただろ。
――すぐ来ると思っていました。
――来ただろ。
――思っていたより遅かったです。
エルディアスは返事をしなかった。
ノンノはそんなやり取りが行われているとも知らず、器を膝の上へ置いた。
「その……さっきは、本当にごめんなさい」
「もういい」
「でも、服……」
「洗った」
「……ごめんなさい」
「それ、二回目だぞ」
「だって……」
猫耳が少し伏せる。
「本当にもう気にしなくて大丈夫ですよ」
リュシアがそう言うと、ノンノはそちらを向き、小さく頷いた。
「……はい」
リュシアが水差しを取り、ノンノの器へ少し水を足す。
「熱くないですか?」
「大丈夫です。ありがとうございます」
ノンノはそう答えたあと、一度リュシアを見てから器へ視線を戻した。何か言いかけたようにも見えたが、そのままスープを飲む。
半分ほど飲んだところで、ノンノは器を台へ置いた。
「ちょっと休んだら、また飲みます。お腹は空いてるんですけど、まだ一気には無理みたいで」
「その方がいいですね。無理に全部飲む必要はありません」
「はい」
ノンノは枕へ背を預けた。
少しして、エルディアスとリュシアを順に見る。
「あの……一つ聞いてもいいですか?」
「はい」
リュシアが答える。
ノンノはわずかに耳を動かした。
「エルディアスさんって、リュシアさんの旦那さん……ですか?」
「違います」
返事が早かった。
ノンノが少し驚いたように瞬く。
「あ、違うんですね。すみません」
「今は一時的にパーティーを組んでいるだけです」
「そうなんですね」
ノンノは納得したように頷いた。
それ以上は何も言わず、また器へ手を伸ばす。
「それより、助けてもらって本当にありがとうございます。わたし、あのままだったらどうなってたか……」
「港なら誰かが拾っただろ」
「でも、エルディアスさんが拾ってくれました」
少女は真面目な顔でそう言った。
そのあとリュシアへも視線を向ける。
「服も、食べ物もありがとうございます」
「どういたしまして。でも、今日はまだ無理をしないでくださいね」
「はい」
ノンノは素直に頷いた。
エルディアスは空いている椅子を引いて座る。
「それで、一人でここまで来たのか」
ノンノは少し迷うように耳を動かしたあと、膝の上で手を組んだ。
「はい。姉を探しに来たんです」
「お姉さんを?」
リュシアが聞く。
「カンナっていいます。カンナ・ミーゴ」
ノンノはそのまま少しずつ事情を話し始めた。
「わたしたちは、ずっと東の海にあるミズナギ島っていうところの出身なんです。小さな島で、大きな街もありません。普段来る船も、近くの島を回るものばかりです」
ミズナギから大陸まで定期的に来る船が、セレイス行きなのだという。
「だから、わたしもそれに乗ってきました。姉も島を出た時は同じ航路だったって、昔の手紙に書いてありました」
「では、セレイスがお姉さんの目的地だったわけではないのですね」
「はい。大陸へ来るなら、まずここへ来ることになるんです」
セレイスはあくまで玄関口だったらしい。
それなら、カンナがこの街に長く滞在していなくても不思議はない。
「姉は精霊術士なんです」
姉の話になると、ノンノの表情が少し明るくなった。
「小さい頃から精霊が見えたみたいです。でも島には精霊術をちゃんと教えられる人がいなくて、旅で来た精霊術士の人に弟子入りしました。それから、その人と一緒に島を出たんです」
最初は修行の旅だったらしい。
やがて師匠と二人で冒険者として依頼を受けるようになり、大陸の各地を回るようになった。
「手紙はたまに来てました。毎月じゃないですけど、半年に一回くらい。知らない街の話とか、魔物の話とか、師匠に怒られたとか。よく分からない草を食べて、お腹を壊したって書いてあったこともあります」
「楽しそうなお姉さんですね」
リュシアが言う。
「はい。たぶん、すごく楽しんでたと思います」
ノンノも笑った。
だが、その笑みは長く続かなかった。
「でも、一年くらい前から、手紙が来なくなりました。最初は、また忙しいだけだと思ってたんです。前にも半年以上来なかったことがあったから。でも、一年経っても来なくて……姉が一度帰るって言ってた時期も、もう過ぎてます」
ノンノは赤い耳飾りへ指先を添えた。
「最後に手紙が来た時は、もっと西の方にある街にいたみたいです。師匠とそこで何件か依頼を受けてから、また別の場所へ向かうって書いてありました」
「場所は分かるのか」
「はい。ラゼンっていう街です」
エルディアスにも名前くらいは聞き覚えがあった。ここからかなり西へ行った内陸側の街で、セレイスから気軽に往復するような距離ではない。
「そこへ行くつもりだったのか」
「そのつもりです。でも、姉も冒険者だったので、まずセレイスのギルドで何か分からないかなって思ってました。姉も最初にここを通っているはずだし、大きなギルドなら、ほかの街のことも少しくらい分かるかもしれないから」
それで船を降りたら、まずギルドへ行くつもりだったらしい。
実際には港から出る前に倒れたわけだが。
ノンノは赤い耳飾りを指先でそっと撫でた。
「これも、姉が送ってくれたんです」
小さな赤い石が、窓から差し込む午後の光を返す。
「旅先で見つけたからって、手紙と一緒に」
「大事なものなんですね」
「はい。それと、もう一つあります」
ノンノは寝台脇に置かれていた自分の鞄へ手を伸ばしたが、身体を傾けたところでリュシアが先に取った。
「これですか?」
「ありがとうございます」
鞄を受け取ったノンノは、中から布に包まれた一冊の本を取り出した。
手のひらより一回り大きい程度の本だった。
表裏は鈍い銀灰色の金属板で覆われており、縁や角には長く使われてきた跡が残っている。表面にも細かな擦り傷が重なっていたが、題名らしいものは見当たらない。中央には、葉とも炎ともつかない細い線の模様が浅く刻まれていた。
「これも姉から送られてきました。イヤリングより後だったと思います」
「読めるのか?」
エルディアスが聞く。
「少しだけ。でも、分からないところの方が多いです。姉は精霊術の本だって書いてましたけど、島には詳しい人がいなかったので」
リュシアが本を見る。
「少し見せてもらってもいいですか?」
「はい」
ノンノから受け取ると、見た目以上の重さが掌へ掛かった。リュシアは一度持ち直してから、金属の表紙を慎重に開いた。
古びてはいるが、乱暴に扱われてきた本ではなさそうだった。紙の端には何度も開いた跡があり、ところどころに細かな書き込みも残っている。
文章だけではない。
円や曲線を重ねた図と、その周囲へ添えられた短い語句。植物や獣にも見える小さな図が描かれた頁もあれば、何かを段階ごとに分類したらしい表もある。
リュシアは何頁かをゆっくりめくった。
「……精霊術の本で間違いなさそうですか?」
ノンノが尋ねる。
「たぶん」
リュシアは一度だけ首を傾げた。
「普通の魔術書とは書き方が違います。術式そのものより、何かとの繋がりや働きについて書いているように見えますし、お姉さんが精霊術士だったなら、そのための本だと思います」
「何が書いてあるか分かりますか?」
「そこまでは」
リュシアは無理に読み解こうとはせず、本を閉じた。
「私では精霊術に関する本らしい、というくらいしか分かりません。詳しく調べるなら、魔術ギルドで見てもらった方がいいと思います」
「魔術ギルド……」
「精霊術を扱える人がいるかもしれませんし、いなくても読める人を紹介してもらえるかもしれません」
ノンノは返された本を両手で受け取った。
「これも何か手掛かりになりますか?」
「今は分かりません」
リュシアは曖昧に期待を持たせることなく答えた。
「でも、お姉さんが使っていたものなら、見てもらう価値はあると思います」
「はい」
ノンノは小さく頷き、本を胸元へ抱えた。
片耳には姉から送られた赤いイヤリング。
腕の中には、姉が使っていたらしい精霊術の本。
どちらも、手紙が途絶える前に海を越えて届いたものだった。
「冒険者なら、まずギルドでいい」
エルディアスが言うと、ノンノが顔を上げた。
「この街に長くいたとは限らないけど、ミズナギから来たなら一度はセレイスを通ってる。ここで登録や依頼をした記録があるかもしれないし、ラゼンのギルドへ問い合わせる方法もある。本の方は魔術ギルドだな」
ノンノの猫耳が少し起きた。
「本当ですか?」
「ああ。ただし今日は行くな」
先に釘を刺した。
起き上がりかけた身体が止まる。
「……はい」
「顔色は戻っても、まだまともに歩けないだろ」
「たぶん……」
「たぶんじゃない」
ノンノは少しだけ口を尖らせた。
その表情も年齢より幼く見える。
「今日はここで休みましょう」
リュシアが穏やかに言った。
「ギルドも魔術ギルドも逃げません。ここまで来てまた倒れてしまったら、お姉さんを探すどころではなくなりますよ」
ノンノは少し考え、それから頷いた。
「……はい。今日は休みます」
「その方がいいです」
リュシアが脇へ置いてあった器をノンノへ返す。
「もう少し飲めそうですか?」
「はい。少しなら」
ノンノは本を大切そうに鞄へ戻してから器を受け取り、残っていたスープへゆっくり口をつけた。
赤いイヤリングが、起き始めた耳の脇で小さく揺れた。




