第111話 帰着
倉庫から門へ続く道は、歩くだけなら通れた。
ラウルは倉庫番と一緒に通りを確かめ、陽が落ちる前に戻ってきた。途中には崩れた壁と流れ着いた木材があったが、人が一人ずつ抜ける隙間は残っている。板に寝かせた怪我人を運ぶには、まだ片づけなければならない場所があった。
「上の方へ、人が集まっているところも見てきた」
ラウルはエルディアスへ言った。
「食べ物を置く場所と、水を汲む場所を決めてある。こっちへ来た者だけで動いているわけじゃない」
倉庫の中では、年を取った女が布を替えていた。ノンノがその傍で使い終えたものを分け、リュシアは歩けるようになった者へ、立つ時に手を貸している。昼間より人は増えたが、何かをするたびに九人の誰かを呼ぶ必要はなくなっていた。
倉庫番が、入口の柱へ手を置いた。
「下流の集落へも、知らせを出す。道の分かる奴がいるから、そいつらに行ってもらうよ。ここだけで食べ物を探していても、長くはもたん」
「俺たちも、一度戻って報告したい」
ラウルが言った。
「怪我をした仲間もいる。ここへ必要なものを届ける手配は、向こうで頼むつもりだ」
倉庫番はガルムの腕と、肩へ布を巻いた護衛を見た。それから、船の方へ目を向ける。
「ここへ残ってる者のことは、引き受ける。船を調べるのも、明日は大工をしてた者に見てもらう。あんたたちの作った支えを、勝手に動かすなと言っておけばいいか」
「どこが重みを受けているか、先に見てもらう。触っていいところも、そこで伝える」
エルディアスが答えた。
助け出した者の中には、まだ自分で起きられない者がいた。これから具合の悪くなる者もいるかもしれないし、船の調べ切れていない場所も残っている。全部が終わってから帰ると決めれば、いつ出られるか分からなかった。
ラウルはリュシアを見た。
「明日、手当てを引き継げるか」
「はい。今の様子と、ここまでにしたことを伝えます。布や道具の置き場所も、揃えておきたいです」
リュシアは横になった人々を見た後、頷いた。
「こちらの方々が動けるようになれば、私たちだけで続けるより、その先まで見てもらえますから」
ラウルは全員を呼び、翌朝の出発を伝えた。九人で戻る。歩けない者を無理に連れ出さず、助けを頼むために持ち帰る情報を揃える。
調査員が記録板を膝へ置いた。
「こちらへ残すものと、持ち帰る分を分けます。今夜のうちに、必要な物も聞いておきますね」
エルディアスは頷き、船へ戻る道へ目を向けた。最後に支えを確かめてから、出発の荷を作るつもりだった。
◇
翌朝、倉庫の前には、もう水の入った桶が並んでいた。
汲んできた者が空の器を受け取り、次に行く者へ場所を教えている。火の傍では穀物を煮たものが分けられ、戸の陰に横になっていた者も、呼びかけへ目を開けるようになっていた。
リュシアは年を取った女の横へ座り、一人ずつ状態を伝えた。
「この方は、船から出した後にも腕の布へ血が滲みました。今は落ち着いています。脚は、まだ自分で動かそうとしない方がよいと思います」
「分かった。歩かせる時も、先にこっちへ声を掛けてもらう」
女は荷役の男へ目を向けた。
男は聞こえていたらしく、少し顔を上げた。
「勝手には、立たんよ」
「昨日も、そう言ったろう」
女の返事に、男は困ったように笑った。
リュシアは次の布を確かめ、使った道具を女の手へ渡した。傍の母子には、倉庫番が水の器を置いている。子供は母親へ寄り掛かりながら、入口に立つノンノを見た。
「もう、行くの」
小さな声だった。
ノンノは袋の肩紐を持ったまま、膝を折った。
「はい。助けを頼みに行きます。ここは、あちらの方たちが見てくれますから」
女が母子の方へ顔を向けると、子供もそちらを見た。それからノンノへ戻り、少し考えるように黙った。
「パン、ありがとう」
ノンノは一度まばたきし、頷いた。
「食べられて、よかったです」
母親が子供の肩を抱き、ノンノへ頭を下げた。ノンノは慌てて首を振り、立ち上がってから、もう一度だけ二人を見た。
エルディアスは、船を調べる者へ支えの位置を伝え終えていた。狭いところへ何人も入らないこと、上へ載った木材を動かす前に、下を確かめること。実際に持ってきた材木を当てながら話すと、相手も頷き、自分の仲間へ同じ場所を示した。
甲板の端から、灰色の猫が顔を出した。
こちらへ下りてくるのかと思ったが、猫は途中で足を止め、下で魚の残りを置いていた男へ顔を向けた。ノンノも気づいて、少し笑う。呼び寄せようとはしなかった。
「ここには、いられそうですね」
「ああ」
エルディアスは、猫が男の足元へ下りるのを見てから、杖を持ち直した。
九人の荷は、来た時より少なくなっていた。
残して使ってもらう布と、置いていく食料を確かめ、帰り道に必要な分を各自へ分ける。ガルムの大盾は、曲がった金具が身体へ当たらないよう布で包まれた。左腕へ重みを掛けずに背負えるよう、護衛が留め紐を結び直している。
「ずれたら、途中で止まれよ」
「分かってる」
ガルムは右手で紐を引き、盾の位置を確かめた。片手斧はいつもの腰へ収まり、荷を背負う動きだけが少し慎重だった。
ラウルが倉庫番と話を終え、こちらへ戻った。
「行こう」
倉庫番が、九人を見渡した。
「助かった。本当に」
「まだ必要なものは、記録した。こっちでも手を借りられるよう頼む。ただ、届くまでには時間が掛かる」
ラウルの言葉に、男は頷いた。
「それまでは、こっちで繋ぐよ」
リュシアは最後に女へ頭を下げた。女は布包みを脇へ寄せ、横になった者の方へ戻っていく。リュシアが傍へいなくても、その手は次にすることへ動いていた。
九人は、倉庫を離れた。
◇
港から門までは、来た時より遠く感じられた。
同じ通りをまっすぐ進めず、倒れた壁を避け、泥の深いところでは石の残る側へ寄る。荷を運ぶための綱も、戸口へ並んでいた品も、今は壊れたものの間に埋まっていた。
門へ近づくにつれ、街の者の姿が増えた。水が上がらなかった場所へ荷を集め、流れてきた板を分けている。ハディル全体を見渡せるわけではない。それでも、あの倉庫以外にも、残った暮らしを繋ごうとしている者がいた。
門の扉は、片方が外れていた。
行列があった場所へ、泥と細い枝が溜まっている。ノンノはそこを跨いでから、柱を見上げた。あの夕暮れには、前に並んだ人の背を見て歩いていた。今は、誰を避けることもなく外へ出られる。
「帰り道は、昼に歩けるんですね」
ノンノが言った。
「暗くなる前に、集落まで行く」
ラウルが答えた。
「途中で足が止まるなら、早めに言ってくれ。急いで戻るために、誰かを歩けなくするつもりはない」
護衛の一人が頷き、肩の布を確かめた。ガルムも背の盾を直し、九人は高い方へ続く道へ入った。
門を離れる前に、エルディアスは一度だけ振り向いた。
煙突の折れた船が、街並みの上へ残っていた。夜に見た船と同じ大きさなのに、陽の下では、その大きさが壊したものまで見えてしまう。
リュシアも隣で足を止めた。
「行きましょうか」
「ああ」
エルディアスは顔を戻した。
今、戻るべき場所は、あの船の先ではなかった。
◇
河沿いの道には、まだ濡れたところがあった。
九人は水際へ下りず、来た時と同じ高い道を辿った。崩れた斜面を避けるたび、調査員が記録へ短く書き加える。先へ進むために残した印は、今度は帰る場所を選ぶために使われた。
集落へ着いたのは、家の影が道へ長く伸び始めた頃だった。
ハディルから出された知らせは、先に届いていた。河の方を見ていた男が、九人の荷と怪我を見て場所を空ける。ラウルが港の様子を伝えると、男は途中で話を遮らず、最後まで聞いた。
「船まで、岸へ上がったのか」
「ああ。建物へ乗り上げている。船の中から出せた者は、港の倉庫で手当てを受けてる」
「ここからも、持っていけるものを集めてる。歩いて行ける道は残ってるんだな」
「上道は通れる。低い方は使うな。途中で崩れたところは、ここへ書いた」
調査員が紙を広げ、道の曲がるところを示した。男は傍の者を呼び、ハディルへ行く者にも見せるよう頼んだ。
九人には、屋根のある場所が分けられた。
水袋を満たし、食料を買い足し、ガルムの留め紐を直す。リュシアは護衛の肩を確かめ、セルマも杖を壁へ立てて、ようやく両手を膝へ下ろした。
ノンノは包んでもらったパンを袋へ収めていた。すぐに食べる分を一つ残し、残りを潰れないところへ入れる。エルディアスが見ているのに気づくと、少しだけ持ち上げた。
「歩く時は、ちゃんと入れます」
「今は座ってるだろ」
「そうですね」
ノンノは頷き、膝へ布を敷いてパンを割った。向かいでガルムも食料の包みを開く。大きく割ろうとしていた手が一度止まり、その後は二つに分けて、ラウルへ片方を渡した。
ラウルは受け取った。
何も言わず、三人が同じ場所へ座っている。エルディアスも自分の荷を脇へ寄せ、ノンノが置いた水袋をリュシアへ渡した。
◇
そこから先の道も、往路より楽になったわけではなかった。
荷渡し場では水と食料を揃え、河を離れる道を確かめた。あの時一緒に歩いた荷車は、もういない。三頭のラバを探して待つ理由もなく、九人は自分たちの記録を見て、西へ続く道へ入った。
岩陰で休み、途中の水場を使い、陽の高い間は歩く距離を抑えた。背負った盾の紐が緩めば止まり、護衛の肩へ血が滲めば布を替える。誰か一人の足に合わせて無理をさせず、その日に泊まれる場所まで進んだ。
オアシスの街へ戻ると、《泉の灯》の女将は九人の顔を見て、先に水を持ってきた。
「戻ってきたね。食べるものは?」
「欲しい。人数は、九人だ」
ラウルが答えた。
女将は頷き、卓を空けた。何を見てきたかは、皿が並んでから尋ねた。河が増えていたこと、ハディルが水害で壊れていたこと。ラウルが伝えると、女将は鍋へ戻ろうとした手を止め、窓の向こうへ目をやった。
「向こうへ荷を出した者にも、知らせないとね」
「港へ近づくなら、道を確かめてからにしてくれ。怪我人が集まってる場所は伝えられる」
ラウルが答え、調査員が街の者へ渡すための紙を揃えた。
船のことは、その卓では話さなかった。
ノンノは湯気の上がる皿を両手で寄せ、少し冷めるのを待っている。リュシアがその横でパンを分けた。エルディアスは卓を囲む人数を確かめ、食べ始めた。
まだ、セレイスではない。
それでも、帰るために立ち寄る場所が、一つずつ後ろへ回っていった。
◇
転移紋のあるオアシスが見えた時、ノンノが先に顔を上げた。
砂地の向こうに木々が並び、その傍で布が動いている。王都の班が張ったものだった。近づくと見張りがこちらへ声を掛け、ラウルが名を告げたところで、別の者を呼びに走った。
九人は紋へ直行せず、池の傍へ荷を下ろした。
調査員が記録を出し、ラウルは現地を預かる男へハディルの状態を伝えた。男は広げられた地図と、曲がった大盾を見比べ、詳しい話を聞くために近くの者へ場所を空けさせた。
「ハディルという名は、先に戻った四人の報告にもある。実際に見たんだな」
「見た。河沿いの大きな街だ。港へ入ったが、今は洪水で壊滅している。生きている者は残っていて、救い出した人々を地元の者へ引き継いだ」
「入る前に、水害のことは聞かなかったのか」
「聞いていない。ただ、俺たちが見たものは、それだけでは説明がつかない」
ラウルは一度、エルディアスを見た。
「最初に入った時には、普通の街に見えた。そこで船へ乗った。その船が、この層の階層主に関わっていた。倒した後に神託が下り、気づいた時には、壊れた船と街の中にいた」
男はすぐに問いを重ねず、記録係へ目を向けた。
エルディアスは、告げた文をそのまま伝えた。
「罪ある者を守る剣が、道を開く」
筆先が紙を走った。係は書いた文を読み上げ、エルディアスが頷いてから、次の紙へ移った。
「怪我人がいる。俺たちも、一度セレイスへ戻りたい」
ラウルが言った。
「こちらからの報告は先に送る。持ち帰った記録も、そのまま届けてくれ。救援に何を出せるかは、道と人数を確認してからになる」
男が答えた。
「現地で必要なものは、別に書いた。近くの集落と街へも、水害のことは知らせてある」
調査員が紙を渡すと、男は受け取った。九人へ聞き取りを続けるより先に、水と、傷を確かめられる者を呼んだ。
ノンノは池の傍で水袋の口を締めていた。
エルディアスが近づくと、紋の方へ顔を向ける。
「ここまで戻れば、もう森は歩かなくていいんですよね」
「ああ。塔へ出る」
「最初は、あそこから歩いてきたのに」
ノンノは森のある方角を見た。ここからは砂地と木の陰しか見えず、数日かけて越えてきた道は、その向こうに隠れている。
リュシアが傍へ来て、ノンノの袋の口を確かめた。
「塔へ着いたら、荷を下ろせます。最後にもう一度、背負えますか」
「はい。そこまでは、ちゃんと」
ノンノは袋を持ち上げ、肩へ通した。今度は手に食べ物も紙も持たず、二人と一緒に紋へ進んだ。
◇
塔の石床へ足が触れると、風の匂いが変わった。
池の水と砂の匂いが遠のき、石に籠もった涼しさが戻ってくる。エルディアスは紋の外へ出て、後から現れる者のために場所を空けた。リュシア、ノンノ、ラウルたちが続き、最後に二人の護衛が揃う。
塔に詰めていた王都の者が、名と人数を確かめた。
「報告は受けた。セレイスへ戻る組だな」
「九人だ。記録も持っている」
調査員が答えた。
向こうへ知らせた言葉が、自分たちより先に届いている。ここまで繋いだ設備と人手が、そのために動いていた。塔の者は出口を塞がず、中央へ戻る紋を使えるよう空けた。
円形石室へ移ると、白い照明具が頭上にあった。
黒い入口は、来た時と同じ場所にある。そこへ進む前に、エルディアスはリュシアを見た。
――戻ったら、まず手当てだな。
――はい。ガルムさんも、あの腕を見てもらわないと。
リュシアが頷いた。
ノンノは黒い入口を見てから、二人へ目を戻した。
「ここを抜けたら、地上ですよね」
「ああ」
エルディアスは答え、入口へ足を入れた。
◇
宿営地の声が、急に近くなった。
王都の徽章をつけた者が物資を運ぶ荷車へ道を空け、その先には天幕が並んでいた。王墓脇の黒い入口を囲む封鎖線も、見張りの立つ場所も、出発した時と変わらない。エルディアスは一歩脇へ寄り、後から出てくるノンノたちを待った。
ノンノが黒い入口を振り返り、入域の確認を待つ調査班の列から離れる。護衛の一人は陽へ目を細め、ガルムは盾の重さを確かめるように肩を動かした。
入口の傍にある黒い石碑へ、新しい文が増えていた。
罪ある者を守る剣が、道を開く。
調査員が文字を確かめ、持っていた記録と照らす。その傍で職員が、帰ってきた者の名を書き留めていた。
エルディアスは、石碑の前で長く止まらなかった。九人が揃い、帰還の確認を終えると、ラウルたちと一緒に封鎖線を出た。宿営地を離れ、セレイスへ続く道を辿る。
街へ入ると、石畳を行き交う荷車と、品を呼び売りする声が戻ってきた。冒険者ギルドへ向かう途中で、パンを焼く匂いがした。
ガルムの顔がそちらへ向いたが、店へは寄らなかった。セルマも同じ方を見てから、ギルドの戸へ手を伸ばした。
◇
「エルさん。リュシアさんも」
受付のミュリカが顔を上げた。
九人の荷と、護衛の肩へ巻かれた布を見て、途中まで立ち上がっていた身体をそのまま机の外へ回す。近くの者へ声を掛け、座れる場所を空けてもらった。
「お戻りになったのですね。お怪我のある方は、先にこちらへ」
ガルムが一度エルディアスを見た。後回しにするなと言われる前に、自分から盾を下ろしている。護衛もその横へ座り、ようやく荷を背から外した。
王都側の担当者が、奥から来た。
調査員は記録を抱えて立とうとしたが、担当者は座ったままでよいと伝え、手元へ紙を広げた。
「現地からの連絡は来ている。まず、急いで手配する必要のあることを聞きたい」
ラウルが答えた。
「ハディルという街で、大きな水害があった。港へ乗り上げた船から人を救い出し、地元の者へ手当てを引き継いできた。食料と布、それを運ぶ人手が足りない」
「経路は、持ち帰った記録にあるな」
「ああ。オアシスから街と河を経て向かう。ハディルへ近いところは上道を使う必要がある。荷車で通れるかは、まだ見ていない」
調査員が紙を分けた。最初の地図、帰り道で直した箇所、地元の者から聞いた必要品。担当者はそれぞれを受け取り、近くにいた者へ連絡先を伝えた。
ミュリカが水を置いた。
「船で起きたことも、お話しいただく必要はあります。ただ、詳しい聞き取りは皆さんの手当てと休息の後にできるよう、お伝えします」
ラウルは一度目を閉じ、頷いた。
エルディアスも椅子へ腰を下ろした。
ここまで歩いてくる間、荷の重さはずっと同じように背へあった。それを床へ置くと、肩だけでなく、脚まで重くなる。隣ではノンノが水を飲み、器を戻してから膝へ両手を揃えた。
「……帰ってきたんですね」
誰へ言うともなく、声が漏れた。
「まだ、信じられないか」
エルディアスが尋ねると、ノンノは首を振った。
「ここは、分かります。いつものギルドですから」
彼女は受付と、入口から出入りする者を見た。
「街の人がいつもどおりに歩いているのを見て、やっと戻れたんだなって思いました」
リュシアはその隣へ座り、水の器を両手へ収めた。何かを言い足すことはなく、ノンノがもう一度水を飲むまで待っていた。
少し離れた席で、ガルムが腕を見てもらっていた。セルマはその横で空の包みを畳み、ラウルが渡した紙を受け取っている。
エルディアスはミュリカへ顔を向けた。
「食事を頼めるか。九人分」
「はい。こちらへ運んでもらいますね」
ミュリカが答え、近くの者へ声を掛けた。
ラウルがこちらを見た。エルディアスは空いた卓を示す。ラウルは一度頷いてから、護衛と調査員にも声を掛けた。
皿が届くまでに、手当ての終わった者から席を移した。ガルムの盾は壁際へ置かれ、肩へ新しい布を巻いた護衛も、その隣に座る。
大きな卓が一つ、九人の荷に囲まれた。
まだ報告は残っている。答えられないことも、持ち帰ってしまった疑問もあった。それでも、今は全員が椅子へ座り、食べ物が届くのを待っていた。
最初の皿が置かれた時、ラウルは傍の者へ少し身体を寄せ、次の皿を通す場所を空けた。




