第31話 放送室のマイクと音楽室の水平線
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ゴールデンウィークが終わった。
(長いなーと思ってたものの何やかんやしてたらいつの間にか終わってた。)
給食の配膳をしながらふと考えた。
(終わるとなんか寂しいものだ。)
「本日の昼の放送を担当します、広報委員の原と!」
『同じく、結衣です!』
昼食の時間、校内スピーカーから聞き慣れた二人の声が響き渡った。
「前のご当地給食、最高でしたね! さて、次は午後の授業を乗り切るためのリクエスト曲……」
原のハキハキとした進行と、結衣の明るい相槌。広報委員としての二人の仕事ぶりは、クラスメイトたちからも好評だ。
教室でその放送を聴きながら、僕は手元の生徒会資料に目を落とす。
(……あいつら、楽しそうだな)
ふと隣を見ると、美歩も同じようにパンを齧りながら、スピーカーを見上げていた。
「……原くんたち、マイク通すとさらに元気だねー。」
美歩の少し寂しそうな呟きに、僕は「僕たちはその土台を作る役目だ」と答えた。
けれど、放課後の「探景」の時間が削られていく現実が、じわりと僕たちの肩にのしかかっていた。
五時間目。移動教室でたどり着いた南校舎の最上階、音楽室。
合唱の練習のためにピアノの周りに集まろうとした時、クラスの誰かが「うわ、すげえ!」と声を上げた。
開け放たれた大きな窓の向こう。
そこには、僕たちが普段生活している「街」のさらに先、キラキラと銀色に輝く駿河湾の水平線が、見事な弧を描いて広がっていた。
「……綺麗」
隣に立った美歩が、思わずといった風に声を漏らす。
手前には富士市の象徴である工場の煙突群、その奥に広がる深い青。五月の澄んだ空気のせいで、海と空の境界線がどこまでも鮮明に見える。
「……吉永校舎のこの高さからだと、あそこまで見えるんだね。……僕たちはいつもあの街の中にいるけれど、こうして見ると、海と山に抱かれているんだと実感するよ」
僕は無意識に、カメラに納めたいとも感じた。
けれど、今は授業中だ。
「……撮りたかったね」
美歩が僕の気持ちを見透かしたように、小さく笑った。
「……うん。でも、この『景』は、目に焼き付けておくよ」
委員会や放送、それぞれの忙しさが始まっても、学校という箱の中から見える景色は、昨日より少しだけ広く感じられた。
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