第27話 鉄路の記憶、東海道を東へ
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日曜日の朝。
初夏の空気の中、僕は約束の午前8時00分ちょうどにJR吉原駅の改札前に立った。
(2日連続の旅。疲れがすごいかなと思ったけど意外と大丈夫そうだな。)
僕は、少し自分の肩を叩いた。
ほどなくして、見慣れたベージュのコートを着た美歩さんが現れた。手にはいつものカメラバッグ。
「おはよう、佐野くん。……ごめんね、急に誘っちゃって」
「いや、ちょうど僕もどこか行きたいと思ってたところだから」
僕たちは改札機にそれぞれのICカードをタッチする。僕が使っているのは、このエリアでお馴染みの「TOICA」だ。
解説しよう!!TOICAとは、
JR東海、東海旅客鉄道が発行しているICカード乗車券。名古屋や静岡エリアの鉄道移動には欠かせないアイテムで、チャージしておけば改札機にタッチするだけで運賃が自動精算される。
名称の由来は「TO kai I C CA rd」の略で、カードに描かれたカモメのキャラクターが目印である!!
以上解説の佐野でした。
「……これ一枚あれば、楽に沼津まで行けちゃうんだから、便利だよね」
美歩さんがカードをパスケースにしまいながら笑う。
ホームに降り立つと、そこには東の沼津方面へと、どこまでも真っ直ぐに伸びる鉄路があった。東海道本線の中でも、この吉原から沼津にかけての区間は、非常に線形が良いことで知られている。
「……綺麗な直線だね」
美歩さんが線路の先を見つめる。
「そうだね。ここはかつて、日本を代表する名列車たちが駆け抜けた『栄光のメインライン』なんだ」
僕は眼鏡を「くいっ」と直し、かつての景色に想いを馳せた。
「今でこそ普通列車や貨物列車が中心だけど、数十年前までは、ここを東京と九州を結ぶ『ブルートレイン(寝台特急)』や、華やかな特急列車たちが100km/hを超えるスピードで風のように通り過ぎていったんだ。富士山を背に、長い編成の客車がこの直線を疾走する姿は、当時の鉄道ファンにとっては聖地のような光景だったはずだよ」
「……ブルートレイン。名前は聞いたことある。青い列車が夜を徹して走るなんて、なんだかロマンチックだね」
「今はもう新幹線にその役目を譲ってしまったけれど、このレールの輝きや、真っ直ぐな道筋には、当時のプライドがまだ残っているような気がするんだ」
「サンライズ出雲、瀬戸っていう寝台特急が、まだ東京から出雲市、高松をむすんで今も走ってるんだよ」
「そうだねー 私も朝方、1回、三島の辺りとかで撮り鉄したことある」
「そうなんだ~!!いいね~」
「でしょ~ 今度見せるよ」
やがて、遠くからモーターの音が響き、3両編成のステンレス車両が滑り込んできた。JR東海の主力車両、313系の熱海行きの普通列車だ。
「さあ、行こうか。かつての特急たちほど速くはないけれど、この街の景色を眺めるにはちょうどいいスピードだよ」
「うん。……沼津、楽しみだな」
僕たちは開いたドアから車内へと踏み込んだ。
窓の外、線路沿いには五月の瑞々しい緑が広がっている。
ガタン、ゴトンと規則正しいリズムを刻みながら、列車は加速していく。
かつての旅人たちが見たであろう富士の裾野を、
今の僕たちの視線で追いかけながら。
吉原駅を離れた列車は、長い直線の先にある、潮の香る街・沼津を目指して走り出した。
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