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第24話 5月の始まりと独旅

最後まで読んでくださると嬉しいです!

五月最初の金曜日。

富士市の街は一段と色濃い緑に包まれていた。


放課後、教室から下駄箱へ向かう途中。

窓からは西日が差し込み、埃が光の粒となって舞っている。

「帰ったら、 グループチャット、招待しとくね! これで作戦会議も爆速だね!」


結衣が、声を弾ませる。グループ名は『探景同好会・富士カルテット』。アイコンは先日、原くんが撮った岳南電車の赤い車体だそうだ。


結衣が起点となって、僕たちはそれぞれの個人チャットも交換しようということにもなった。


「……便利だな」

「だろ? でも佐野くん、通知オフにして既読スルーすんなよ!」

原くんが笑いながら僕の肩を叩く。


賑やかな放課後。けれど、その日の帰り道。


僕はふと、あの「独り」の感覚が恋しくなった。

四人で見る景色は確かに鮮やかで、発見に満ちている。でも、自分だけの歩幅で、自分だけのシャッターチャンスを待つ、あの静かな時間もまた、僕にとっては欠かせない「探景」なのだ。


翌日の土曜日。僕は誰にも告げず、一台のカメラとリュックを持って家を出た。

目的地は決めない。散歩のようなノリで、ただ富士市を歩くことにした。


歩き始めて、早2時間。

まず足を止めたのは、僕らの町から坂をくだった先にある本吉原(ほんよしはら)駅だ。


ここは、僕の鉄道好きとして、旅好きとしての人生の始まりとなったいわば、僕の聖地のような場所だ。


駅の背後には、製紙工場の煙突や建物が構えている。これぞ富士市という景色だ。製紙工場独特の機械音や匂いもまた味わい深い。


他にも、この駅は、2021年にプラットホームと上屋が国の登録有形文化財に登録された。


解説しよう!!

今から遡ること、約80年前。

1950年開業当時の「間知石積けんちいしづみ」のホームや、1968年建造の「キノコ型」上屋が特徴で、レトロな雰囲気から地域住民にも愛されている。歴史的な価値もあることから、登録されたようです。

以上、解説の佐野でした。


(これが、夜になると屋根についている電気が、ホームを照らして、ライトアップされてるみたいになって綺麗なんだよな~)


(……やっぱり、独りだと『音』がよく聞こえるな)


眼鏡を「くいっ」と押し上げ、僕はファインダーを覗く。

遠くで鳴る踏切の音。工場の蒸気が抜ける音。そして、春から夏へと移り変わる風の音。


誰に解説するでもなく、ただ歴史の重みを肌で感じる。この駅を何万人の工員や学生が通り過ぎていったのか。その堆積した時間を、一枚の写真に閉じ込める。


本吉原から、ゆっくりと吉原商店街へ向けて歩を進める。


日曜日の午前中、商店街は穏やかな眠りの中にあるようだった。古い看板建築、角にある金物屋、かりん糖の店、漂ってくるお茶の香り。


四人で歩けば「あそこ寄ろうぜ!」と賑やかになるところだが、今日はただ、その空気感の中を泳ぐように歩く。


ここは、江戸時代の時は、主要五街道のひとつ、東海道の宿場町として栄えた。その後も地域の文化と商業の中心として、栄え続けてきたそうだ。

だが、しかし大型商業施設の相次ぐ開店にともない現在では、静まり返っている。


(ここに、大勢の人がいて、賑わっていたのか。なんだか、寂しいな。)

盛者必衰(じょうしゃひっすい)……」

(どんなに勢いがあっても、いつかは、衰えてしまうということなのか?)


ただ、多くの車が商店街のアーケードの中央にある車道を走り去っていく。


(いつまでも、この商店街があるといいな。)他力本願かもしれないが僕にできることなどただ、願うことぐらいしかないのかもしれない。


僕は、商店街をさらに歩き続けた。

目指す目的地は、富士市のバスターミナル「吉原中央駅」。

(全ての道(バスの路線)は、吉原中央駅(ローマ)に通ず。)


僕は、とある店の前で歩みを止めた。

商店街によくある「おもちゃ屋」だ。

(懐かしいな小さい頃は、父さんとよくここに着て、色々と買ってもらったけな。)

自然と店の中に足が動いていった。


暫くして、エコバックを下げて、店を後にした。

「買っちゃった」

エコバックの中には、鉄道の車両を模した玩具がひとつ入っていた。

「これで、全種類コンプリート!」

(8年越しの達成かな?)


この商店街のために、買い物をしてみるのもいいかもしれない。ふとその時思ったのかとも知れない。


さらに歩みを進めると吉原中央駅に到着することができた。

(ここから、学校とかのほうまで帰れないことはないけど、やっぱり徒歩で帰ろうかな。)

次々とバスがやってくる、交通の要を後にして、


再び、商店街のアーケードを通り、次の目的地、岳南原田駅を目指すことにした。


工場の配管を潜り、出荷前の紙製品がズラッと並ぶ倉庫の近くを通り、岳南原田駅へ。


フォークリフトのバックする音。紙の匂い。煙突からでる煙の匂い。隣を通りすぎる、車やトラックの音。流れる水の音。働く人の声。


そんなものが、混ざりあって工業都市らしい、風景を作り出している。

(工場の匂いを苦手と言う人もいるけれども、僕は、案外好きかな。)


大きく息を吸い込んだ。


(休日もお仕事お疲れ様です)そんなことを思いながら倉庫の近くを通りすぎた。


最後まで読んでくださりありがとうございました!

別の作品や次の話も是非見てみてください!

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