表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら魔族の子  作者: ヤッサン
家族の創造
20/61

第20話 紅蓮の誕生、二人目の家族

 俺たちのパーティーは三人となり、そのダンジョン攻略速度は、もはや常軌を逸していた。

 パティの炎と風が敵の陣形を乱し、ディーネの水と氷が敵の動きを封じ、そして俺の一撃が全てを終わらせる。その完璧な連携は、五十階層までの道のりを、まるで散歩でもするかのように容易いものに変えてしまった。

 五十階層の安全地帯にある宿屋。その一室で、俺は二人の前で、ある決意を告げた。

「――もう一人、眷属を作ろうと思う」

「なっ……!?」

 その言葉に、パティが弾かれたように立ち上がった。

「あなた、正気ですの!?また、あんな危険な儀式を行う気ですの!?今度は、本当に死んでしまいますわよ!」

 彼女の瞳には、本気の怒りと、そしてそれを上回る心配の色が浮かんでいた。前回、俺がどれほど危険な状態にあったか、彼女は肌で感じ取っていたのだ。

「大丈夫だよ、パティ。もう、あの時とは違う」

 俺は、自分のスキルが『MP無限生成』へと進化したことを、かいつまんで説明した。命を削るほどの魔力枯渇の危険は、もうないのだと。

「危険がない、ですって……?だとしても……!」

 なおも食い下がるパティを、ディーネが静かに制した。

「パティ様。スタン様の御心のままに。このディーネ、いかなる時も、ご主人様のお側を離れません。必ずや、お守りいたします」

 その絶対的な信頼を前に、パティはぐっと言葉を詰まらせ、不承不承といった様子で椅子に座り直した。

 俺が次に生み出す眷属。その属性は、もう決めていた。「火」だ。ディーネの「水」とは対極にありながら、互いを高め合う存在。そのためには、極めて高純度の火の魔力が満ちる場所が必要だった。

 幸い、次の五十一階層からのエリアは、その条件を満たすのに、これ以上ないほど最適な場所だった。

 そこは、以前の火山地帯をさらに凝縮したかのような、灼熱の地獄。「大溶鉱炉」と呼ばれるその階層群は、空気そのものが燃えているかのように揺らめき、至る所で溶岩が川となって流れていた。

 俺たちは、そのエリアの中心部、巨大なカルデラのように開けた場所を見つけ出した。そこは、この階層で最も強く、そして最も純粋な火の魔力が渦巻く、天然の祭壇だった。

「パティ、ディーネ。儀式の間、周囲の警戒を頼む」

「……ええ、分かったわ。絶対に、無茶はしないでよね!」

「お任せください、スタン様」

 二人が頷くのを確認し、俺は再び、禁忌の儀式の準備を始めた。

 魔法陣を描き、自らの血を杯に注ぐ。だが、今回は前回とは全く違う感覚があった。

『ハイリスククリエイト』

 詠唱と共に、俺の魔力が吸い出される。だが、それは枯渇へと向かう絶望的な流出ではない。そして、周囲の環境が、俺の魔力に呼応した。

 ゴオオオオオッ!

 カルデラに満ちる膨大な火の魔力が、まるで意思を持った龍のように、俺が描いた魔法陣へと殺到する。

(……なるほど。これが、本当の儀式か……!)

 前回は、俺自身の魔力だけで、無理やり無から有を生み出そうとしていた。だが、違う。この儀式の本質は、術者の血と魂を「鍵」として、世界の魔力そのものを借り受け、生命を「鋳造」することなのだ。

 だが、その力は、あまりにも荒々しく、そして破壊的だった。俺の制御を離れようと、灼熱の魔力が暴れ狂う。魔法陣が焼き切られそうになり、俺の体そのものも内側から燃え上がりそうだ。

(――お前は、俺に従え!)

 俺は、無限に生成される自らの魔力を盾とし、そして矛として、荒れ狂う火の龍に、真っ向から挑んだ。これは、魔力の消費量ではない。術者の魂の格、そのものが問われる、支配権を賭けた闘いだった。

 どれほどの時間が経っただろうか。

 やがて、荒れ狂っていた紅蓮の魔力は、その猛威を収め、俺の魔力に完全に屈服した。そして、それは魔法陣の中央で一つの光となり、ゆっくりと人の形を成していく。

 光が収まった時、そこに立っていたのは、ディーネとは対照的な、筋骨隆々たる一人の男だった。

 鍛え上げられた鋼のような肉体。燃え盛る炎のような赤い髪。そして、その瞳は、まるで溶岩のように、黄金色の輝きを宿していた。

 その男は、俺の前に静かに膝をついた。

「我が創造主よ。この身に、名を」

 その声は、重々しく、そしてどこまでも忠実な響きを持っていた。

 俺は、彼に近づき、その肩に手を置いた。

「お前の名前は、イフリートだ。属性は、炎。俺の二人目の家族だ」

 俺がそう告げ、炎の魔力を彼に注ぎ込む。ディーネの時とは違い、彼は微動だにせず、その全てを受け入れた。

「イフリート。我が名、心得ました」

 彼は立ち上がると、深く、恭しく一礼した。

「この身、この魂、その全てを、殿に捧げましょう」

 彼は、俺を「殿」と呼んだ。その言葉には、ディーネの「ご主人様」とはまた違う、武人としての絶対的な忠誠が込められていた。

 こうして、俺のパーティーは四人になった。

 静かなる水の眷属ディーネと、猛る炎の眷属イフリート。

 その対照的な二人を従え、俺は満足げに頷いた。

 少し離れた場所で、パティが、呆然と、そしてどこか羨ましそうな、複雑な表情でこちらを見つめていたのが、やけに印象的だった。

 俺の「家族」創りは、まだ始まったばかりだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ