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零界凍結 ―境界記録―  作者: 淺桜雫音
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第四部 第六話『希望の剣』

創世の外側。

無数の光が交錯する。

境界管理局。

神域。

七つの階層世界から集った戦士たち。

そして、観測者の軍勢。

それぞれの想いがぶつかり合い、世界そのものが震えていた。

「はあぁぁぁっ!!」

澪の剣が白い軌跡を描く。

一体の観測者が光となって消える。

しかし、その隙を埋めるように新たな観測者が現れる。

「きりがない……!」

境界管理局の隊員たちも懸命に戦うが、押し返すので精一杯だった。

神域側では咲希が両手を広げる。

「神域結界・展開。」

白い光が幾重にも重なり、仲間たちを包み込む。

観測者の攻撃が結界にぶつかり、激しい火花を散らした。

神喰らいだった少年も小さく手を伸ばす。

「みんなを……守る!」

胸から溢れた金色の光が結界へ溶け込み、ひび割れていた結界がゆっくりと修復されていく。

咲希は驚きながら微笑んだ。

「あなたも、立派な神域の力を持っています。」

少年は少し照れくさそうに笑った。

その頃。

最前線。

氷雨、茜音、月斗、夜城零。

四人は一直線に観測者の王へ向かっていた。

観測者たちは次々と立ちはだかる。

「邪魔!」

茜音の歌声が衝撃波となり、観測者を吹き飛ばす。

月斗は冷静に叫ぶ。

「左!」

夜城零が黒い剣を振るう。

《虚無断界》

黒い斬撃が空間ごと敵を切り裂いた。

その隙を逃さず、氷雨が駆け抜ける。

「《零界凍結・蒼天終焉》!」

青い光が一直線に走る。

観測者たちの動きが止まる。

完全には凍らない。

だが、数秒だけ世界が静止した。

「今だ!」

夜城零が叫ぶ。

四人は一気に前へ進む。

観測者の王は静かに彼らを見つめていた。

「成長。」

「確認。」

「予測値を上方修正。」

ゆっくりと右手を差し出す。

その掌に、一振りの剣が現れる。

刃は透明。

しかし内部には無数の《原初文字》が流れていた。

夜城零の表情が変わる。

「あれは……。」

「創世剣。」

茜音が首をかしげる。

「知ってるの?」

「神王ですら使うことを許されなかった剣だ。」

「世界そのものを書き換える力を持つ。」

空気が重くなる。

観測者の王は静かに剣を構えた。

「排除を開始する。」

一瞬だった。

誰も動きが見えなかった。

ズバァッ――!!

空間そのものが切り裂かれる。

氷雨たちは咄嗟に飛び退く。

しかし。

夜城零だけは避けなかった。

「零さん!」

黒い剣で受け止める。

激しい衝撃。

バキッ――。

長年ともに戦ってきた黒い剣に、大きな亀裂が走る。

夜城零は歯を食いしばる。

「ぐっ……!」

さらに押し込まれる。

膝が床につく。

その時。

氷雨は胸の奥で、何かが呼ぶ声を聞いた。

(……こっち。)

優しい声。

どこか懐かしい。

青い花が一斉に輝き始める。

一本。

二本。

三本。

四本。

五本。

花びらが宙へ舞い上がり、氷雨の周りをゆっくりと回り始めた。

夜城零が目を見開く。

「氷雨……?」

光は一か所へ集まっていく。

無数の花びらが一振りの剣を形作る。

柄は透き通る蒼。

刀身は氷のように美しく、それでいて温かな光を宿していた。

その剣に刻まれていた文字は、一つだけ。

《希》

希望。

氷雨はゆっくりとその剣を握る。

握った瞬間、不思議な温もりが全身へ広がった。

創世の巫女が静かに微笑む。

「その剣は……。」

「世界が、あなたに託した願い。」

観測者の王が初めて一歩下がる。

「……未知の武装。」

「観測記録なし。」

月斗は静かに呟く。

「未来が変わる。」

《天測》の中で、一本しかなかった未来が、少しずつ枝分かれしていく。

「希望が……可能性を増やしてる。」

氷雨は蒼い剣を握り直し、ゆっくりと前へ出る。

「この剣は……。」

仲間たちを見る。

茜音の笑顔。

月斗の静かな眼差し。

夜城零の力強い背中。

咲希や澪、境界管理局のみんな。

そして創世の巫女。

「私一人の力じゃない。」

その言葉に呼応するように、《希》の文字がさらに輝きを増す。

観測者の王は、静かに創世剣を構え直した。

「ならば。」

「希望を観測する。」

二人は同時に地面を蹴った。

蒼き希望の剣と、世界を書き換える創世剣。

二つの刃が、創世の外側で激突しようとしていた。

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