第四部 第五話『集結』
創世の外側。
静寂だった世界に、無数の足音が響く。
境界管理局。
神域。
第一階層。
第二階層。
七つの世界、それぞれから集まった者たちが、氷雨たちの後ろに立っていた。
誰一人として逃げない。
誰一人として目を逸らさない。
茜音は思わず笑った。
「すごい……。」
「こんなにいるんだ。」
澪が肩をすくめる。
「当然でしょ。」
「世界を守りたいって思ってるのは、あなただけじゃない。」
その一言に、茜音は大きく頷いた。
咲希は創世の巫女の前へ歩く。
優しく頭を撫でる。
「もう怖くありません。」
「あなたは一人じゃない。」
巫女は小さく笑った。
「……うん。」
その笑顔を見て、神喰らいだった少年も少しだけ微笑む。
「僕も……戦う。」
氷雨は驚く。
「でも君は……。」
少年は静かに首を振った。
「今度は僕が誰かを守りたい。」
その瞳には、もう怯えはなかった。
一方。
観測者の王は、集まった全員を見渡していた。
「総数増加。」
「戦力評価。」
「……変化なし。」
その言葉と同時に。
背後の無数の扉が一斉に開く。
現れる観測者の軍勢。
空を埋め尽くすほどの数。
白い仮面が、静かにこちらを向く。
澪は剣を抜く。
「数なら向こうが上ね。」
夜城零は静かに笑う。
「だが。」
「想いの数は負けない。」
「行くよ!」
茜音が一歩踏み出す。
《共鳴歌・星界》
歌声が響いた瞬間。
七つの世界から集まった仲間たちの身体が淡く輝く。
力が繋がっていく。
一人の力ではない。
全員の想いが、一つになっていく。
月斗は目を閉じる。
《天測》。
未来を見る。
今まで白く塗り潰されていた未来。
しかし今。
その白い世界に、一筋の光が走る。
「見えた。」
夜城零が振り向く。
「本当か。」
月斗は静かに頷く。
「たった一つ。」
「みんなが揃ったことで。」
「未来が生まれた。」
その瞬間。
観測者の王が初めて右手を掲げる。
「戦闘許可。」
世界が震えた。
無数の観測者が一斉に動き出す。
黒い波が押し寄せる。
「迎え撃て!!」
澪の声が響く。
境界管理局が突撃する。
神域の番人たちも続く。
七つの世界の戦士たちが、一斉に観測者へ向かって走り出した。
創世の外側で。
史上最大の戦いが始まる。
氷雨たちは最前線に立つ。
夜城零が黒い剣を構える。
「俺たちの役目は一つ。」
氷雨が頷く。
「観測者の王を止める。」
茜音は笑う。
「そのために来たんだもんね!」
月斗も静かに前を見る。
「道は開く。」
四人は同時に駆け出した。
しかし、その時。
創世の巫女だけが立ち止まる。
遠くで、何かが聞こえた。
誰にも聞こえない、小さな声。
「……助けて。」
巫女の表情が変わる。
「この声……。」
創世者だった。
砕けかけた創世者が、誰にも気付かれないほど弱々しい声で助けを求めていた。
巫女は胸を押さえる。
(まだ終わってない。)
(創世者も……救える。)
その決意とともに、五輪目の青い花が静かに咲く。
一方その頃、観測者の王は氷雨たちを見つめ、初めて静かに呟いた。
「感情。」
「希望。」
「絆。」
「これが、世界を変えるというのか。」
その瞳が、わずかに揺らぐ。




