↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
零界凍結 ―境界記録―  作者: 淺桜雫音
PR
21/31

第四部 第一話『創世の外側』

光の扉は、静かに揺れていた。

七色にも、白にも、黒にも見える不思議な光。

その向こうには景色がない。

いや──

景色という概念そのものが存在していなかった。

氷雨が一歩踏み出す。

足元に床はない。

それなのに落ちることもない。

まるで、自分という存在だけが何かに支えられているようだった。

「……変な感じ。」

小さく呟く。

その声はどこにも反響しない。

音ではなく、思考だけが世界へ溶けていく。

茜音は周囲を見回した。

「空もない。」

「地面もない。」

「なのに立てる。」

少し笑おうとする。

でも笑えない。

本能が告げている。

ここは今まで訪れたどの階層とも違う。

月斗は静かに目を閉じる。

《天測》

未来を見る。

……

何も見えない。

初めてだった。

可能性が一本も存在しない。

「……予測不能。」

額に汗が流れる。

「未来がない。」

夜城零が静かに答えた。

「違う。」

「ここでは未来すら、まだ創られていない。」

三人は息を呑んだ。

その時だった。

暗闇に、小さな光が一つ灯る。

いや。

光ではない。

「文字」

だった。

一文字だけ。

『始』

それがゆっくり浮かび上がる。

続いて、

『命』

『時』

『空』

『心』

無数の文字が宇宙のような空間を漂い始める。

茜音が目を丸くする。

「漢字?」

夜城零は首を横に振る。

「違う。」

「これは世界を構成する《原初文字オリジンコード》だ。」

「七つの世界も。」

「神王も。」

「世界核も。」

「すべて、この文字から生まれた。」

その瞬間。

一文字が黒く染まる。

『心』

黒い波紋が広がる。

周囲の文字まで少しずつ黒く変色していく。

夜城零の表情が変わった。

「もう侵食が始まっている。」

月斗が尋ねる。

「創世者か?」

夜城零は頷く。

「創世者は世界を壊しているんじゃない。」

「世界を書き直している。」

その一言に全員が黙る。

突然。

黒く染まった文字が砕けた。

その欠片が人の姿になる。

白い仮面。

黒い外套。

しかし虚無機構とは違う。

もっと古い存在。

「創世執行者。」

夜城零が低く呟く。

「創世者直属の存在だ。」

仮面の人物は四人を見る。

「異常確認。」

「旧世界存続因子。」

「削除開始。」

その瞬間。

文字が空間いっぱいに広がる。

『消』

『無』

『終』

三文字が巨大な光となり、四人へ降り注ぐ。

「散れ!」

夜城零が叫ぶ。

四人は同時に飛び退く。

文字が触れた場所だけ、

存在そのものが消えていく。

爆発も炎もない。

ただ、

「そこにあった」という事実だけがなくなる。

氷雨は息を呑んだ。

(これが……)

(創世者の力。)

氷雨は静かに前へ出る。

「私は……」

青い光が身体を包む。

《零界凍結・蒼天終焉》

世界ではなく、

文字そのものを凍らせようとする。

青白い氷が『消』へ伸びる。

初めて、

原初文字がわずかに動きを止めた。

夜城零が目を見開く。

「凍らせた……?」

茜音も驚く。

「すごい……!」

しかし。

次の瞬間。

黒い笑い声が世界中へ響く。

「観測。」

「適応。」

「記録完了。」

誰の声でもない。

創世者でもない。

もっと遠く。

もっと高い場所。

そこから誰かが、

四人を見ていた。

夜城零は静かに剣を構える。

「……来る。」

空間全体が震え始める。

無数の原初文字が集まり、

巨大な一つの扉を形作っていく。

その扉には、たった一文字だけ刻まれていた。

『創』

扉はゆっくりと開く。

その奥から、一人の人影が姿を現そうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。