第三部 第四話『神王の間』
神喰らいの少年が眠る結晶の前。
三人は言葉を失っていた。
怪物だと思っていた存在の中に、一人の少年が封じられていた。
その小さな手は、今も助けを求めるように震えている。
氷雨の決意
氷雨は結晶にそっと手を添えた。
冷たい。
けれど、その奥から微かな鼓動が伝わってくる。
「生きてる……。」
少年は確かに生きていた。
「私は、この子を助けたい。」
その言葉に迷いはなかった。
茜音の想い
「私も。」
茜音が氷雨の隣に立つ。
「もし私があの子だったら、誰かに見つけてほしい。」
静かな言葉だった。
けれど、その優しさは神域の空気を少しだけ温かくした。
月斗の分析
月斗は結晶を見つめる。
《天測》を発動する。
無数の未来が枝分かれし、その中に一本だけ光る道があった。
「助ける方法はある。」
二人が振り向く。
「ただし、その道は一番危険だ。」
咲希の案内
咲希が静かに歩き出す。
「来てください。」
「神王の間へ案内します。」
三人は神域の奥へ進む。
そこには巨大な白い階段があり、果ての見えないほど高く続いていた。
一段上るたびに、世界の音が少しずつ消えていく。
神王の間
階段の頂上。
巨大な扉がゆっくりと開く。
中には何もない。
玉座が一つだけ置かれた、静かな空間。
その玉座には、一人の人物が座っていた。
白銀の髪。
黄金の瞳。
年齢すら分からない存在。
「ようこそ。」
穏やかな声が響く。
「私は、神王。」
問い
神王は三人を見つめる。
「答えてください。」
「一人を救うために、世界が滅ぶとしたら。」
「あなたたちは、その一人を救いますか?」
静寂が流れる。
月斗の答え
月斗は目を閉じる。
未来を見ても、この問いに正解はなかった。
「……分からない。」
「でも、誰かを見捨てることを正解にはしたくない。」
茜音の答え
「私は助ける。」
迷いはない。
「世界を守る方法は、そのあと考える。」
氷雨の答え
氷雨は神王をまっすぐ見つめる。
「昔の私は。」
「誰も傷つかないように、全部凍らせようとしてた。」
一歩前へ出る。
「でも、それは違った。」
「だから私は。」
「誰かを助けながら、世界も守る方法を探す。」
神王の反応
神王は静かに微笑む。
「……そうですか。」
その笑顔は、どこか寂しそうだった。
「夜城零も、昔は同じことを言いました。」
三人が息をのむ。
「ですが彼は、多くの命を失う現実を見続けるうちに、その答えを変えました。」
その時、玉座の奥の扉が開く。
夜城零がゆっくりと姿を現す。
「来たか。」
静かな声。
敵意はない。
ただ、覚悟だけがそこにあった。
約束の決闘
夜城零は三人を見る。
「神王の前で、お前たちの答えを証明しろ。」
「言葉ではなく、力で。」
神王も立ち上がる。
「これは裁きではありません。」
「未来を選ぶ者を決める試練です。」
ラスト
神王の間に四人が立つ。
氷雨。
茜音。
月斗。
そして夜城零。
誰も武器を抜かない。
だが、その静寂は嵐の前触れだった。




