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046. ぼ、ボクが……学園に……!?

『――そこでヨゾラ様が、「それを言うなら純行式でしょ!」と仰るものですから……! わたくしもう、おかしくておかしくて……!』


 優雅にディナーを味わう俺の、首元のネックレスから聞こえてくるのは、学園での一幕を楽しげに語るアリアさんの声。隣に控えるアミュレットさんは、それを……孫をあやしているおばあちゃんぐらい、デレデレの笑みを浮かべながら聞いている。


 その隣ではチャームくんが、なんだか羨ましそうに、俺を見ていた。


「……アミュレットさん、メイドの人たちって、食事どうしてんすか?」


「……んぇっ? あっ……! こ、こほん……! じっ、時間を見て適当に済ますが……! そ、それがどうした……!?」


 いや、油断しすぎだろあんた……。まあ、今まで引きこもり陰キャだと思って心配してたお嬢様から、友達との楽しそうな話が聞けたとなれば、お付きのメイドとしてはすげえ嬉しいんだろうけども。


「ちゃんといいもん食ってます? 忙しいからパンだけかじって~、なんてやってないっすよね?」


「いやまあ、あまりにも時間が無いときはそうするかもしれんが……。基本的には、王家の方々と同じものをいただいているぞ」


「えっ、そうなんすか」


 ありゃ、てっきりチャームくん、豪華な食事に憧れてるのかと……。


『もちろんですわ! 仮にも当家にお仕えいただいている方々を、無下にするわけにはいきませんもの!』


「毒見という役割ももちろんあるが、そもそも我々が体調を崩して、ご迷惑をかけるわけにもいかんからな。……こほん。お心遣い、感謝いたしますわ、お嬢様」


 そう言って、彼女は俺(アリアさん)に微笑みかけた。


「……なんなんだ急に。心配でもしてくれているのか?」


「あーいや、その……」


 口ごもりながら向けた視線に、チャームくんが気付いた。彼は軽く目を見開くと、照れたような微笑みを浮かべながら、不思議そうに首を傾げた。


「……チャームくんが、物欲しそうに見てたんで……」


「うえぇっ!?」


 一転、弾かれたように体を跳ねさせ、彼は大きな鳴き声を上げた。


「……チャーム? あなたもさっき、同じものを食べたでしょう?」


「あっ、いやっ、違くて……! その……!」


 両手をあたふたとぱたつかせ、狼狽えるように目を泳がせたかと思うと、やがて顔を伏せる。


「……王女様が、すごく楽しそうにお話しされてたので……」


 ひどく恥ずかしげに呟いたチャームくんは、耳まで真っ赤になってしまっていた。


「その……学園って、そんなにいいところなんだなぁって、羨ましくなっちゃって……」


「チャーム……」


『まあ、そうでしたのね……』


 ――憧れるのも無理はないだろう。同年代の子たちが友達を作って遊んでいたころ、この子はずっと閉じ込められていたのだから。


『……でしたら! チャームもわたくしと一緒に、学園に通うというのはどうでしょう?』


「うっ……!?」


「おー、Nice Idea.(ないすあいでぃ~あ)」


「ぼ、ボクが……学園に……!?」


 顔を上げたチャームくんの瞳が、キラキラと輝いている。


「お、お待ちくださいお嬢様……! 水を差すようで恐縮ではございますが……あの学園に入るには、確かな身分が必要でございますので……!」


『身分? それなら問題ありませんわね! まだ見習いとはいえ、当家にお仕えいただいている時点で、チャームも立派な王族関係者ですもの!』


「たしかに~」


 ……詭弁だ。でもまあ、面白そうだし乗っておこう。


「そっ、それに……! チャームの歳で初等部へ入学というわけにもいきませんから、編入には相応の才能と実力が求められて……!」


「チャームくん歳いくつ?」


「あっ、えと、今年で……十五歳……? だと思います……たぶん……」


 ……アリアさんの二個上か。にしては、顔立ちも体型もまだ幼く見えるな……。


『まあ! でしたら高等部の一年生ということになりますから、わたくしと同じクラスですわね!』


「んじゃあちょうどいいね。ここに、たった数日で高等部まで飛び級してしまった天才魔導士がいるから、手取り足取り教えてあげられるよ」


「ほっ、ほんとですか!?」


「ま、まてまてまてまてっ! エイトっ、お前まで……!」


 珍しく、アミュレットさんが慌てふためいている。


「もー、なんすかアミュレットさん、何が気に入らないってんすか?」


「き、気に入らないだとか、そういう話では……!」


『では他に何か、問題があるのでしょうか……?』


「そ、それは……!」


 なにやら言いづらそうに口をパクパクとさせ、彼女は目を泳がせた。


「……あ、あのっ!」


 その時、チャームくんが意を決したように口を開いた。


「王女様……それに、エイトさんも……ボクのために考えてくれて、ありがとうございます……! でも、大丈夫です! メイドのお仕事もまだ見習いですし……それに、今こうやってお姉ちゃんと一緒にいられるだけでも、ボクは十分幸せですから!」


 そう言って笑顔を見せたチャームくんのことを、アミュレットさんは複雑そうな表情を浮かべたまま、じっと見つめていた。

読んでいただきありがとうございます!

少しでも「おもしろい」と思っていただけたなら幸いです……。

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今後とも、よろしくお願い申し上げます。

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