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022. 人を暴れ馬扱いすなー!

( で始まって 」 で終わるセリフは、アリアが話した言葉をそっくりそのまま、エイトが話しているという表現です。(毎回地の文で補足するとウザいので……)

 ベッドの中、ヘッドボードに背を預けながら、明日の予定を確認しに来てくれたアミュレットさんの話を聞いていた。


「――申し訳ございません、お嬢様……。このようなときに……」


(いいえ、気にする必要はございませんわ! そちらも大いに、大切なご用ですもの」


 どうしても外せない予定があるらしく、明日はアミュレットさんがついて来てくれないらしい。……なんか、急に不安になってきたな……。


「夜には戻りますので、それまではどうかしっかりと、エイトの手綱を握っておられますよう……」


「……っておーい! 人を暴れ馬扱いすなー!」


 渾身のツッコミだった。きっと大爆笑間違いなしだろう、そう思いながらアミュレットさんの顔を見ると、彼女は非常に冷ややかな目で俺を見ていた。……まさか異世界来てまで、ダダ滑りするとは思わなかったな……。


(ぶふっ……! ぐふふっ……! もっ、申し訳ありませっ……! えひひっ……!)


 まあ、アリアさんのツボにはハマったみたいだし、いいか。


「はぁ……とにかく、気を抜くんじゃないぞ?」


 ため息混じりに問いかけたアミュレットさんに、俺は片手をあげて、「はーい!」と大きく返事をした。


 彼女は顔を引きつらせ、またため息をついたあと、ドアのほうへ向かって歩いていった。


「それではお嬢様、ごゆっくりお休みくださいませ……」


 そして彼女はくるりと振り返り、深くお辞儀をした。部屋の中が、フッと暗くなる。




 ――閉まりゆくドアの隙間、廊下からの明かりに照らされたアミュレットさんの顔が、ひどく辛そうに見えた。




「……アミュレットさん、相当疲れてるっぽいね……」


 ベッドに体を滑り込ませながら、俺は言った。


(はぁ……ふぅ……! そ、そうですわね……!)


 息を整えつつ、アリアさんが呟く。


「アミュレットさんの予定って、アリアさんは内容知ってんの?」


(あ、えと……。たしか遠方より、弟君(おとうとぎみ)がお越しになられるとか……)


「へぇ、アミュレットさんにも兄弟いるんだ」


(ええ……唯一のご家族であると、伺っておりますわ……)


 おぅふ……こりゃまた事情がありそうな……。


(とてもお忙しい方らしく……月に一度くらいしかお会いできないそうですわ。ですのでそれに合わせて、アミュレットも毎月、休みを取っているという形になりますわね)


「そっかぁ……。それでリフレッシュできるといいんだけど……」


 住み込みで働いてるっぽいし、ちゃんとした休みもほとんどないんだろうなぁ……。


「……お世話になりっぱなしだし、お礼とかしたいな」


(お礼……()いですわね! わたくしも、迷惑をかけてしまっているお詫びがしたいですわ!)


 こういうのって何がいいんだろう、肩たたきとかかな。


(よければわたくしも、一緒に考えさせていただいてもよろしいでしょうか……?)


「もちろん! てか俺だけじゃ、アミュレットさんの好みとかまったくわかんないしね」


 それから、眠気がやってくるまでの数分間、アリアさんと二人楽しくお話をして過ごした。




◇ ◇ ◇




 ――エイトとアリア、同じ肉体を共有する二つの魂が、揃って眠りについた頃。メイド長のアミュレットは、使用人それぞれに割り与えられている個室内で、必死に嘔吐をこらえていた。


「はあっ……! う゛っ……!! ……んぐっ、はぁっ……!」


 床にうずくまる彼女の額からは、玉のような汗が絶えず垂れ落ちていく。内側から込み上げてくるものに押され、漏れ出した(うめ)き声は、泣き声にも似た悲壮さを帯びていた。


「――メイド長、こちらにおられますか……!? 明日(あす)の人員に欠員が出てしまいまして……! 配置の調整について、ご相談申し上げたく……!」


 ノックとともに慌ただしく投げかけられたその声に、彼女は体を跳ねさせた。体を起こし、震える胸で大きく、深呼吸を繰り返す。


「……すぐ行きますわ。事務室でお待ちいただけますか?」


 そう返した彼女の声は、すでに普段どおりの柔らかさを取り戻していた。


「あ、ありがとうございます! 失礼いたします!」


 扉の向こうの相手は、彼女の異変に気付くこともなく、その場を後にした。


 足音が遠ざかっていくのを聞きながら、彼女は大きくため息をつく。


「――このまま生きるか、否か。決断は、とうに済ませたはずだろう……」


 自分に言い聞かせるように、彼女はそう呟き、ゆっくりと立ち上がる。


 差し込む月明かりに照らされたその顔は、まるで死人のように白く、闇の中にぼんやりと浮かんでいた。




◇ ◇ ◇

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