010. なんだそれ!?? チートじゃねえか!!!!
「――あっ! 居た!!」
行き止まりらしき小さな空間の奥、俺の視界に飛び込んできたのは、見慣れたフォルムのモンスターだった。
「スライムか、不定形魔法生物の代表格だな」
丸い、水滴のようなその体は半透明で、向こうの壁が透けて見えている。あいにく可愛らしい目や口は付いてないが、どう見たって『スライム』なモンスターが三匹、向こうでプルプルとうごめいていた。
(あれがスライム……! 本物を見るのは初めてですわ……!)
まあ、ずっと引きこもってたならそうでしょうね……。
「……自然発生したにしては、少し大きすぎるな……どこかに隠れていたのか……?」
怪訝そうに、アミュレットさんが呟く。
「なんにせよ、近付きすぎるなよ。危険な魔物であることに違いはないからな」
「え、危険? スライムがっすか?」
あんなの、ユニークスキル持ちの魔王化個体でもなきゃ、『ザコ』モンスターの代表格じゃないの?
「そうだ。奴等はいわば、意思を持った消化液の集合体だ。ひとたびあの体に触れれば骨まで溶かされ、養分として吸収されてしまうぞ」
(と、溶かされ……!?)
おぉう……思ったよりだいぶエグい生態してんなぁ……。
「それに、お前は今お嬢様の体を借りているんだ。慎重に動くのは当然だろう? ……もしその体に傷のひとつでも付けてみろ。そのときは私が、貴様を殺す」
「ひえっ……」
そう言ってアミュレットさんは、俺をギロっと睨みつける。それ、本気の目じゃん……。
「とはいえ、奴等の動きは鈍い。適切な距離さえ保っていれば問題はないだろう。魔法の練習台としても、ちょうどいい的だ。サポートするから適当に戦ってみろ」
「マジっすか! じゃあお言葉に甘えて……」
気を取り直して……。異世界転生から数時間、ついに初戦闘だ! 気合い入れていくぞー!
(エイト様! がんばってくださいまし!)
「ありがとう、アリアさん! ……ふぅー、よし!」
――『魔力をどのように変質させ、狙った現象を引き起こすか』という理論とその工程を、『呪文』と『魔法陣』という形式でテンプレート化したものが『定法式』だ。使いたい魔法の理論を理解した状態で、それに紐付けられた呪文と魔法陣の形状を思い浮かべ、最後に魔法の名前を唱えることによって、自動的に魔法が発動する、そんな仕組みらしい。
これが開発されたことによって、魔法というもののハードルが一気に下がったという。そのおかげで、俺も立派に魔法使いとして戦えるわけだから、開発者の人には感謝しないとな。
「『電撃放出』!」
遠くでうごめくスライムに向かって伸ばした手のひらの先、展開された魔法陣の中心部から、バチバチという音とともに眩しい光が迸る。
(わっ……!? か、雷、ですの!?)
そして放たれた、何本もの電撃の筋。それらはスライムに向かって空中を走り……途中で勢いを失って、地面に吸い込まれていった……。
「あ、あれぇ……?」
「……ふむ。やはり、初心者とは思えないほど上手いな。魔力の流れに淀みがなく、非常にスムーズで美しい。……ただまあ、自分が使う魔法の射程くらいは、きちんと把握しておくべきだったな」
「うっ……」
アミュレットさんのチクリと刺すようなご指摘に、思わず声が漏れた。
(すごいですわ、エイト様! 炎の魔法に続いて、雷の魔法まで使いこなすだなんて!)
それでもアリアさんは、素直に俺の才能を褒めてくれているが……なんだか複雑だぜ……。
「それからその魔法は、奴等にはあまり効果がないぞ。一般的なスライム族を倒すなら、体を凍らせて砕くか火で炙って蒸発させるほうが早い」
「な、なるほど……」
ってことはこの世界のスライムには、核とかコアみたいな明確な弱点はないのか。……それ、だいぶ厄介じゃない?
「蒸発かぁ、さっきの炎魔法は火力が足りなさそうだし……」
他にもいくつか魔法を覚えてきてはいるが、どれも有効打にはならなさそうだ。
……いや、攻撃魔法の章の最後のページに載ってたヤツなら、あるいは……? しかし説明文を読んだ限りでは、気軽にぶっ放していいようなもんではなさそうだったし……。
(え、エイト様……! スライムたちが何やら、怪しげな動きを……!)
なんてことを考えているうちに、スライムたちは互いに折り重なるように体を重ね……そしてなんと! 合体して、大き目のスライムになった!
「おっと……。こうなると厄介だ、怪我しないうちにさっさと帰るぞ」
「え!? もうっすか!?」
なんてこった。せっかくの初戦闘なのに、にげるを選ぶことになるなんて……。
――とその時、大き目スライムがブルブルと体を震わせたかと思うと、大きく体を伸ばすようにして跳ね上がり、距離を詰めてきた。
そしてスライムが着地したその瞬間、ビキビキという音とともに、地面に亀裂が走った。
「え」
(ふえっ……?)
「なっ……!? まさか……!!」
そしてその亀裂は、俺の足元まで伸び――そして次の瞬間、岩の砕けるような音とともに、俺の足元から地面が消えた。
「うえええええ!?」
(ひょええええ!?)
体が下に向かって落ちていく。見下ろした先、下層の地面まではおよそ三十メートルくらいか。痛いで済むような高さではないな。
……なんて、冷静に分析してる場合じゃない!! このままじゃアリアさんもろとも、確実に落下死だ!! せっかく魔法使いになれたってのに!!
「わあああああ!!」
(もうおしまいですわあああ!!)
もう地面はすぐそこまで迫ってきている。恐怖に目をつぶると、目の端で涙が溢れた。アリアさんの言うとおり、俺はもうおしまいなのか……。痛いのは嫌だなぁ……。
――そのとき、何かが俺の体を、優しく包み込んだ。
そして数回、謎の爆発音とともに浮遊感を感じたかと思うと、いつのまにか辺りは静まり返っていた。
「お嬢様、お怪我はございませんか?」
おそるおそるまぶたを開くと、そこには心配そうに俺を覗き込む、アミュレットさんの顔があった。
彼女は俺を、文字通り『お姫様抱っこ』で受け止めてくれたようだ。
(あぁ、アミュレット……! 助かりましたわぁ……!)
「あ、アミュレットさぁん!」
「うっ……!? そ、そうか……今はお前なんだったな……」
しかし彼女は一瞬顔をしかめ、俺から目を逸らす。……そんな嫌がらなくてもいいじゃん!
「あはは……すいません、助かったっす……」
「その、怪我がないなら、いいんだ……」
気まずそうに呟き、膝をついたアミュレットさんの手を借りて、ゆっくりとその場に降りた。
「えーっと……すげぇ高さだったと思うんすけど……どうやって助けてくれたんすか?」
「あ、あぁ……それはだな……」
そう言って彼女は、身に付けていた金属製のブーツを指差した。
「このブーツには、底面と踵部分に穴を開けてあるんだ。そこから炎魔法を噴出することで、蹴撃の威力を増幅できるようになっているんだが……それを応用すれば、少しだけ空を跳ぶこともできるんだ」
(ほ、ほえ〜……そんなものを装備していたのですね……。初めて知りましたわ……)
「そ、それって、ジェットブーツじゃないっすか!?」
突然のロマン武器の登場に、思わず声を上げてしまったが……なるほど、あの爆発音はジェット噴射の音だったのか。いきなりミニスカ姿になったのも裾を焦がさないためで……つまりあのロングスカートは、これを隠すためのものだったということか。うーむ、いい趣味をしている……。
「すげえ!! めっちゃかっけえじゃねえっすか!! 俺もそんなん欲しいんすけど!!」
「いや……お嬢様の体で、こんな物騒なものを振り回していいわけがないだろう……」
(こ、こんな重そうなものを履いて歩くだなんて、無理ですわぁ……!)
流れで魔法使いになったけど、やっぱり近接職もいいよなぁ……。一旦武器屋とか見て回ってみようかなぁ……。
「……ん? なんの音だ……?」
アミュレットさんの問いかけにじっと耳を澄ますと、どこかからベチャベチャと、粘性のある水音が聞こえてきた。音のするほうを振り返り……!?
「でぇっ!? デカすぎんだろ!?」
(わあっ!? き、巨大なスライムっ、ですわぁ!?)
――俺たちが落ちたのは、体育館より少し大きい程度の空洞だった。だが振り返った先にいたのは、その半分を埋め尽くすくらいに、巨大なスライムだった。
そのすぐそばに降ってきたさっきの大き目スライムが、巨大なスライムに取り込まれていく。
「こいつが母体か……! こんなところに潜んでいたとは……!」
母体ってことは、大き目スライムのほうはこいつの分裂体……子供だったってことか。取り込んだ獲物を養分として吸収して、大きくなれば分裂して個体数を増やす。そんな生態をしてるんだろう、たぶん。
(あ、あんな大きな魔物……どうやって戦えばよいのでしょうか……!?)
こっちが聞きたいよ! あんなの、『火の弾丸』何発撃てば蒸発させられるんだ!?
「逃げるぞ! まともに戦ったところで勝ち目は無い!」
ですよねー! 俺もそう思う! ……でもどうやって逃げればいいの!? 出口は遥か上だよ!?
「エイト! お前を抱えて跳ぶぞ!」
「な、なるほど!」
たしかに、ジェットブーツなら子供を抱えて跳ぶくらいわけないか。……お姫様抱っこは正直恥ずかしいけど、しょうがない!
(お、お待ちください! スライムの様子が……!?)
視界の端に捉えたボススライムの異変に、アリアさんが声を上げた。
ブルブルと小刻みに震えはじめたスライムは突然、背筋を伸ばすように長く、縦に体を伸ばした。そして勢いよく元の形に戻る、その過程でなんと、自らの体の一部をこちらに向かって発射してきた。
「危ない!!」
アミュレットさんは叫ぶと同時に俺の体を抱え、横に跳んだ。
「いだっ!!」
(あぐっ!!)
地面に叩きつけられ、痛みに思わず声が漏れる。それでも、消化液が体にかかるよりは何倍もマシだが……。
「ぐうぅっ……!!」
(あ、アミュレット……!?)
「アミュレットさん!? まさか……!?」
俺を抱いたまま、アミュレットさんは必死に歯を食いしばって何かに耐えている。
その腕を振りほどき立ち上がると、彼女の右足、ブーツの底からわずかに、煙が上がっているのが見えた。かすかに、何かが溶けるような音がする……。
「そっ、それ……!! 早く脱いで手当しないと……!!」
「だ、大丈夫だ……!! ほんの少しっ、穴から入っただけ……!!」
彼女は強がりながら立ち上がるも、右足を地面に下ろした瞬間、崩れ落ちるように膝をついた。
「あっ……ぐっ……!!」
(あ、足に、消化液が……!? そんな……ど、どうすれば……!!)
痛みに顔を歪ませるアミュレットさんに、アリアさんはひどく狼狽えている。
……足を負傷してしまった以上、踏み込みは効かず、俺を抱えて跳ぶことなどできないだろう。華奢なこの体では、岩壁をよじ登るのも一苦労だ。そしてそんなことをしているうちに、俺もアミュレットさんもアイツに取り込まれ、ドロドロに溶かされてゲームオーバーだ。……まったく、なんでこんなピンチばっか続くんだ……。
「アリアさん! ごめん! あの魔法を使うよ!」
(ふえっ……!? あ、あの魔法、と言いますと……!?)
振り返った先では、ボススライムがうにょうにょと体を弾ませている。心なしか距離が縮まっているところを見ると、直接俺たちを取り込むためにこちらへ向かって来ているようだ。
あの巨体を吹き飛ばすには、生半可な魔法では火力が足りないだろう。ならば多少の……いや、多大なるリスクを背負ってでも、高威力広範囲の魔法を使うしかない。魔導書の最後のページに載っていたこの魔法なら、上手くいけばあいつを倒せるはずだ。
「すぅー……ふうぅー……」
この一撃にかけるほかない。俺は両手をボススライムに向け、展開した魔法陣に、ありったけの魔力を注ぎ込んだ。
「『魔力収束砲』!!」
――これは、『全ての魔力をまとめて一気に放つ魔法』だ。他の魔法とは違い、魔力を変質させたりせずそのまま撃ち出すだけという、非常にシンプルな原理で構築されている。体内の魔力を操作する技術さえあれば発動できるため難易度が低く、初級魔法に位置付けられているが、威力はその本人の魔力量に左右されるため、使い手次第では上級魔法に匹敵するほどの破壊力にもなるという。
一見すると高いポテンシャルを秘めたユニークな魔法のように思えるが、同時に、保有魔力が空っぽになってしまうという大きなリスクを抱えている。それは戦闘の継続が不可能になってしまうだけでなく、急速な魔力消費や魔力欠乏によって引き起こされる、様々な症状に見舞われる可能性が高いということを意味している。最悪の場合、死に至ることもあるとのことだ。
少なくとも、魔法使いになれたからといって気軽に試していいようなものではないだろう。ましてや、他人の体を乗っ取ってしまっている状態でなんて、もってのほかだ。
それに、この体にどれだけの魔力が残っているのか。魔法の才能がないアリアさんの肉体が、どれだけの魔力を生み出せるのか。それがわからない以上、発動したところで大した威力にならない可能性だってある。
それでも、ここで全滅するくらいなら、やってみる価値はあるだろう――。
詠唱と同時に魔法陣から放たれたのは、視界を全て埋め尽くしてしまうほど、極太のビームだった。
「う、うおあああああ!?!?」
(な、なんですのこの魔法はああぁぁ!?)
驚きに叫ぶ自分の声すら、かき消えてしまうほどの轟音が辺りに響く。あまりの威力に、反動で体が後ろへ吹き飛ばされそうになるのをなんとかこらえる。さっきお試しで使った二つの魔法が、おままごとに見えるほど桁違いの規模だ。
「前が見えねえから当たってるかわかんねえ!!」
なんとなくボススライムがいた辺りに向けてはいるが、そんなことをしなくともたぶん当たってるだろう。それくらい、ビームがデカい。
「てかもういいんじゃね!? 流石に倒したっしょ!? これ以上やったら洞窟崩れちゃうんじゃない!?」
そう叫ぶと、ビームはゆっくりと細くなっていった。そして目の前の魔法陣が消えたとき――ボススライムは跡形もなく、消し飛んでしまっていた。
「……………………え、えーっと……勝利! ……で、いいのかな……?」
(スライムは……どこにも見当たりませんし、無事に倒せたのではないでしょうか……?)
キョロキョロと辺りを見回すも、スライムは影も形もなく。それよりも向こうの壁が、ビームの影響か赤くドロドロに溶けかけているのが気になる……。とんでもない威力だったんだな……。
「い、今のは……『魔力収束砲』か……!?」
膝をついたまま、アミュレットさんが俺に問う。
「あっ、えーっと、そ、そうっすね、たぶん……」
思ってた百倍くらいの威力だったせいで、自分が使った魔法なのに自信が持てない。なんだったんだ今のは……。
「そんな馬鹿な……! こんな威力になるなんて……いったい、どれほどの……!?」
信じられないといった様子で彼女は呟く。
「そ、それにお前、体はなんともないのか……!?」
「え? あ、そういえば……」
魔力欠乏の副作用として載っていた眩暈や吐き気、倦怠感や疲労感といった症状は、今のところ出てきていない。強いて言えば……コルセットがキツくてしんどいくらい?
「とくに体に異常はなくて……ていうかそもそも、魔力が減ってる感じもあんまないような……」
「ありえない……! 保有魔力を全て撃ち出す魔法だぞ……!? なんの反動も無いわけが……!」
(……あっ!!!)
突然、アリアさんの大声が頭の中で響いた。
「ど、どうしたのアリアさん……!?」
(きっと、わたくしの『スキル』のせいですわ!!)
あぁ、忘れてた。そういや、そういうのもあるんだっけか。
(エイト様! 実はこの世界の人々は皆、一人一人特別な『スキル』を持って産まれてくるのです! 例に漏れず、わたくしもそうだったのですが……!)
どこか興奮気味に、彼女は言った。
(……授かったスキルの希少さと有用さゆえ、お父様にも将来を有望視されていたのですが……わたくしのあまりの才能の無さゆえに、まったく活かすことができず……)
と思いきや、急に落ち込んでしまった。自分で言って自分で食らってちゃ慰めようがないよ……。
「お嬢様が、どうかしたのか……?」
「あぁいや、その……魔法の反動がなかったのが、自分のスキルのおかげかもしれないって……」
俺の言葉に、アミュレットさんは驚いたように目を見開いた。
(こほん! それで、わたくしのスキルについてですが……)
そして、どこかもったいぶるかのように、アリアさんはひとつ息をついた。
(――『底無の根源』。その効果は、『魔力保有量が無限になる』ことだと……鑑定士の方が、そう仰っておりましたわ)
「……はあ!? 待って、魔力無限!?!? なんだそれ!?? チートじゃねえか!!!!」
無限って、マジの無限か!? だとしたらどんだけ使っても減らないってことで……だから、さっきの魔法使っても反動なかったってこと!? んで、無限の魔力を一気にぶっ放したから、あんなすごい威力になったってこと……!? ち、チート能力すぎる……!
「魔力が……無限に……!?」
そんな中、アミュレットさんはなぜか、ひどく驚いた表情でそう呟いた。……専属のメイドなのに知らなかったの?
(……本当は、誰にも話してはならないと、お父様からキツく言われておりまして……。ですのでアミュレットも、いま初めて知ったはずですわ)
なるほど、だからこんなに驚いてるわけね。
(エイト様、どうかこのことは、この場限りの秘密ということに……)
「いま言うそれ!? まあいいけど……。アミュレットさん、アリアさんが、スキルについては秘密にしてほしいって言ってっすけど……」
と声をかけるも、アミュレットさんは表情をそのままに、目を伏せたまま反応がない。
「アミュレットさん? 大丈夫っすか?」
「――あ、あぁ、わかっ……かしこまりましたわ、お嬢様……」
再度呼びかけると、ようやく彼女は返事をした。
「……無限の魔力、でございますか……。どうりで、陛下が秘匿なされようとするわけですわ。それは実質的に、エネルギーを無限に生み出すことができるということですから……」
たしかに、例えば炎魔法で水を沸かして蒸気を作れば、それでタービンが回せるわけだから、アリアさんがいるだけで電力が無限に賄えてしまうわけだ。一家に一台欲しいな。
「エイト、くれぐれも口を滑らすなよ? もしこれがどこかに漏れでもしたら、お嬢様の身柄を狙う輩がわんさとやってくるだろうからな」
(ひっ……!?)
「き、気を付けます……」
そうなると実質俺が狙われるわけだから、そりゃ黙ってますとも。
「……しかしまさか、あのデカブツを一人で倒してしまうとはな……」
俺の顔をじっと見つめ、アミュレットさんは言った。
「すまないエイト。お前がいなければ今ごろ私は……それにお嬢様も、あのスライムに溶かされ死んでいただろう。本当に、感謝する」
そして彼女は、膝をついた体勢のまま深く頭を下げた。
(エイト様、わたくしからも……アミュレットを救っていただき、本当にありがとうございましたわ)
さらにアリアさんからも感謝のお言葉をいただき、なんだかむず痒さを感じてしまう。
「いやぁそんな……。すごかったのはアリアさんのスキルだったわけだし……」
(そんなことありませんわ! わたくしではあのような魔法、発動すらできませんもの! 才溢れるエイト様だからこそ、あの窮地を脱することができたのですわ!)
「それでも、それを活かすことができたのは、お前の実力あってのものだ。謙遜する必要はないぞ」
「うっ……!? おっ、あっ……あざーっす……!」
重ねてぶつけられた致死量の褒め言葉に、危うく言語を失うところだった。悪い気はしないが、照れくさ過ぎて顔がアツいぜ……!
「さて……話はこれくらいにして、こんな洞窟からはさっさと出よう。あそこの道が、上層に続いていればいいんだが……」
アミュレットさんが指差す先、ボススライムで隠れていた横の壁に、ぽっかりと穴が空いている。
「あっ、俺ちょっと見てきます」
「気をつけろ、まだ分裂体がいるかもしれないからな」
「うっす!」
背中にかけられたアミュレットさんの声に、軽く返事をしてから俺は駆け出した。
読んでいただきありがとうございます!
少しでも「おもしろい」と思っていただけたなら幸いです……。
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今後とも、よろしくお願い申し上げます。




