阿漕の浦奇談
平安時代後期の宮中でめったに起きないことが出来しました。北面の武士佐藤義清と、彼とは身分違いにあたる、さる上臈の女房との間に立った噂話です。上臈の女房が誰であったかは史書に記されていませんが、一説ではそれが中宮璋子であったことが根強く論じられています。もし事実であったならまさにそれはあり得べからざる事態となるわけで、それを称して阿漕の浦の事態という代名詞までもが付けられているようです。本来阿漕の浦とは伊勢の国の漁師で阿漕という名の男が、御所ご用達の漁場で禁漁を犯したことを云うのです。空前絶後とも云うべきそれは大それた事、罪でしたので、以後めったに起きないことの例えとして阿漕の浦が使われるようになりました。さてでは話を戻して冒頭の、こちらの阿漕の浦の方ですが仮にこれが事実であったとしたら、そこから推考し論ずべき点が多々あるようにも私の目には写りました。もの書き、小説家としての目からということですが、ではそれはなぜかと云うに、中宮璋子の置かれた数奇な運命と方やの佐藤義清、のちの西行法師の人格と生き様からして、単に御法度の恋と云うだけでは済まされない、万人にとって大事で普遍的な課題があると、そう着目したからです。さらにはこの身分違いの恋を神仏と人間との間のそれにさえ類推してみました。ですから、もちろんこの物語は史実ではなく想像の、架空のものであることを始めに言明しておかねばなりません。具体的な展開、あらすじについてはどうぞ本編へとそのままお入りください。筋を云うにはあまりにも推論的な要素が多いからですが、その正誤についてはどうぞ各々でなさってみてください。ただ異世界における、あたかも歌舞伎の舞台に見るような大仕掛けがあることは申し添えておきます。
散るさくら
散るさくら
2019/05/11 15:26
(改)
能因法師を真似るか
2019/05/11 15:29
(改)
全身露出する璋子
2019/05/11 15:31
(改)
さあ、もう行きなさい、義清
2019/05/11 15:33
(改)
御歌(ぎょか)
御歌(ぎょか)
2019/05/11 15:50
阿漕の浦奇談
義清の出家のわけ(1)
2019/05/11 15:53
(改)
御所の乱脈の次第
2019/05/11 16:00
(改)
得子の出来
2019/05/11 16:03
(改)
義清出家のわけ(2)
2019/05/11 16:06
(改)
娘花子を蹴り落とす義清
2019/05/11 16:08
(改)
六道の蛇
五節の舞い
2019/05/11 16:12
(改)
少女(おとめ)さびする璋子
2019/05/11 21:04
(改)
陵王の登場
2019/05/11 21:06
(改)
璋子に切りつける陵王
2019/05/11 21:07
(改)
臨終をさとる璋子
2019/05/11 21:09
(改)
子らを見捨てて行くか
2019/05/11 21:12
(改)
喝(かーつ)!西行の調伏
2019/05/11 21:13
(改)
消滅する六道の輪
2019/05/11 21:15
(改)
璋子昇天
西行と待賢門院を追う義清と璋子
2019/05/11 21:24
(改)
璋子昇天…願はくは花の下にて春死なむ
2019/05/11 21:27
(改)