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陽炎のディアストロタイム *最強をこの手に*  作者: 麓電子
3章 この世の秘密を紐解く地
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30/33

30話 科学者なら自分に噓をつくな

怪盗赤月光にさらわれたしまったあとむ。探偵の改竄推理によって幸せであったはずの歴史を奪われる! あとむの二重人格である跡武は彼女を救うことができるのか? 「最強だと思ったもの」が能力になる世界の旅。「俺」と「俺の最強」を探す冒険ファンタジー!

あとむ「操られちゃう、助けて! 跡武くん!」

あとむの叫びも虚しく、歴史は変えられていく。探偵の思うがままに。


あとむは一瞬歴史に抗ったものの、だんだんとその目の光は押しつぶされていった。赤月光の前にひざまずき、隷従を誓おうとする。


あとむ「…はい。あなたについていきま…」

跡武「せんよ! だれがあなたになんか!」

あとむの顔立ちが女から男へ移り、跡武のほうの人格が発現した。あとむの歴史は変えられたが、跡武はまだ無事である。


赤い月以外照らすものがない暗闇の中、跡武は二人を相手に臨戦態勢をとった。


ガーランド「てめぇ、眠りもしないでどうやって入れ替わった⁉」

跡武「あとむさんが僕を呼ぶ声が聞こえた。」


赤月光「おやおや、私たち二人に一人で立ち向かう気ですか。勇気だけは認めましょう。…とはいっても、警察ももうじき駆けつけるでしょう。手短に墜としますよ。」


この二人は相当強い。跡武に勝ち目があるとすれば、仲間の到着を待つことだけである。


ガーランド「お前も俺の改竄推理で操ってやるぜ!」

跡武「そうはいきませんよ。惑星環境(プラネットフィールド)! 真空」(私の周り1mの球状空間は無音星になりました。これであなたの推理は聞こえない。だから操られない!)


跡武は淡い光を放つ水色の球をまとっている。そして、外界との音が完全に遮断された。


ガーランド「なかなか上手い能力だな。」

赤月光「二重人格(ダブルフェイス)が能力だと思っていたが…では女の方の人格の能力か?」


ガーランド「だがよ、お前を操るだけが能力じゃないぜ? 推理します! 家! 道! 鳥! 川の水! お前たちを殺そうとしてたのは、あの長髪ダブルフェイス野郎だ! ぶっ殺せ!」


家や道はがたがたと動き出し、破片を飛ばして跡武を襲う。鳥は突撃し、川の水は竜のように形を成して襲ってくる! いや、川の水を殺すってどうやってやるんだよ。


赤月光「ちょっと待て、探偵。今回の仕事は誘拐だ。殺してしまったら次の計画が…」

ガーランド「ああ、殺さないって約束したなぁ。あれは嘘だ。俺の目的は将来の危険分子を殺すこと。」


赤月光「同盟、決裂だな。」


跡武からすればチャンスである。襲ってくる敵を重力で握りつぶすなどして払いのけたあげく、安全を確認して無音空間を解いた。


奥では、でたらめの歴史を放ち、それを粉々にするという闘いが始まっていた。跡武は能力で、先程の聞こえなかった会話を入手した。すると、腹の底から沸々と怒りがこみ上げてきた。


闘う探偵と怪盗に向かって叫んだ。

跡武「噓つきは泥棒の始まりですよ! 悪いことです!」


闘っていた二人はピタッと止まり、首をひねって跡武の方を見つめた。二人とも片目を吊り上がらせ、キョトンとしていた。


跡武「僕さっきから見ているからわかりますよ。あなたたちもクレイバの研究者、科学者の端くれですよね! だったらここに入るとき誓いの宮で、『科学に嘘はつかない』って宣誓しましたよね。科学は僕らに嘘をつかないから、僕らも科学に嘘はついちゃいけないんです!」


…なんて生真面目な奴だと思ったことだろう。もしくは、助かりたくて綺麗ごとをほざいているようにも見えただろう。しかし跡武の目は小学生のようにきらっきら輝いており、少なくとも赤月光は何か気づかされたようだった。


赤月光「あ、ああ。確かにそうだな。だってよ、探偵。ヨクナイぞ。」

探偵に話を振ったが、どうも自分に言われている気がしたかのようにうろたえていた。それもそのはず。跡武は赤月光に向かって言ったのだ。


跡武「赤月光さん、あなたですよ。あなたは復讐を遂げるため、自分の信念に反して怪盗をしていますよね。ホントの敵(かたき)は僕じゃない。いや、コマッズ師匠だって、ホントは敵なんかじゃない。そんなことには気づいてたはずです。ホントは貶(おとし)めるんじゃなくて科学で勝ちたかったし、自身の能力も恩人の能力もこんな形で穢(けが)したくはなかった。そうでしょう、あなたは自分に嘘をついている!」


怪盗赤月光は耳を痛め、歯を食いしばって座り込んでいる。

赤月光「うるさい! たかが私個人の信念だ。どうなってもよい! それに、私は科学に嘘はついていない!」


跡武「あなたは科学者でしょうが! 科学はなぜ我々に嘘をつかない! それは『科学』が僕ら科学者のことを、研究を進めるパートナーとして認めてくれているからだ! それほどまでに僕らの『真実』は尊い。さっきあなたが嘘をついた相手は、偉大なる科学のパートナーだ。科学者なら自分に嘘をつくな!」

跡武は激昂し、年上の偏さん、赤月光をしかりつけた。赤月光はどうしようもなく崩れ落ちた。


赤月光「は、ははは、完敗だ。私の手はもう穢れてしまった。美しき科学のパートナーなどになる資格はない。」


跡武はそっと赤月光の肩を叩いた。


跡武「大丈夫ですよ。信念をもって突き進めば、きっと科学は答えてくれる。いつから始めたって、やり直したって同じ未来を見せてくれる。それが科学の再現性ですから。」

なんて信念の根底をえぐるような話をしている中、信念の根も葉もないようなやつがぶちこわしてきた。


ガーランド「おまえらはバカだよ。嘘なんてな、ついたもん勝ちなんだよぉ! 推理します! 今からあなた方を殺す犯人はオレです! よし。この歴史には抗えねぇ!」

跡武と赤月光は油断していた。いとも簡単に探偵の術にはまってしまい、歴史を変えられてしまった。


探偵はナイフを取り出し、跡武の方に向けた。操られた跡武は、自ら刺されに走ってゆく!

ガーランド「あばよ、真実野郎。」



だが、やっとたどりついた!

センリ「唯我独走(ゆいがどくそう)! からの千里眼(おみとおし)!」


探偵の術が解けていく。

ユピタ「おまえの思い通りに歴史は進まないぜ!」

科学を信じ切った跡武、もう一度信じなおしてみる勇気を取り戻した偏・怪盗赤月光。だが、どうしても科学にも世界にも嘘しかつかない探偵がいる。探偵を倒せ! 次回 31話 違法転生をした犯人はオレだ!

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違法転生をした犯人は俺だ…?転生者…?気になります
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