27話 予告通り、いただきます。
へびの能力で危機に陥ったユピタたち。しかし、新能力「漫画を描く能力」でヘビにらみを跳ね返した! ついに現れる怪盗赤月光! 「最強だと思ったもの」が能力になる世界の旅。「俺」と「俺の最強」を探す冒険ファンタジー!
しくじったな。走馬灯を見て、ヘビにらみを鏡で跳ね返した!ところまではよかったのだが、動けなくなってしまった。本来にらみ合って互いが静止するには、技の瞬間がジャストでなければならない。しかし俺は能力のコマを介してにらみを利かせているため、三すくみができあがってしまったわけだ。
へばり夫人「まずいわね。私もあなた、コマも動けない。外部の人ににらみをずらしてもらえば解けるけど、あなたの仲間は全員凍ってるわ。」
うーん、どうしよう。怪盗が来るのは明日、だが今日の24:00から明日だ。このまますくみが続けば誰もいない空き家を盗み放題じゃないか。
へばり夫人「この間に怪盗さんが動いてくれればわたしのアリバイができるわね。」
ユピタ「でも、あなたの引きつれる爬虫類ならこの間に動けるんじゃ…」
へばり夫人「このコたちは技をわたしに貸してくれるだけ。命令したりはできないの。だから犯行には及べないわ。」
ユピタ「ではなく、爬虫類たちに俺らを動かしてもらえばすくみが解けるかもなと思って。」
へばり夫人「なるほど。…だから命令できないって言ってるじゃん! このコらは自分の意思でわたしについてきてるだけ。」
いいアイデアだと思ったのに。待つしかないのか。
数分の時がただただと流れた。夕日はクレイバの城壁へ沈んでゆき、ぽつぽつと研究所に明かりが灯り始めた。A地区には賑やかな所もあったが、皆研究に勤しんでいるのか夕方のB地区には人通りがない。
カツン カツン !足音が聞こえる。こちらへ向かっているようだ。角を曲がって現れたのは、先ほど2階から俺たちをにらみつけていた白衣女性。名前は確か…偏さん。
偏「姉さん、なにその髪…キモイんだけど。」
めちゃめちゃ毒舌なお姉さんだ。どうも夫人の妹さんらしい。
へばり夫人「ちょっとあんた、なんでこんなところにいんのよ。あなたの研究所って真反対じゃない。」
偏「助けに来たのに何その態度。たしかにね、真反対から歩いてきたの。だるっ」
なるほど、姉のピンチを知り、助けに来てくれたわけか。しかし、こんなにも離れた向こう側からどうやってこちらの状況を…
へばり夫人「わたしの能力ならわかるけどさ、あなたの能力なによ。どうやってこの状況知ったの。」
偏「教えない。情けは人のためならず、とだけ言っておくわ。」
へばり夫人「え、じゃあ助けないってこと?」
偏「…その程度の教養でA級なのマジ萎えるわ、私B級なのに。辞書で調べなさい。」
という会話をして結局助けてくれた。夫人の位置をずらすことで三すくみが解け、全員一斉に動き出した。
警察の人たちはすぐに銃を取り出し、夫人に構えた。
へばり夫人「はいはい、降参。にらんだだけだし罪には問われないでしょ。それより今は怪盗に備えるべきじゃなくって?」
偏「姉さんなんて一回拷問されてみればいい。」
へばり夫人「なんてこと言うのよ!」
その通りなのだ。なんの準備もできぬまま明日を迎えてしまう。ただの予感だが、早朝に来る気がする。
姉妹はクレイバの薄暗がりへと姿を消していった。俺たちも跡武の研究所に帰って迎撃準備をしなければ。
あとむ「きゃっ、私の服の中に予告状が!」
~予告状~
言い忘れていましたが、当日早朝0:00にいただきます。
くれぐれも準備を怠らぬようお気を付けを。
~怪盗赤月光~
あとむの薄コートの内ポケットから出てきたのは2通目の予告状だった。書き忘れをするなんて、怪盗に慣れていないのか?
そういえば、予告状には2枚ともスタンプ…朱印が押されている。ロゴの下に、赤月…照? 赤月光じゃないのか?
もうすっかり夜になってしまい、警察とともに跡武の研究所へ向かった。東の空からは赤い満月が昇っていた。
刻一刻と約束の時が迫る。狭い研究所に7人で張り込み、盗まれるとあった資料は戸棚の奥に隠した。
ふと考えたのだが、さっき2枚目の予告状はあとむの服の中から出てきた。予告状はけっこう硬い厚紙でできており、あんなところに入っていたらすぐに気づくのではと考えた。つまり、あの中に犯人がいる。あの時あとむに渡したのだ。
その9人の中で俺の持つ情報が不足しているのは…白衣の偏さんだけだ。
ユピタ「あとむ、偏さんってどんな人かわかる?」
あとむ「さっきいらっしゃった白衣の方ですね。先ほどの夫人の妹様で、物理学ファンデルワールス力研究者と聞いております。」
ファンデル…電子の偏りが引き合う力か。電磁力の一種だが非常に弱い力であり、今回の犯行に役立つとは思えない。
ガシャァン 研究所の外から音が響いた。俺とセンリ、あとむは勢いよく飛び出してきた。そこにいたのは、怪盗のような服装をした老紳士だった。今日の昼に出会った、犯人候補の一人。
アルガドルグ「わしが、怪盗赤月光じゃ。自首するぞ。」
⁉ この人が赤月光⁉ …自首する⁉
センリ「ちょっと待てユピタ。おい、ジブン。顔、泣いてるで。どないしたんや。」
老紳士にセンリが話しかけた。泣いているようには見えなかったが、この状況をやっと理解した。
センリ「操られてんやろ? 探偵に。あいつやっぱ逮捕しとくべきやったな。こっちはおとりや! 戻るで!」
いそいで屋内へ戻ったが、別に異常はない。…? ちょっと待てよ? なんだこの、シュルルという音は。誰もこの音に気付いていない。戸棚の中からだ!
勢いよく扉を開けた。細い隙間から資料が吸い込まれていく。
ユピタ「皆! 資料が!」
皆あっけにとられ上を向いている。
セムカ「空、星が見える…」
ユピタ「何言ってんだよ、資料が…」
俺もあっけにとられ上を見た。屋根が、紐のようにほどけていく。夜空が見える。
赤月光「誰が資料を盗むと言った。予告通り、ぜんぶ、いただきます。」
ぜんぶ、盗まれる!
怪盗赤月光惨状! ぜんぶ、ぜんぶ盗まれる! 赤月光の正体とは⁉ 次回 ショータイム




