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陽炎のディアストロタイム *最強をこの手に*  作者: 麓電子
3章 この世の秘密を紐解く地
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26話 超常学者コマッズの陰で

怪盗赤月光の予告状から推理をするユピタたち。仲間の悲鳴を聞きつけ、容疑者候補の夫人と遭遇する! そして久しぶりに大ピンチ。いでよ、走馬灯! 「最強だと思ったもの」が能力になる世界の旅。「俺」と「俺の最強」を探す冒険ファンタジー!

セムカの悲鳴が聞こえた。

警察の人とともに通りへ飛び出し、クレイバの中心の方向へと目をやった。

西日差す坂道にセムカ、センリ、オプスクラさん、そして立ちはだかる高貴そうな夫人。夫人はなにやら小さな生き物をたくさん連れていた。


後ろ姿ではあったが、どうも長い舌で空気をかぎ分けているようだった。

へばり夫人「あなたたち、すっごい「疑い」の味がするわ。しかも、わたしに対して。もしかして、この間の怪盗事件のことかしら。」

セムカ「いいから、そのヘビどうにかして!」

なんだ、ただヘビがいて怖かっただけなのか。ペットらしきヘビを下げてもらえるよう歩み寄った。


あとむ「ユピタさん、その人、ヤモリの能力者の可能性があります! 怪盗赤月光かもしれません。」


へばり夫人「へー わたしの能力知ってんだ~。でもね、怪盗じゃあないのよ。ふーん、赤月光かぁ、わたしのあこがれの人みたいね。なにわたしの恩人勝手に犯人にしてんのよ! ウラァ!」


なんだ、なんなんだこの人は。一人で会話進めて、急にブチギレてきた! いや、それよりも状況がやばい。この感覚、久しぶりだ。確か見たのは昨日…? まだモフェルトンでニコラスのロボと戦ってた時だ。そう、何度味わっても想像を絶する恐怖、絶望。見るたびに上書きされていく、そのかけがえのない瞬間が、常に人生最大の危機である。死の淵をかすめる極限状態、走馬灯!


グググ グワァァゥン…!

俺の頭の中には人生パノラマと並行して、歪み遅行した現状(いま)の分析が始まる。

目の前にいた夫人はその姿をおぞましいものへと変貌させていた。長く美しい髪がうねり上がったかと思えば、その先に大蛇のような口を構え、俺を一飲みにしようとしてきた! 否、俺だけではない。4人の仲間、二人の警察も丸のみにされようしている。ヘビはあまり速くない。しかし俺を含めた全員が足をすくませ動けなくなっている。


へばり夫人「へびにらみ! これであんたらは一歩も動けないわ。」


なるほどな、ヘビとしての特殊能力の一つであるわけだ。確かに恐ろしいほどの眼光が俺を貫いている。何とかしないとこのまま丸のみにされてしまう。俺の頭の中を流れるパノラマ。俺の人生を凝視して、なんとか抜け道を探さねば! なにか、なにか俺の人生の中に抜け道があるはず。 …そうだ、そういえば朝方に読んだあとむさんの漫画。続きは俺が描いたのだが、たしか題名が…ペルセウスの泥船! メデューサという怪物が登場した。そうか、そうだったんだな。にらみ石化させるような敵には、鏡だ!


おそらく今の思考はコンマ数秒に満たないだろう。俺はすぐさま耳に挟んだ万年筆をとり、空中に漫画のコマを描写した。俺が描いたものは…目の前に迫るヘビ髪、を無限に映した合わせ鏡! ついでにヘビの汗と「げぇっ」っていう吹き出しつき! 足はすくんで動かなかったが、走馬灯中脳をフル回転させたおかげで他の仲間よりは行動をとることができた。みんな、まだ立ち尽くしたままだった。


漫画のコマがヘビ髪をにらみつける。作戦は大成功。現実のヘビ髪も、たらぁと汗を流し、本体の夫人ごと足をすくませた。


へばり夫人「へぇ、やるじゃない。みんなにらまれて凍ったと思ったのに。」

お互い簡単には動けない状況が出来上がってしまった。

ユピタ「奇襲には強いんです。せっかくですし、怪盗のこと何か知っていれば今教えてくださいよ。」


少し考えてため息をつくと首だけこちらを振り向いて話してくれた。

へばり夫人「そうね、わたしの恩人は怪盗赤月照。今回の怪盗、名前からして赤月照様のお弟子さんかもね。そして、さっき言った通りわたしは怪盗ではないわ。ヤモリの能力はあるけど、盗品を運ぶ余地はないわ。わたしの能力はレプタルGO(ゲットだぜ)。仲間にした爬虫類の力を借りて戦う能力なんだけど、一回につき一種類が限界。ものを運ぶならカメかなぁ? ヤモリはむりむり。」


なるほどな、今回「全部盗む」って告げられたくらいだし、この人が運ぶのは無理があるかな。カメで運んでたらあっさり逮捕できるし。

ユピタ「ありがとうございます。盗まれたのは跡武の地学の資料らしいんですけど、恨みとかないですか?」


へばり夫人「へー 地学ねぇ、恨み…ありまくりだわぁ! あんたご存じない⁉ コマッズていうゴミ学者! 60年前、あいつがここに来なければ。あいつが『地学』を作らなければ。あいつが南東Aを地学一色に染めなければ。今でも父上は、生きてたんだ!」


⁉ コマッズさん? あの長老のコマッズさんのことなのか? 紹介状の効力がクレイバでも発揮できることに驚きはしたが、地学を作った⁉ ただのケチおじいちゃんだと思っていたが、想像を超えていた。そして、この人はコマッズさんを、地学を恨んでるということなのか。


へばり夫人「42年前、コマッズが研究を始めて18年の後、南東Aは地学地区になったの。わたしの父上は南東Aから追い出され、Bへ降格。給料の低いB級研究員では父上の持病を治療できず、死んだ。ひどいと思わない⁉ 世界で3番目に医学が発達してるくせに法外な価格をとるこの都市もそうだけどさ、相対的な研究成果で切り捨てるのが許せないのよ!」


バキバキバキ 動けないにせよ、夫人は唯一動ける顔で俺を襲う準備をしていた。ワニの牙をはやしているのだ。これでは簡単ににらみは解けない。…ん? 待てよ、俺は夫人のにらみで動けない。夫人は俺のにらみで動けない。…どうあがいても、にらみを解けないじゃん!

走馬灯からのにらみ返しで敵を食い止めたユピタ。しかし、互いににらみ合い、動けなくなってしまった! そこに現れたのは、かつての謎の白衣女性! 次回 27話 予告通り、いただきます

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警察もろともとは狂っているのか
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