25話 全部盗みます。~怪盗赤月光~
都市の異形さから怪盗の逃走経路を推理したセムカ。逃走経路をたどりユピタたちは奈落へ! そして怪盗の予告状へとたどり着く。「最強だと思ったもの」が能力になる世界の旅。「俺」と「俺の最強」を探す冒険ファンタジー!
セムカの推理によれば、ヤモリのように天井を使える能力者が犯人らしい。まぁ手口はほかにもありそうだが、いったんその線で探してみることにしよう。
セムカ「とりあえず見てみなきゃわからないよね。抜け道があるかどうか、道を作って見に行ってみるね。無敵の要塞作ってみた♡ 防水探索路」
今いる橋、誓いの宮と水路の水面の間には1mほどの隙間がある。セムカの建てる道は透明なパイプ状で、その隙間をくぐって奈落へとつながってゆく。水路の水が滝のように奈落へと落ちてゆくため、奥に行けば水のない空洞があるのだろう。そこへ向かうすべり台を作ってくれたというわけだ。
セムカ「よし。洞窟の天井に固定したわ。体重制限125kgね。…あんたら何キロよ。」
ユピタ「25㎏くらい?」
センリ「68㎏とかやな。」
跡武「55㎏ですね。」
オプスクラ「…135...がっくり。」
セムカ「じゃあユピタと跡武、ウチのあとに来て。」
セムカが真っ先にすべり台を降りてゆく。結局セムカは何キロだったんだ?
オプスクラ「セムカ! 素晴らしい建築だな。おれの能力でコピーしてもいいか?」
セムカ「好きにしてー」
すべり台の奥から声が響いた。よし。俺もいくか。
すべり台を滑ってゆく。周りにはイルミネーションライトが設置されており、洞窟の中だが物事を把握できる程度には明るかった。洞窟の天井は確認できるのだが、壁や床は果てしない闇の向こうであり、この洞窟の巨大さを物語っていた。まさに奈落…
下についた。とはいっても天井から少し降りたところに足場がつるしてあるだけである。すでにセムカは到着しており、洞窟の奥に抜け道らしきものを探していた。
跡武が下りてきた。すべり台を降りてくる途中で眠ってしまったようだ。ということは、起きるときにはあとむさんに入れ替わっているというわけだ。すぐに揺さぶって起こした。
あとむ「ふぁ~。もう起きる時間ですの。 わぁ、どこなんですかここは、すっごく幻想的ですね。」
いや、普通の洞窟だが… まあ幻想的と言えなくもないが。
セムカ「こっち側にはないわね。足場を拡大して滝の向こう側に行きましょ。」
セムカが足場に手で触れると、先程まで正方形だった足場が弧を描くように滝の周りへ伸びていく。
セムカ「そういえばだけど、能力に条件があるものってけっこうあるんだよね。ウチのなら「地面」か「建築済みの要塞」からしか要塞は建てられないのよ。」
ユピタ「そっか、じゃあ怪盗の能力もなにか条件があるのかな。わざわざ3日後まで待ったり、予告状まで書いてるし。」
あとむ「能力が「怪盗」だったらわかりやすいですわね。自分の能力を見せられない人が犯人ですもの。」
まぁ、そういうフェイクかもしれないが。怪しい人はいくつかいる。さっき話に出たヤモリの人、インチキ探偵、の隣の家の白衣女性、A級の老紳士。いったい誰が怪盗なのだろうか。
セムカ「あった! あそこから光が漏れてる。きっと出口だよ!」
洞窟の向こうの天井から光が差し込んでいる。たしかにここを使えばクレイバの外へ、見つからずに出られるかもしれない。
セムカが光のさす方へと階段をのばしてくれた。階段を駆け上がると、天井にふたがついていた。さび付いているように見えたが、思ったより簡単に開き、建物の中に出た。ここはまだクレイバの外ではなさそうだった。
警部補「君たち、こんなところで何をしているんだね?」
今日の朝に取り調べに来た警察の人だった。ということは…ここは、警察署⁉ …当てがはずれたなぁ。怪盗が警察署を通って逃げるなんてことはない。
ユピタ「怪盗がこの道を使って逃げた可能性を探っていたらここにつながったんです。奈落の天井をつたえる、ヤモリみたいな能力者なら可能かと。」
警部補「なるほどな、私も同じことを考えていたぞ。私は警部補という。クレイバに盗まれた資料がないことを確認したのは私の能力なのだが、私の能力は建物は透過できても地面は透過できないからな。」
全員洞窟から警察署へと上がった。補さんはきれいな手紙を取り出して見せてくれた。
警部補「これは前回、怪盗赤月光が置いて行ったものだ。」
~予告状~
今回の仕事は予行練習のようなものだ。
本命は3日後。赤い満月の出る夜に、
ぜんぶ盗みます。
~怪盗赤月光~
ユピタ「怪盗、赤月光…」
おもわず、かたずをのんだ。
警部補「ヤモリは「ゲッコー」とも言うんだ。怪しいよな。」
その時、例のセンリの父親が入ってきた。
チェイサ「おいどうした、補。って、うわっ。息子の仲間じゃねぇか。センリの奴はどうした。」
セムカ「あっ、まだ誓いの宮じゃん。連れてきますね。」
チェイサ「どうもお嬢ちゃん。誓いの宮なら出て左、左、直進だ。」
セムカ「あ、ありがとうございます。」
セムカが走って二人を呼びに行った。
チェイサ「さて、本題だ。跡武博士、あの証言は本当か? それとも操られていたか?」
あとむが前に出てきて真剣なまなざしで答えた。
あとむ「いいえ、違います。操られていました。私は犯人ではありません。」
シブい中年警部が目じりにしわをよせて、微笑んだ。
チェイサ「そうか。お前の意思をとりもどせてよかったな。」
セムカ「キャアー、なにすんのよ!」
署の外からセムカの叫びが聞こえた。警察とともに下りの大通りに飛びだした。少し向こうで3人が何者かに足止めを食らっていた。
へばり夫人「今あんたら、わたしが犯人だって言ってたわよね!」
怪盗赤月光の疑いのある一人、へばり夫人と戦うユピタたち。しかし夫人にはアリバイがあった。怪盗赤月光の正体は? 目的は? 次回 26話 超常学者コマッズの陰で




