24話 この奈落を抜け道に
インチキ探偵の術中から抜け出したユピタたち。怪盗の予告した明日へ向けてクレイバ中をまわるなか、センリの過去が明かされる! 「最強だと思ったもの」が能力になる世界の旅。「俺」と「俺の最強」を探す冒険ファンタジー!
センリの回想が続く。~
おかんを病院まで連れていく。ワイがおかんを助けるんや!
森から荒野へ、ケルの町まで瞬く間に帰ってきた。そして、やはり困ったときはコマッズじいちゃんだ。
こぎれいな町はずれの家の前で立ち止まり、コインを木に向かって投げた。
センリ「じいちゃん、入場料や! おかんが大変なんや。どないしたらええか教えろや!」
パシッ 木の中でコインを受け取る音がかすかに聞こえ、細い老人が飛び出してくる。
コマッズ「なに、万里がどうしたって? むっ、こりゃひどい。何があった!」
今は一刻を争う。
センリ「古代獣に裂かれたんや。たぶん古代病や。」
コマッズ「この国に古代病を治せる医療機関はない。じゃから、走るのじゃセンリよ。この道をまっすぐに。トルを通ってクレイバという地の病院へ行くのじゃ!」
センリ「この道をまっすぐやな。行くでおかん。唯我独走!」
チュン 速い。何も見えへん。光の速度を追い越してるんや。能力は足だけを強化してはるから他の部位はついてこれんゆうことか。。
迅い。この速度で木にでもぶつかろうたら、死ぬなぁ。おかんを守るためには、命を懸けんとへんのや。
フワァ 磯の香やなぁ。音速は遥かに追い抜いてはるもんで目も耳も何も感じられへん。わかるのは匂いと、足の触りや。
早い。ついたで。きっとここがクレイバや。
降りしきる雨が都市の輪郭をぼやけさせたよったけど、故郷にはあらへん建物やてすぐわかったわ。
土砂降りの道を走った俺ワイの足は泥だらけでな、靴はすり減ってなくなりおった。
みんな、おかんのこと知っとるみたいですぐ病院に連れてってくれたんや。
~
センリ「ちゅうのがワイのクレイバデビューや。」
万里「ほんま、あんときはありがとぉな。」
こんな話があったなんて。陸路ならほんとにすぐについたわけか。にしても、いい話だなぁ。
跡武「うぅ。泣かせますね。」
セムカ「うん。こういうのが、いい親子なんだよね。ウチ憧れる。」
センリの母がセムカをみつめて少し微笑んだ。
万里「あんたも『ウチ』って使うんやねぇ。ウチも使うんやよ。ウチはちゃうけど、それはたぶん親から譲りうけたモンやろ。それが『家族』や、大事にせぇよ。」
ほんわかした空気が漂う。俺は親の顔も見たことないけどさ、やっぱりいいもんだな。
万里「この言葉使うなんて、うちの子と気が合いそうやなぁ。」
セムカはぎょっと身を引いてセンリとパチクリした。
セムカ「は、はぃ。センリはウチが守りますから。」
センリ「なにゆうとんねん、ワイが守ったるわい。」
みんなで笑いながら幾つか話し、別れを告げた。
病院を出て、再び誓いの宮を渡った。
セムカ「ねぇ、さっきクレイバの地図を見て思ったんだけどさ。ここ。変じゃない?」
セムカが何か言いだした。誓いの宮の構造に違和感があるというのだ。
セムカ「六方からここに水が流れ込んでるんでしょ? この都市は中心に向かって低くなってるじゃない。なんで水がたまらないのよ。」
あっ、たしかに。どうしてだろう。
跡武「あ、それはですね...」
オプスクラ「説明しよう!」
なぞのおじさんが現れた! 説明をしたがっているようだ。
セムカ「だれよこのオジ。」
オプスクラ「オジって…そんなに若く見える~? でへへ。120歳超えても若作りすりゃいけるなぁ。」
跡武「この人は一応A級の物理分野光学のオプスクラさんです。クレイバの建設、維持、増築を創始者から引き継いで4代目の方なので、この都市に詳しいんですよ。」
オプスクラ「その通りだぜぇ。ねぇちゃん、ここの水がどこへ行くか知りたいか?」
そりゃもちろんと、コクコク首を縦に振るセムカだった。俺も、知りたいかも。
オプスクラ「いいか、心して聞けよ。水が落ちてゆくのはな、奈落だ。」
はい? 奈落だと? この土地は浮かんでるとでも言いたいのか?
オプスクラ「この都市の下にはな、想像を絶するような深い深い洞窟があってそこへ、底へぼとぼとと落ちていっているんだ。洞窟の入口にかぶせてあるのがここ、誓いの宮だ。」
跡武「ここ以外にも、世界中の古い都市には同じような洞窟が確認されており、どれも調査済みの100kmまででは少しも、底も壁も確認されてはいません。」
オプスクラ「これを学者の間では『奈落』と呼んでいる。」
セムカ「それでこの都市はびしょびしょにならないのね。さっき噂を聞いてたんだけど、資料が盗まれたとき城壁から出た人は一人もいないらしいわ。さらに、警察の人の能力でクレイバ全域を捜査したらしいんだけど、その時にはもうクレイバにはなかったそうよ。」
オプスクラ「それは俺も聞いた。 …何が言いたい。」
セムカ「つーまーりー、犯人は奈落の入口からクレイバの外へ逃げたってこと。」
センリ「どうやって。奈落なら何の踏み場もないやないか?」
セムカ「ウチみたいに天井を使える能力ならいけるわ。そう、ヤモリみたいな。」
!! なるほど。この入口から、どこか別の出口へ逃げたんだ。
オプスクラ「ヤモリの研究者、」
跡武「いますね、南西Aに。」
跡武・オプスクラ「生物分野爬虫類学者、へばり夫人!」
この都市の異形さから逃走経路を推理したセムカ。ユピタたちは怪盗の可能性のある夫人のもとを訪ねるが…? 次回 25話 ぜんぶ盗みます。~怪盗赤月光~




