23話 唯我独走
探偵の術を解くため奴の家に向かったユピタたち。隣の家の窓から白衣の女性がにらみつけてくる。さらに、センリの能力唯我独走の駆け出しが語られる! 「最強だと思ったもの」が能力になる世界の旅。「俺」と「俺の最強」を探す冒険ファンタジー!
先ほどから隣の家の二階の窓からツララのような視線を感じる。まだ探偵はでてこない。
ユピタ「ねぇ、跡武、隣の家の人、なんでにらまれてるの?」と小声で尋ねた。
跡武「土士田偏さんですね。私の師匠と彼女の親がかつて同じ南東Aの研究者でしたので知り合いですが…まさか…」
何か言いかけたとき、家から探偵が出てきた。
ガーランド「ああ? なんださっきの奴らか。早く出頭しろよ。警察呼ぶぞ。」
センリ「あほやなぁ、お前さん、警察なんか呼べんやろ。お前さんの能力改竄推理を見破ってる刑事はんがおるからなぁ!」
ガーランド「なにぃ⁉ てめぇ、オレの能力を…ふっふっふ、そうだよ。さっきの推理はぜんぶ、オレの思い付きのデタラメさ! あ…」
センリ「ほんま、あほやなぁ。この能力の条件はジブンが『こいつが犯人だ』と信じてる必要があるんよな。大声でデタラメなんて言うたら…」
シューゥゥゥ 術が解けていく。やはり改竄推理にとって千里眼は天敵ともいえる能力だ。
ガーランド「てめぇ! …今日はこれくらいで勘弁してやる。」
バタンッ ドアをおもいっきり閉められた。
思い出したように隣の家を見上げたが、そこに白衣は見当たらなかった。
術も解けたことだし、警察署に行って誤解を解こう。ここは北西地区と西地区の間の水路に隣接しているため、水路沿いに下って中央を通ることにした。
北西のA地区に入り、建物が一気に豪華になった。広い通りにはカフェなども見られた。
歩いてる途中、いかにもA級研究者という老紳士とすれ違った。横には執事もつれている。紳士はじろりと俺たちを見つめ、執事に話しかけていた。
アルガドルグ「誰かね、今の小汚い青少年は。」
リチャード「はっ、あの中の長髪男は東B地区の跡武、地盤説の第一人者です。」
アルガドルグ「ほう、あの資料の...」
…聞いちゃった。あの紳士、犯人確定だろ! 「あの資料」とまで言ってるよ。
跡武「ユピタさん、僕も聞いちゃいましたよ。でも、僕の資料なんて、公開してるものかもしれませんし…ちょっと待ってください。僕まだ「地盤説」なんて公開してませんよ。」
ユピタ「あの紳士も、あの探偵も知ってるじゃん! 少なくとも、その資料を見たってことだよね。」
セムカ「なんか、みんな敵に思えてきたね…」
中央についた。中央地区の周りは高低差のない丸い水路で囲まれており、さらに水路で3地区に区切られていた。北の物理学、南東の生物学、南西の化学に分かれており、真ん中に円形の建物である通路橋兼聖地がある。科学に嘘をつかないことを誓う『誓いの宮』というそうだ。
ユピタ「跡武…さんの分野って地学だよね。中央地区には無いように見えるけど…」
跡武「もう跡武でいいですよ。そうですね、地学はここ数十年で成立した分野なので、400年以上前からあるこの都市には正式な地学地区は作られていません。その代わり、南東A地区の全土をいただいています。面積で言ったら他分野より大きいですね。まぁ後日案内しますよ。」
橋を渡り、中央地区に入る。北から入ったから、ここは物理地区というわけだ。
センリ「ちょいと生物地区に用事があるんやけど、行ってもええか?」
なんだろう、用事って。
誓いの宮を通って生物地区に入った。少し進むと、格式の高そうな病院が現れた。ドアが開き、中へと足を踏み入れる。
受付の人「万里様のご子息様ですね。お見舞いでよろしいですか。3-18号室へどうぞ。」
センリ「いつも、ホンマお世話になってますわ。 さ、行くで。」
へぇ、センリの母ちゃんは入院してたのか。
センリ「ユピタ、ケルの長老コマッズじいちゃんはワイにクレイバまでの案内を任せてくれた。初めて来たとき、ワイはおかんを負ぶってたんや。」
コンコンコン センリ「おかん、お見舞いに来たで。」 皆でぞろぞろと入室した。
万里「センリ~。よーきたね。お友達いっぱい居はるやん!」
センリ「冒険仲間や。病状はどうなん。」
万里「すこーしずつ、良ーなってるわ。あの時は、ほんまありがとーな。」
センリ「あれから、6年やな。あれは、よう雨の降る日やった。」
~6年前、ケル付近の森、ユピタとセンリが出会った場所~
現代では見られないカメレオン…古代獣がセンリ親子を襲っていた。
万里「センリ! 逃げといて。あんたは昔っから足だけは速うもんで、あんた一人なら逃げ切れるで!」
センリ「おかん置いて逃げるなんて無理や!」
古代獣「グオウガァ」(要注意人物コマッズの血を引く者どもを血祭りだ! あわよくば寿殿我族の卵をどこに隠したかまで引き出したかったがな!)。。。なんやこいつ顔でわかるぅ。てか、ワイとあのじっちゃん血縁あったんか。
ザシュッ 万里の肌を鋭い爪が引き裂いた。
古代獣「グギャァァガブ」(ヒャァッハァ 俺様は700年間の風呂キャンセル界隈だ。現代の世界にない病原菌に体を蝕まれ、死に至るのだぁ!)
万里「痛ぁぁ! あっ...息が、できへん...」
そんな...ワイが、病院まで連れてくしかないやん! 何よりも速く、走る! これがワイの最強や、唯我独走!
チュン 光より少しだけ速く、森を抜け、荒野へと、町へと駆けだしていった。
中央地区の病院でセンリの過去を知ったユピタたち。さらにセムカがこの都市の異形さに気づく。次回 24話 この奈落を抜け道に




