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陽炎のディアストロタイム *最強をこの手に*  作者: 麓電子
3章 この世の秘密を紐解く地
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20/33

20話 コミックパニック

古代研究都市クレイバの前で知り合った跡武は、ユピタの求める「寿殿我族」の情報を持っていた! 彼から明かされる秘密。そして、朝起きたユピタは恐ろしいものと出会ってしまう! 「最強だと思うもの」が能力になる世界の旅。「俺」と「俺の最強」を探す冒険ファンタジー!

ユピタは「寿殿我(じゅでんが)族」である、と長老は言われた。


ただそれだけ。


それ以外は何もわからないまま生きてきた。学園生活は心の底から楽しんでいたし、出生の秘密に悩み続け生きてきたわけではない。


だが、目の前に、その秘密を知る人がいる。人は、欲しいものが目の前に置かれると、無性に欲しくなるものなのだ。


知りたい! 俺の秘密。


ユピタ「跡武さん。寿殿我族の研究をしているというのは本当ですか。教えてください、その種族のこと。」


跡武「えぇ、マニアックな種族ですよ? 聞いてもらってもあまり面白くないかと。」


はぁ、とため息をつき、跡武に近づき、顔をよせ、まじまじと目を見てつぶやいた。

ユピタ「俺は寿殿我族です。」


まぁ、当然の反応をしたといえる。コマッズさんの時もそうだったように、愕然とした顔で俺の目の模様を数えだした。


跡武「7,8,9,10… 12。 はははは、もう笑っちゃうしかないですね。まず寿殿我族であることに間違いはない。」


彼が言う通り、やはり珍しい種族なのだろう。反応からして、世界に10~15人ほどの種族とみた。

彼は先ほどまでより堂々と語りだした。


跡武「次に、彼が今存在しているということは、世界の共通認識である仮説が間違っていることになる。今年の前後500年寿殿我族は現れない、という仮説がね。」


…そういえばコマッズ長老にも言われたな。500年… はっはっは、確かに笑っちゃうしかないね。俺の寿命の500倍だぞ。


…寝坊でもしたか? 俺と仲間を隔てているのは距離以上に遠いもの…時代だ。


跡武「寿殿我族とは、千年に一度、どこかから現れて世界をひっくり返すほどの名を残し、また千年後に到来する謎の種族。彼らの寿命が1年きりというのは、500年前の文献に登場する。そう、今は前回の到来と次回の到来のちょうど間なのだ。」


そういえば、ふと思い出して後ろをチラリと見た。セムカとセンリも跡武の話に聞き入っている。


跡武「彼らが初めて文献に登場するのは2500年前、文献によって善悪が分かれることから、敵対勢力がいたと考えられる。この『創星記』には、世界を一度滅ぼした悪として書かれている。彼らが悪かは置いておいて、彼らの活動した2500年前、1500年前、500年前にはすべて大災害が起こり世界中の文明が崩壊している。彼らとの関係は少なからずある。」


この人の専門分野は地学。なのになぜ一種族の研究に力を入れているのか、それが今わかった。


ユピタ「その大災害について知るために、寿殿我族を研究するんですね。」


跡武「そういうことだ。だから彼らは『地を語る種族』と呼ばれるんだ。とりあえす、教えられるのはこのくらい…ですね。」


はじめの口調に戻っていた。そうか、かなりのことを教えてもらった。


ユピタ「ありがとうございます。また話を聞かせてください。今日はもう遅いので、宿をとらなきゃ。」


跡武「今日は家に泊ってきませんか。明日は家政婦がいるのでおいしい朝食もふるまえますよ。」

ユピタ「ほんとですか、ありがとうございます。 センリ! セムカ! 泊めてもらえるってよ。」


後ろを振り向くと、二人とも先ほどの話で頭がパンクしたらしく、頭から湯気を放ちながら目を回していた。なぜ生後6日の俺のほうが理解力があるのか不思議である。



跡武の研究所についた。坂道の中腹ほどにあり、中心からもさほど遠くない。が、大きな家とは言えない大きさである。中はかなり散らかっており、研究資料で足の踏み場もないほどだった。こんなんじゃ盗まれても、どれが無いかなんて気づけない。ていうか、さっき鍵開けたっけ? …盗みやすすぎだろ。


みんな先にシャワーも浴びて飯も食べて、資料の上で爆睡していた。俺はその間、勝手に資料に目を通していた。だが、ここにあるものが資料だけでないことに気づくのにさほど時間はかからなかった。

暗くてはっきりとは分からないが、紙に、四角い枠がたくさん書かれており、その中の読める文字を拾うと地学となんの関係もない文が書かれている。この晩はその四角い枠のことを想いながら寝た。



チュン チュンチュン

窓から差し込んだ朝日が顔を照らす。人生で初めて穏やかな朝を迎えた。誰かがキッチンにいる、といっても二畳のLDKだが。昨日跡武の言っていた家政婦さんだろうか。


ユピタ「おはようございます。お邪魔してます。」

あとむ「おはようございます、お客様。朝食をお持ちしますね。」

てき、ぱき、すごい。昨日あんなにむさくるしい部屋だったのになぜか気持ちよく起きられた。この人が、全部かたづけておいてくれたんだ。すがすがしいメイドさんだな。料理もおいしいし、黒のロングヘアーと化粧が美しい。


にしても、跡武さんはどこへ行ったんだ。早朝からおでかけかな?


昨日の記憶がとびこんできた。あの、四角い枠の正体を知りたい!

だが、昨夜ここにあった紙はすべて片付けられている。いったいどこに…


あとむ「ユピタ様。お暇でありましたら、私(わたくし)が今朝描いた漫画を読んでいただけませんか?」


ユピタ「あ、はい。マンガ? …!!!この、四角い枠だぁ!」

それは、昨日俺の目に留まった紙だった。これが、漫画! 割られたコマの一つ一つがアニメーションのように、走馬灯のように脳裏をかすめ去る。吹き出しのセリフは運動エネルギーを持っており、涙を震わして耳にも声響く。次のページへ。次のページへ!


え、…? 続きが、ない? 次回へ続く…?


あとむ「ユピタ様、今朝描けたのはここまででございます。」


…続きを、続きを! 知りたい!

グヲォゥン 俺の中の「最強」が航海術よりも…漫画に! 


狭い部屋に暴風と残光をまき散らし、筆を手に取った。

漫画へと能力が移行したユピタ。そこに価値を知らない跡武がやってくる。あとむさんはどこへ? 次回 21話 ダブルフェイス

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― 新着の感想 ―
無茶苦茶で面白いです。マンガってどんな能力なのか。大丈夫なのか
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