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第二十三話 王都の崩壊

私たちが領地で優雅なスローライフ(という名の視察)を満喫している間、王都はまさに地獄絵図と化していた。


「な、なんだこれは…魔石の価格が先週の十倍になっているだと!? ふざけるな!!」


王宮の会議室で、王太子レオンハルトが机を叩き割らんばかりの勢いで激怒していた。

その眼下には、真っ青な顔をした財務大臣と、冷や汗を流す側近のカイルたちが立ち尽くしている。


「で、殿下……! ヴァルシュタイン公爵領からの物流が完全にストップした影響で、市場の在庫が完全に底を突きました。商人たちは他国から物資を仕入れようとしていますが、公爵領が既に周辺国の市場を買い占めており、法外な値段でしか輸入できません……!」


「ええい、使えない奴らめ…セリウス!魔法学院の魔力抽出はどうなっている!」


レオンハルトが怒鳴りつけると、魔術師セリウスは顔を伏せたまま震える声で答えた。


「だ、駄目です。既存の魔導具の維持すら困難な状況で、新たなエネルギーを生み出す余裕など……公爵領の純度の高い魔石がなければ、私たちの研究は紙くず同然です……」


「ノア!教会からの資金援助は!」


「……信者たちの生活も限界に達しており、献金は激減しています。これ以上搾取すれば、暴動が起きかねません」


聖職者ノアもまた、いつもの慈愛に満ちた笑顔を完全に失い、憔悴しきっていた。


彼らはついに理解し始めていた。

自分たちが振りかざしていた「正義」や「才能」がいかに無力で、ヴァルシュタイン公爵領の圧倒的な生産力と物流網の上に胡坐をかいていたに過ぎないということを。


「殿下、もう限界です……!このままでは、王都の機能が完全に停止します!」


財務大臣が床に額を擦り付けて泣き叫ぶ。

しかし、レオンハルトは目を血走らせ、狂ったようにわめき散らした。


「認めんぞ……!あの憎き悪役令嬢に、私から頭を下げるなど! 王室近衛兵を動員しろ! ヴァルシュタイン領に進軍し、武力で物資を接収するのだ!」


「しょ、正気ですか、殿下!」


カイルが慌てて制止に入る。


「公爵領の防衛設備は、数年前とは比較にならないほど近代化されています! 圧倒的な魔導砲台と最新兵器を備えたあの要塞に、ろくに武具の整備すらできていない今の近衛兵を突撃させれば、全滅は免れません!」


「ではどうしろと言うのだ!? このままでは、私が……王家が崩壊してしまうではないか!!」


レオンハルトが髪を掻きむしりながら絶叫した、その時。


ギィィィ、と。

会議室の重い扉が開き、この国の最高権力者である国王陛下が、護衛を伴って静かに足を踏み入れた。


「父、上……?」


「レオンハルト。……貴様は、これ以上この国をどうするつもりだ」


国王の声は低く、そして限りなく冷酷だった。


「もはや事態は貴様の手に負えるものではない。ヴァルシュタイン公爵家への経済封鎖の全責任を負い、直ちに王太子の地位を返上せよ」


「なっ……!? お、お待ちください!私はただ、あの強欲な公爵家から国を守るために——!」


「黙れ!!」


国王の一喝が、会議室に響き渡った。


「国を守るだと? 貴様の愚かなプライドのせいで、王家は今、建国以来最大の危機に瀕しているのだぞ! ……衛兵、このバカ息子を地下牢へ幽閉せよ!」


「ち、父上ぇぇぇッ!!」


泣き叫ぶレオンハルトが衛兵に引きずられていくのを、カイルたち三人はただ顔面を蒼白にして見送ることしかできなかった。


彼らもまた、間もなく自分たちの身に降りかかる「連帯責任」という名の破滅を予感していたのだろう。


王家の切り札であった「天才たち」は完全に無力化され、王太子は失脚した。


しかし、王都の深刻な物資不足は解決していない。

もはや国王に残された道は、ただ一つしかなかった。


——そう、ヴァルシュタイン公爵家への、全面的な降伏と救済の懇願である。


【続く】


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