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タカマガハラの神務官 〜神の力を使うのに必要なのは祈りではなく決裁です〜  作者: ひらまさ


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16/17

第16話 言えなかったこと

水上様案件、その夜です。


現場で起きた白い線について、波多野とあぶさんが初めて正面から話します。

今回は、あぶさんの正体と、波多野がこれまで言えなかった理由の話です。

第16話 言えなかったこと




家に着いた頃には、葛飾の夜になっていた。


駅前の明かりはまだ残っていたが、商店街のシャッターは半分以上が下りていた。昼間に見た自治会館の掲示板も、旧水路跡の石組みも、青いビニールシートも、田んぼの向こうに沈む夕日も、もうここにはない。


それなのに、リュックの重さだけは、帰りの列車から変わっていなかった。


玄関の鍵を開ける。


靴を脱いだところで、波多野承平は少しだけ動きを止めた。


部屋はいつもの匂いがした。畳と本と、少し古い木の匂い。昼間の現場で嗅いだ湿った土の匂いとは違う。違うはずなのに、耳の奥にはまだ細い水音が残っていた。


もう一度、誰かに気づかれたものの音だった。


「ただいま」


本棚の上に置いた市松人形に声をかける。


みよは、いつものように桐箱の前に座っていた。白い顔は部屋の明かりを受けて、少しだけこちらを向いているように見える。


返事はない。


もちろん、いつも返事があるわけではない。


それでも今日は、返事がないことが少しだけ重かった。


波多野はリュックを畳の上に下ろした。


中から、何も出てこない。


いつもなら、ファスナーを開ける前から白い鼻先が動く。油揚げの匂いがしないか、冷蔵庫に何が残っているかを勝手に気にする。


今日は、静かだった。


「あぶさん」


返事はなかった。


波多野は上着を脱いで、椅子にかけた。手を洗い、冷蔵庫から麦茶を出す。コップに注いで、半分ほど飲んだ。


喉が乾いていた。


けれど、何かを飲み込むたびに、胸の奥で別のものが引っかかる気がした。


畳の上に戻る。


リュックのファスナーを開けると、白い耳が少しだけ動いた。


「起きてますよね」


「……寝たふりをする狐がおってもよかろう」


ようやく声がした。


いつもの調子より、少し低かった。


「話があります」


波多野が言うと、リュックの中であぶさんがしばらく黙った。


それから、のそのそと出てきた。白い毛並みは少し乱れている。顔の赤い紋様が、部屋の明かりの下でいつもよりはっきり見えた。


あぶさんは畳の上に座った。


波多野も、その正面に座る。


膝を突き合わせる、という言葉がある。


実際には、片方は人間で、片方は白狐だった。けれど、波多野にはその言葉以外が思いつかなかった。


「今日の白い線」


言葉にすると、急に現場の光景が戻ってきた。


倉橋の手首へ向かって伸びた、細い水筋。


封緘糸を握ったまま動きを止めた倉橋。


測定器を構えたまま、波多野を見ていた小田倉。


その足元を、白い線が結んだ。


波多野から倉橋へ。


倉橋から小田倉へ。


小田倉から波多野へ。


三人の足元を、狐火のような線が結んだ。


「あれ、あぶさんですよね」


あぶさんは、すぐには答えなかった。


畳の上に前足をそろえたまま、しばらく波多野を見ていた。


「あのままなら、倉橋に届いておった」


「倉橋さんに」


「小田倉も、無事では済まなん。あの場の中におったからな」


それが答えだった。


否定ではない。


言い訳でもない。


ただ、あぶさんは事実を言った。


「やっぱり」


「責めるか」


「責めません」


波多野は、思ったより早くそう言った。


自分でも少し驚いた。


「助かりましたから。倉橋さんも、小田倉所長も。たぶん、僕も」


「ならば、よい」


「よくはないです」


あぶさんの耳が、わずかに動いた。


波多野はコップを持ち上げかけて、やめた。今飲むと、言葉が薄くなる気がした。


「責めてるんじゃないです。でも、もう隠せないと思います」


「なら、わしがついて行かねばよいか」


あぶさんは、思ったよりあっさり言った。


波多野は首を振った。


「そういう話じゃないです」


「そうかの」


「そうです」


波多野は、畳の目を見た。


真っ直ぐあぶさんを見て話すには、少し力が要った。


「もう、あぶさんが一緒に来るかどうかだけの話じゃありません。僕の周りで何かが起きてる。倉橋さんも見た。小田倉所長も見た。榊課長にも伝わります」


列車の中で、倉橋が端末を操作していた光景が浮かぶ。


水上様案件。波多野の名前。白い線状反応。発生源不明。


その言葉は、波多野に少しだけ優しかった。けれど同時に、逃げ道のようでもあった。


「僕は、使ったつもりがありません」


「そうじゃろうな」


「でも、関係ないとは言えません」


「そうじゃろうな」


「……そこ、もう少し何かありませんか」


「あるが、聞きたいか」


聞きたくない、と思った。


聞かなければ、まだ昨日までのように出勤できる気がした。リュックを背負い、庁舎に入り、端末を立ち上げる。あぶさんはリュックの中で油揚げの話をする。波多野はそれを小声でたしなめる。


それで済むなら、どれだけ楽だろう。


けれど、もう済まなかった。


「聞きます」


あぶさんは目を細めた。


「おぬしは、何を聞きたい」


「まず、あぶさんが何者なのか」


ずっと避けてきた問いだった。


白狐が喋る。油揚げを食べる。神務庁に詳しい。INARIの奥にあるものを知っている。波多野のリュックに入り、現場についてくる。


その一つ一つに驚いていたはずなのに、波多野はいつの間にか、それを日常の一部にしていた。


最初は、本当に分からなかった。


報告すべきものなのかも分からなかった。白狐が勝手についてきた、と言えばいいのか。稲荷系の何かがいる、と言えばいいのか。呪物課に持ち込むべきなのか。INARI運用課長に相談すべきなのか。そもそも、相談した瞬間に何が始まるのか。


分からなかった。


だから、言わなかった。


そう思っていた。


でも、言わないまま一日が過ぎると、次の日にはもっと言いにくくなった。次の日も言わないと、その次の日には、さらに言いにくくなった。


最初に言うタイミングを逃した。


その後で、もう言えなくなった。


それだけなら、まだただの失敗だった。


けれど、今は違う。


波多野は、あぶさんを現場に連れて行っていた。


家に置いていく方が怖かったからだ。


みよのいる部屋に、登録も説明もできない白狐を残して出ることを考えると、それだけで落ち着かなかった。勝手に外へ出るかもしれない。近所の人に見られるかもしれない。何かを食べるかもしれない。あるいは、みよと何かを始めるかもしれない。


かといって、神務庁に預けることもできなかった。説明できないものを、説明しないまま預けられるわけがない。外に放すなど、もっとできない。


結局、見えるところに置いておくしかなかった。


その理由は、本当だった。


でも、それだけではなかった。


本当は、あぶさんがいない現場が怖かった。


声を聞いた時、自分一人では受け止められない気がした。あぶさんがリュックの中にいるだけで、波多野はどこか安心していた。


置いていくのが怖かった。


でも、いないのも怖かった。


その二つを、波多野は同じ理由のような顔で混ぜていた。


「あぶさんは、何者なんですか」


「稲荷の使いじゃ」


あぶさんは、今度は逃げなかった。


「使い」


「神ではない。神に仕えるものじゃ。人間で言えば、使用人に近い」


「使用人」


「下働きと言うなよ。こっちにも面子がある」


いつもの軽口に聞こえた。


けれど、あぶさんの声は笑っていなかった。


「社に座る神ではない。名を祀られるほど大きくもない。じゃが、道に落ちた祈りや、家の隅に残った願いを見るのは、そういう者の役目じゃ」


「それで、声が聞こえるんですか」


「聞くのが仕事じゃからな」


聞くのが仕事。


波多野は、その言葉を頭の中で繰り返した。


神務庁にも、聞く仕事はある。


INARI運用課は、神気濃度を見て、異常値を見て、必要があれば現場につなぐ。声そのものを聞く部署ではない。画面に出る数値とログを扱う部署だ。


けれど、あぶさんの言う「聞く」は、もっと近かった。


道に落ちた祈りや、家の隅に残った願いを、声のまま聞く。


「INARIネットワークは、何なんですか」


「稲荷の網の一部じゃ」


「あの時、僕が見たものも」


呼水の訓練の夜。


自宅で、あぶさんに促されて、波多野は稲荷の網の入口を覗いた。


中には入らない。


覗くだけ。


そう言われた。


けれど、覗いただけで十分だった。


音と声が多すぎて、胃がひっくり返るようだった。


「あれが稲荷の網なんですよね」


「そうじゃ」


「INARIとは違うんですか」


「INARIは、稲荷の網そのものではない」


あぶさんは、畳の上で尻尾を一度だけ動かした。


「昔、稲荷と契約した人間がおった。その者が、網の一部を人間にも扱えるように削り、結び直し、名をつけた。それがINARIじゃ」


「人間用に加工した」


「そうじゃ。人間が見るには、声は多すぎる。願いは細かすぎる。全部聞けば壊れる。じゃから、見えるものを絞り、流れるものを整え、数値にし、異常として拾えるようにした」


波多野は、庁舎の端末画面を思い出した。


地図の上に神気濃度の色が重なり、異常があれば赤い点が灯る。警告表示が出て、その下には簡易ログが残る。


それは便利だった。


便利でなければ、仕事にならない。


でも、その奥に、加工される前の網がある。


「じゃあ、あぶさんはINARIの……」


「違う」


あぶさんは、そこだけ少し声を低くした。


「わしは貸し出されたものではない」


波多野は口を閉じた。


その言い方には、妙な重さがあった。


神務庁の備品ではない。登録端末ではない。人間用に加工された網の一部でもない。


稲荷神の側にいる使い。


その白狐に、自分は名前をつけた。


「僕は」


波多野は、ようやく次の問いに触れた。


「僕は、何なんですか」


「おぬしは人間じゃ」


「そういう話ではなくて」


「分かっておる」


あぶさんは小さく息を吐いた。


「名をつけたじゃろう」


「あぶさん、って呼んだだけです」


「人間はすぐ、呼んだだけと言う」


赤い紋様のある顔が、わずかに傾いた。


「じゃが、名をつけるというのは、こちら側では軽くない」


波多野の背筋が冷えた。


あぶさん。


油揚げから、安直につけた名前。最初は、ほとんど冗談だった。


白狐に名前がないのは不便だから。呼びにくいから。あぶらあげの、あぶ。あぶさん。


そんな程度のつもりだった。


「契約、ですか」


「人間の言葉で言えば、そう呼んでもよい」


契約。


その言葉だけが、波多野の中で妙に重く残った。


神務庁で働いていれば、神と人との関係がただの昔話ではないことくらいは分かる。


けれど、自分がその言葉の内側に入るとは思っていなかった。


契約。名をつけた。願えば響く。自分の声が、あぶさんに通りやすくなった。


それは、報告書のどの欄に書けばいいのか。


そもそも、報告書に書けるものなのか。


波多野には分からなかった。


分からないのに、分からないまま、もう何度も現場へ連れて行っていた。


「じゃあ、どういうものなんですか」


「名を呼べば届く。願えば響く。おぬしの声が、わしに通りやすくなった」


「僕が、あぶさんを使えるんですか」


「使うことはできる」


「嫌です」


「じゃろうな」


あぶさんは、少しだけ目を細めた。


その顔は、どこか満足そうでもあった。


「おぬしがそういう人間でなければ、わしはここにおらん」


「でも、今日の白い線は、僕が命じたわけじゃありません」


「命じてはおらん」


「じゃあ、僕は関係ないんですか」


「関係ないわけがなかろう」


あぶさんは静かに言った。


「おぬしは願った。届くなと。傷つけるなと。倉橋に届くなと。小田倉を巻き込むなと」


波多野は、胸の奥を押さえられたような気がした。


あの時、自分は何を思ったのか。


倉橋さんに届く。


そう思った。


細い水筋が、倉橋の手首へ向かって伸びた。倉橋は封緘糸を握っていた。小田倉も、同じ場の中にいた。自分もいた。


誰かが間違っているとは思わなかった。


倉橋の判断を否定したかったわけでもない。


ただ、あの水が人に届くのだけは駄目だと思った。


その後で、閉じるのではなく、聞かなければいけないと思った。


でも最初にあったのは、危ない、という感覚だった。


届くな。


傷つけるな。


その願いに、あぶさんが応じた。


「使った自覚は、ありません」


「そうじゃろう」


「でも、無関係ではない」


「そうじゃ」


波多野は、両手を膝の上で握った。


小田倉の声が戻ってくる。


自分の口で。


倉橋の声も戻ってくる。


分からないことは、本人が分からないと言うしかありません。


分からない。


けれど、分からないだけではない。


言いたくないことがある。


榊に報告したら、あぶさんがどうなるのか分からない。


呪物課に回されるのか。稲荷系の担当に引き渡されるのか。登録されるのか。分類されるのか。検査されるのか。自分から引き離されるのか。


何も分からない。


分からないからこそ、怖かった。


そして、もう一つ、もっと嫌な理由があった。


ばれないなら、このままでいい。


一瞬でも、そう思ってしまった。


今まで通り、リュックに入れて出勤する。あぶさんはたまに余計なことを言う。波多野は小声で止める。必要な時だけ助けてもらう。誰にも言わない。


それで済むなら、その方が楽だ。


そう考えた自分がいた。


波多野は、そのことに気づいていた。


だから、気分が悪かった。


「僕は、どこまで話すべきですか」


波多野が聞くと、あぶさんはすぐには答えなかった。


畳の上に前足をそろえたまま、赤い紋様のある顔を少しだけ伏せている。


「任せる」


「それが一番困るんですけど」


「おぬしの口で言う話じゃ。わしが決めることではない」


「でも、言ったらどうなりますか」


「戻れぬかもしれん」


「戻れない」


「稲荷の使いに名をつけた。稲荷の網を覗いた。使ったつもりがなくとも、願いに応じて神威が動いた。そこまで人間に話せば、おぬしはただの出向者ではいられまい」


波多野は、喉の奥が乾くのを感じた。


「適合者、どころじゃないんですか」


「人間の言葉で言えば、そうじゃろうな」


「あぶさんは」


「わしも、おそらくここにはいられん」


「ここって、僕の部屋ですか」


あぶさんは、少しだけ目を細めた。


「おぬしのそばじゃ」


波多野は黙った。


責めたいわけではなかった。


でも、安心もできなかった。


あぶさんは助けてくれた。


けれど、勝手に助けられた。


自分は助けられた。


けれど、それを隠そうとしている。


どちらも本当だった。


「あぶさんは」


波多野は、もう一つ聞いた。


「何がしたいんですか」


あぶさんは、今度こそ長く黙った。


油揚げの話に逃げなかった。冗談も言わなかった。


ただ、畳の上で静かに座っていた。


「今は、まだ言えぬ」


「言えないんですか」


「言わぬ方がよいこともある」


「僕と契約してるんですよね」


「人間の言葉で言えば、そうじゃ」


「それでも、言えないんですか」


「それでもじゃ」


波多野は指を組んだ。


怒りはなかった。


ただ、何かを預けられているのに、その重さを知らされていないような気がした。


「じゃあ、どうして僕のところにいるんですか」


あぶさんは、そこでようやく顔を上げた。


「居心地がよい」


「……それだけですか」


「それだけではない」


「ですよね」


「じゃが、それも嘘ではない」


あぶさんの声は静かだった。


「わしは、人間に拾われに来たわけではない」


「じゃあ、何をしに」


「見に来た」


「何をですか」


「人間が、まだ声を聞けるかどうかをじゃ」


部屋の中が、少しだけ静かになった気がした。


外では車が通った。遠くで誰かが自転車のベルを鳴らした。いつもの葛飾の夜の音だった。


けれど、その下に、波多野は別のものを聞こうとしてしまう。


家の隅に残った願い。道に落ちた祈り。水路の底に取り残された声。


それらを聞くことが、いいことなのかどうか、まだ分からなかった。


「全部は、話せないと思います」


波多野は言った。


言ってから、自分の声の小ささに気づいた。


「榊課長に」


「そうか」


「でも、何も言わないのも、もう無理です」


「そうじゃろうな」


「水上様の声が聞こえたことは言います。白い線については、使った自覚はない。でも、自分と無関係だとは思えない。あと……INARIの奥に、別のものを見たことがあることも」


言えるのは、そこまでだった。


あぶさんの名前は出さない。


リュックにいることも言わない。


名をつけたことも言わない。


契約という言葉も、たぶん言わない。


それは、嘘ではない。


けれど、本当のことでもない。


「卑怯ですか」


波多野が聞くと、あぶさんはすぐには答えなかった。


「人間らしい」


「それ、褒めてますか」


「さあの」


あぶさんは小さく尻尾を丸めた。


「じゃが、苦しむなら、まだよい」


「よくないです」


「苦しまぬ者よりは、よい」


波多野は返事をしなかった。


その言葉で救われたくなかった。


端末が鳴ったのは、その時だった。


波多野は机の上に置いていた業務端末を見た。


通知が一件。


榊課長から予定が入っていた。


件名。


水上様案件に関する確認。


明日、九時三十分。


課長席。


波多野は、しばらくその文字を見ていた。


自分の口で。


小田倉所長の声が、耳の奥で戻ってきた。


分からないことは、本人が分からないと言うしかありません。


倉橋の声も、続いて戻ってきた。


波多野は端末を伏せた。


「あぶさん」


「なんじゃ」


「明日、話します」


「そうか」


「でも、全部は話せません」


「そうか」


「それでいいんですか」


あぶさんは、少しだけ目を閉じた。


「よいかどうかは、後で分かる」


「今、分かりたいんですけど」


「人間はせっかちじゃの」


いつもの調子に少しだけ戻った声だった。


けれど、波多野は笑えなかった。


あぶさんは立ち上がり、ちゃぶ台の下へもぐった。


そこで丸くなりかけてから、ふと思い出したように顔だけこちらへ向ける。


「承平」


名前を呼ばれて、波多野は顔を上げた。


「あまり、よい人間でいようとするな」


「どういう意味ですか」


「よい人間でいようとすると、聞こえる声まで選び始める」


そう言って、あぶさんはちゃぶ台の下で丸くなった。


波多野は、そのまましばらく畳の上に座っていた。


部屋の明かりはついたままだった。


本棚の上にはみよがいて、ちゃぶ台の下にはあぶさんがいる。リュックは、その横で口を開けたままになっていた。


昨日までと同じ部屋のはずだった。


けれど、同じではなかった。


波多野は、明日の予定をもう一度見た。


水上様案件に関する確認。


自分の口で。


言うべきことはある。


言えないこともある。


その二つを分けてしまった自分の弱さだけが、夜になっても薄まらなかった。


第16話でした。


あぶさんはただのマスコットではなく、稲荷の使いとして波多野のそばにいます。

ただ、波多野もまだ全部を理解しているわけではありません。


最初に言うタイミングを逃して、そのまま言えなくなってしまうこと。

分からないから言えなかったはずなのに、いつの間にか「言いたくない」も混ざってしまうこと。


私も経験があります。

特に若手のうちは、最初にタイミングを逃すと本当に言えなくなっちゃうんですよね。

気づいたら爆弾を抱えがちです。


今回は、そのあたりを波多野にも背負ってもらいました。


次回は榊課長との面談です。


評価、ブクマ、感想是非ともお待ちしております!、

重要なのでもう一度!

評価、ブクマ、感想ぜひぜひお願いします!

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