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氷食症  作者: 平井ララライ


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第1話:深夜2時のコンビニ

 終電がすぎた後の夜は、決まって海の匂いがした。


 理由なんてない。この街に海なんてないことくらい、僕だって知っている。


 それでも深夜2時になると、湿った風の中に、遠い波の音みたいなものが混ざる気がするのだ。窓を開けても、本を読んでも、何をしても眠れない。


 そういう眠れない夜には、いつも必ずコンビニへ行く。


 特に買いたいものがあるわけじゃない。真っ暗な夜に白すぎる光の下に立っていると、自分だけが世界から切り離されたみたいで、少しだけ安心できた。


 その日も、冷えたコーヒーを片手に店を出た時、カラン、と小さな音が鳴った。


 音がした方に視線を向けると、街灯の下で少女が氷を噛んでいた。


 白髪はくはつに緑のメッシュが入った珍しい髪型をしていた。手に持っているのはアイスコーヒー。中身は入っていないように見える。飲み終わったあとの氷を食べているのだろうか⋯⋯


 そうしてしばらく見つめていた所、その少女はこちらに気づきこちらに目をやった。


 僕は慌てて視線をそらす。頭の中にはまだその少女の顔が浮かんで消えない。


 すごく綺麗な瞳をしていたからだ。少女にじっと見つめられるのは慣れないもので、すごく不思議な感覚を覚えた。


 そのまま流されるように帰路についた。あの少女と目が合った時の奇妙な高揚感は朝日が昇る時間になっても忘れられないでいた。

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