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ナロト奇譚  作者: 木山碧人
第十二章 ナロト攻略

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第97話 潜入

挿絵(By みてみん)





 覚醒都市西部。都市総合病院内。


「…………」


 一階の正面入り口から堂々と侵入を果たしたのはルスラン。エントランスを直進し、脇目も振らず関係者用の非常階段へと進行する。


「申し訳ありませんが、そちらは職員専用で」


 声をかけてきたのは受付と思わしき看護婦。プラチナブロンドの長髪で青い瞳、見るからにロシア系の血を引いた若い女性だ。覚醒都市にいる以上は多少なりとも戦えるんだろうが、みるからに戦闘系の能力者じゃない。


「黙れ」


 ルスランは針のように鋭いセンスを飛ばし、威圧する。


「――――うっっ」


 看護婦はその場に倒れ込んで気絶していた。直接的な攻撃力はなく、睨みを利かせるの上位互換に近い。格下に相手にしか通用せんが、いちいち殴って気絶させるよりかは効率的で、周りの心証を損なうこともないはずだ。


「…………」


 悠々自適にルスランは関係者用の非常階段に足を運ぶ。一歩遅れて止めに入ってくる病院関係者の姿が見えたが、平和ボケしているせいか反応が遅い。


「手ぬるいな」


 視界に入った病院関係者全員を小結界に閉じ込める。さらには両手両足をセンスの糸で縛りつけた。しばらくは動けない状態が続くだろう。振り返ることなく非常階段を降り、直感を確信に変えるために当たりをつけた場所への到着を急いだ。


「「「…………」」」


 行く手を遮るのは三名の白軍兵。踊り場で横並びになっており、それぞれが警棒を装備し、鎮圧に重きを置いているのが見て取れる。この時点ではなんともだな。殺傷能力が高い武装なら、口封じのために問答無用で消そうとする意図が透けるが、この程度の武装なら警備の延長線上とも受け取れる。白軍所属ならセンスで気圧されるほどの腑抜けとも思えんし、ここは……。


「来いよ。相手になってやる」


 白いセンスを身に纏い、ルスランは受けの姿勢で相手の出方を伺った。


「「「――――」」」


 白軍兵A、B、Cはそれぞれ駆け出し、正面、背後、上空の三方から警棒を振るっている。見たところ目立った意思能力はなし。接触発動型の可能性が極めて高いが、『来いよ』と言った手前、避けるのは恰好がつかない。


「手並み拝見」


 体表面を満遍なくセンスで覆い、直後に警棒が身に触れる。


「もらったぁ!!」


 正面にいる白軍兵Aが勝利を確信したようなセリフを口走り、後方に距離を取った。手に持っていたはずの警棒は消えており、何らかの意思能力が発動したように見えた。自信満々な態度と発動条件から考えるに、対象をほぼ100%鎮圧できるものだと思っていいだろう。ここまで考えれば、選択肢は大して多くない。


「多人数接触発動型の意思能力。芸のなさを人数で穴埋めしたな。見たところ拘束着を具現化する能力らしい。これで手足を縛り、なおかつセンスも封じた。行き着く先は拷問部屋か、それとも実験部屋か?」


「さぁな。その目で確認しろや」


 白軍兵Aは意気揚々と強気な姿勢を貫き、こちらの背中を手で押した。囚人と看守の関係の出来上がりだ。無力化できているのだから、警戒する必要がない。相手がどんな意思能力を秘めていようが問題ない。そんな目に見えた慢心が言動から伝わってくる。


「待て……。こいつの顔、どっかで見たような」


 対して不安げな反応を見せたのは、白軍兵B。横からこちらの顔を覗き込み、小首をかしげている。その声に従い、白軍兵Cが正面に回り込み、至近距離で顔を凝視していた。まじまじと見つめ続け、長ったらしいと思い始めた頃。


「嘘だろ、おい。この御方は……」


 目を見開き、尻もちをつき、大袈裟な反応を示している。まぁ、久方振りに帰ったんだ。気付くのに時間がかかるのも無理はない。


 だが、こいつは正体を察した。


 誰を敵に回してしまったのかを理解した。


「七聖獣……『白獅子』ルスランっ!!」


 気付いたと同時に、拘束着は悲鳴を上げる。ビリビリと音を立て、衣の概念を保てなくなってしまっている。


「はぁ!? どうなって!?」


 白軍兵Aが声を荒げる。ネタバレをご所望のようだ。


「発想は悪くない。並みの使い手なら両手両足とセンスを封じれば、大抵は身動きが取れなくなる。三人がかりで同じ能力を開発し、同時に対象と接触するって条件も相まって、確かにセンスはバチバチに封じられていたな」


「じゃあ、なんで……」


 不安げな白軍兵Bが更なる答えを求める。もはや敵意は消えており、教えを乞うような姿勢にも感じられた。


「フィジカルだ。どれだけ強固な衣を生成しようが、膂力が強けれりゃ破れる。そんじょそこらの使い手とは鍛え方が違うんでな。若手のお前らも『闘納祭』の噂ぐらいは聞いたことあるんだろ?」


 空気が凍り付く。沈黙が場を支配する。これ以上は野暮ってもんだな。自分の口から戦果をひけらかすのも気が引けるし、優しくケリをつけてやるか。


「七聖獣同士の総当たり戦で唯一負けなし。まごうことなき覚醒都市最――」


「それは過去の話だ。今だと結果は分からんよ」


 流れるように手刀を浴びせ、白軍兵ABCはノックダウン。続く言葉が語られることはなく、今後も証明してやる予定はなかった。

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