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ナロト奇譚  作者: 木山碧人
第十二章 ナロト攻略

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第41話 広がる戦火

挿絵(By みてみん)





 胃体区を進行するジェノたちの足は止まる。突如として響き渡った轟音によって、各々は警戒心を露わにしていた。


「何やら物騒なことが起こったようじゃのぅ」


「茶飯事だろこんなの。珍しくもなんともない」


 先頭を歩いていた広島とスサノオは真っ当な反応を示す。


「いや……ただのガス爆発にしては大きい」


「勘違いでなければ、銃声のようなものが響いた気が……」


 その後方に位置するソーニャとロザリアは不穏な反応を見せた。


「各自、気を引き締めてください」


「こいつは……何か来やがるぞ」


 最後列に位置するジェノとカグラは確信じみた反応を見せ、他人事で済まない物々しい気配を感じ取り、身構えていた。そこに襲い来るのは。


「「「「「「――――ッッ!!!!!!」」」」」」


 大量の魔獣。山火事から避難する動物の群れのように、音がした方向から背を向け、退避しようとしている。もはやジェノたちは眼中になく、戦闘するしないの問題ではなく、巻き込まれるか巻き込まれないかのどちらかでしかなかった。


 トラブルを予期してはいた。隊列を変え、『波』で見た光景から遠ざかるように手を打った。ただ、これはなんだ。織り込み済みの未来なのか、それとも……。


「二人一組で散ってください!! 幽門区で合流しましょう!!!」


 訪れた混沌に頭を悩ます中、ジェノの思考は合理的に働く。意図を汲んだ五名は書く方向に散っていき、パーティは一時的に解散した。


 ◇◇◇


 ジェノ一行の攻略は極めて順調だった。胃低区で『仕立屋』を拠点にし、さらに胃体区でも中間地点を生成した。放っておくだけで胃を攻略し、白軍兵を消耗させることなく進軍が可能となるだろう。魔獣や環境に頭を悩ます必要がないのだから、攻略者の処理も順調に進むと予想したが、思いのほか苦戦を強いられていた。


「…………」


 白軍元帥ドミトリーは遠目から戦況を伺う。胃低区に転がる白軍兵の死体の山を見る。被害軽微とは口が裂けても言えず、敵戦力を見誤ったという現実が広がる。もはや言い訳は不可能であり、早急に手を打つ必要があった。


 ◇◇◇


 足元に転がるのは、取るに足らない白軍兵の死体の山。相手の事情がどうであれ、襲ってきたという事実は変わず、自分の命を守るために抵抗したまでのこと。まぁ、向こうからすれば余所者だし、覚醒都市ではテロリストだったから、賞金首や指名手配にされてもおかしくはない。


 ただ、これといった悪さをした覚えはなかった。


 覚醒都市の停電に加担したり、白龍解放に協力したりはしたけど、殺されるほどヘイトを買うようなことはしてないはず。死体をもてあそんだり、嗜虐心を満たすためだけに拷問をしてたら襲われる理由に納得がいくんだけど、これはどうもキナ臭い。裏があるというか、後ろ暗い事情があるというか。


 なんにしても、ここまで被害が出れば白軍は引くに引けない。指揮官自らが顔を出してきてもおかしくない。どうせ、大尉ぐらいが関の山でしょうけど、無意味に死体を量産するよりかはマシね。


「「…………」」


 思考を整理し終えたところで目の前に現れたのは、二名の軍人。見覚えはないけれど、目に灯るセンスと左胸の勲章を見る限り、並みの兵士じゃない。予想を上回る大物が釣れたとみてよさそうね。


「名前と階級を伺っても?」


 バグジーは二振りのククリ刀についた血を払い、二人に興味関心を向ける。片方は短い銀髪を逆立てた冷静沈着な軍師っぽい印象で、もう片方は天然パーマの黒髪に髭ともみ上げが一体化した熱血漢っぽい印象があった。


「ダニール・カラシニコフ。階級は中将」


「ボリス・ヴィコフ。階級は大将」


 口数は少なく、ダニールとボリスは必要以上の情報を落とさない。無個性の極みというか、愛想に欠けていたけど、軍人なんてのはそんなもの。戦場に私情を挟む必要はなく、任務を忠実にこなし、戦果を積み上げることが優秀な兵士の条件。とはいえ、秘めたる感情がダダ漏れなのよねぇ。


「部下を殺された、お礼参りといったところかしら。いいわ……その復讐リベンジ、赤級殲滅者(エリミネーター)バグジー・シーゲルが受けてあげる!!」


 ◇◇◇


 支配の騎士との戦闘を終えたセレーナは煉獄界の一部だと思われる広大な荒野を歩く。『煉獄の門』という名の出口を追い求め、セルゲイとセルゲイ2と共にあてもなく彷徨う。現実世界に帰る算段はついているし、神話級の目に見えた戦果を得たけど、どこか気分は晴れなかった。


「超やな感じ。なんなんだろう、この感覚……」


 歩みを深めるごとに、不安が募る。言語化できない感情が焦燥感を駆り立てる。ここではないどこかで激しい戦闘が繰り広げられているような気がするけど、なんの根拠もないし、当たっていたとして、だからなに? という話ではある。自分には関係ないし、見ず知らずの人が勝とうが負けようがどうでもいい。


 それよりも……。


「また会ったね。さすがにこれは幻覚じゃないか」


 思考を連ねる中、行く手を遮ったのは白髪の少女。『桃瀬桃子』の面影を残した白軍所属の兵士、ターニャ・タトリン中尉が桃色のセンスを纏っていた。

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