"だった"でおしまい。
繁忙期でも週1で更新出来るように頑張りたい。
「翔入るよー。」
ノックと共にドアを開ければ蹲っている幼馴染み。その傍らにあるテーブルには可愛らしい箱に詰められたガトーショコラ。半分程減っているそれは、見た目に騙されて一口でいったと思われる。
「人の、部屋に許、可無く入っ、てんじゃねぇよ。」
「それブーメランだからね。現在進行形で死にかけてるのを助けに来てやったんでしょうが。」
口だけはいつも通りの応酬をしている間に先生は翔の介抱をしようとしている。胃薬とかこの家にもあるはずだけど、お邪魔した時にオバサンが出てこなかったし家の中を漁る訳にもいかなかったから私を呼んだのかな。
一度キッチンへ向かい躊躇いもなく棚から大きめのグラスを取り出す。ある程度の水を入れて部屋に戻れば、先生の助けを借りてベッドへは辿り着けたようだ。グラスと自宅から持ってきた薬を渡して飲んでもらう。
「助かった…。」
「なかなか見れない貴重な姿見れたし、助けた甲斐はあったかな?」
「…あとで覚えてろよ…。」
ゲームでは皆気絶してたけど、先生が猛特訓したからなのか翔が頑丈だったからなのか。意識を失うまでいかなくて正直ホッとした。救急車騒ぎとか勘弁だからね。
「とりあえず先生は帰った方がいいと思いますよ。」
「え、でも…。」
「そろそろオバサン帰ってくるだろうし、もう結構遅い時間ですから。心配なのは分かりますけど、自分の立場を考えた方がいいかなと。」
彼氏が心配なのは分かるが、それ以前に2人は先生と生徒なのだ。こんな時間まで生徒の家にいるとか、オバサンが2人の交際を知っていたとしてもあまり良い印象は持てないだろう。何がマイナスになるか分からない以上大人しく帰るのが最善だ。
言いたいことを察してくれた先生は渋々だけど支度をしてくれた。玄関まで見送ろうと立ち上がるけど、翔を見ていて欲しいとお願いされてしまったのでそのまま座り直す。
「紫帆。」
「…ん?」
朦朧としている翔にいつもの勢いも悪どい笑みもない。その姿に記憶も何もないのに懐かしいと思ってしまうのは何故だろう。
「なんか、昔みたいだ…。」
「うん。」
「あん時ちゃんと言えなかったけど。」
翔の言う"昔"がいつのことだか全く分からないから相づちしか返せない。当時の彼は私に何を伝えたかったのかな?
続きを待ってみるけど、やはりだいぶ辛そうである。正直自分が今何を話してるか分かってないのではないだろうか。
「俺、紫帆のこと好きだったから。お前が…。」
「は?」
「…。」
「え?ちょっと?そこで意識飛ばすんですか…。」
今日は爆弾発言が多い気がする。それでも数時間前よりはだいぶ穏やかだ。続きは大いに気になるけども。
「"だった"、ねぇ…。」
肩までしっかりと布団を掛けてあげて、テーブルに残されたお菓子に一応蓋をする。物音をさせずに部屋を出て廊下の窓から外を確認すれば、オバサンは帰宅したようだ。帰るにも施錠が心配だったがそれも大丈夫そうだ。
「私も好きだったよ。」
階段を降りる足音はとても軽かった。




