幼馴染みピンチ。
タイミング良くホームに滑り込んできた電車に乗り込んで呼吸を整える。窓を見れば髪の毛がグチャグチャな姿に気付き手櫛で直す。
何かしていないとさっきのことを思い出して叫びだしそうだ。
私も、好きだ。って言いそうになった。なんて。
(あぁぁぁ!!やだ私ちょろい!!麗君ごめんなさいぃ!!)
人目がなければ今すぐにでも土下座したい。麗君に向かってひたすら謝罪したい。
バックの中でスマホが振動した気がしたけどそれに反応する余裕も無く、ただ俯いて自分の降りる駅を待った。
「紫帆、なんか学校の先生来てるけど…。」
「んえ?」
なんとか帰宅し自室に籠り、散々(といっても30分程度)暴れた後でリビングに降りて蜜柑を堪能していると響いたインターフォン。お母さんがパタパタと玄関に向かったと思ったらすぐに戻ってきて困惑気味に話しかけてくる。
三者面談の時に担任の顔を見てるはずだから学校の先生って表現に少々の疑問。私も担任以外には思い当たらず、とりあえず炬燵とお別れして玄関へ。
「北沢先生?」
「あ!大澤さん!お願い、翔君が大変なの!助けて!」
「はぁ?」
まさかのヒロイン登場に必死に頭の中で整理して、納得。
バレンタインイベントが発生したらしい。
本来学校で起こるべきイベントが、既に交際してることによって場所が翔の家になったのだろう。南條さんの所に行く予定があったからすっかり忘れていたけど。
つまり現在翔は自室で倒れていると。
バレンタインに倒れる要素があるのかと突っ込みたいだろうけど、そこはゲームベースだからしょうがない。
ヒロインは料理オンチである。何故かお菓子限定の。どれだけ分量を正確に計測して作っても、出来上がるのは見た目は完璧な凶器。ゲームでは見た目に騙された攻略者達が口に入れた途端次々と屍になっていくのである。
本人はそれを分かっているから封印していたが、可愛い生徒(主に真下君)におねだりされた結果の惨劇。
「翔がどう大変なんですか?アイツ、そう簡単にピンチになることはないと思いますけど。」
「バレンタインだからお菓子を持ってきたの。翔君に頼まれて…でも…。」
「そのお菓子が原因だと?」
一応確認で状況を尋ねれば、やはり彼女は頷いた。正直そのままでも復活するから気にすることはないけど。あまりにも彼女が必死だからそのまま靴を履き替えて家を出る。
別に翔の無様な姿を見て嗤いたいわけではない。決して。




