延長戦ですか?
無事にチョコレートの配達が終われば外はすっかり暗くなっていた。篠崎さんと待ち合わせしていた時間からだいぶ気温も下がって、冷たい空気が痛い。イヤーマフもしてくれば良かったと耳に触れながら思う。
駅に着いたら売店で暖かい飲み物だな、なんて歩く速度を上げると違和感を覚えた。
「道が違う?」
何を馬鹿なことを言ってるんだと思うが、来た時に通った道ではない。目印にしていたものがない。寧ろこの景色、凄く、懐かしい気がする。
懐かしさと同時に強烈な焦りが生まれる。必死に考えて、冷静になろうと一度瞼を下ろして深呼吸する。
でも視界に入ってきた景色達は、どう見ても私が元いた世界のものだ。
「大澤!」
「え?へっ?中嶋君…?」
背後から掛けられた声に驚きを隠せない。こちらへ近付いてくる彼は向こうの世界の住人だ。
中嶋君。失礼なことに名前は覚えていない。麗君の幼馴染みと紹介されたくらいで友人とは言い難いが、全くの他人というわけでもない。顔を合わせれば挨拶はする程度の知人だ。
そんな彼は私の横まで来ると腕を掴んで引き摺ろうとする。
「ちょっ!?なんで中嶋君!」
「ごめん!説明は後でするから今は何も聞かないでくれ。」
その言葉の直後に走り出した彼はまるで何かに追われているようだった。
そろそろ足の限界というところで辿り着いたのは小さな公園だった。背景に懐かしい建物が見える。大学の近くにこんな公園があったのか。
それにしても、戻って来たのだろうか。こちらの私は死んだはずなのだけど…此処にいてもいいのか。
その答えを知っているであろう腕を掴んでいる手の持ち主は、周囲を見渡して警戒している。
「そろそろ腕離してくれないかな?」
「っあぁ、ごめん。」
どうやら特に異常はなかったらしい。漸く自由になったと腕を擦って近場のベンチに腰かける。中嶋君は隣に座ることなく、少し距離をあけて私の前で立ったままだ。
視線で説明を促してみるが、口を開けては閉じるの繰り返しで一向に進まない。その間に頬をつねったりしてみるがただ痛いだけ。どうやら夢とかではないらしい。
いや、夢だった場合道端で寝てるってことになるから今の状態の方がマシか?
「ホント、ごめん。」
「それは何に対しての謝罪なの?」
やっと発したものの、現状を説明するものではなく返答に困る。少々棘があるのは許して欲しい。
何もかも把握出来ない中で過ったのは微かな期待。ここが現実なら、もしかしたら。
「麗には会えないよ。」
「…何も言ってないんだけど。いい加減説明してくれないかな?」
願望を砕かれ最早八つ当たり気味になってしまう。一目くらい麗君の元気な姿を見られたらって思ったのに。
「改めて自己紹介させてほしい。俺はこの世界の管理人524番だ。」
爆弾発言いただきましたー。




