サボりは良くないよね。
無事に冬休みを終え。
ピンッと張り詰めた空気の教室が居心地悪くなってきた今日この頃。
移動教室の途中で遭遇した光景に全力で逃げ出したい衝動に駆られる。
「恭介待ってよ!」
「五月蝿い。もう付きまとわないでくれ。」
これ見たことあるよ。ゲーム終盤にある国立君ルートの修羅場。
英司の時もだけど、何故先生が回収しないイベントに私が遭遇しているんだ。社君は絢子がいるからいいとして、真下君なんか姿すら見ないけど。差が有りすぎじゃないか?
それにしても、このイベントの詳細が思い出せない。ゲームではそこまで国立君が好きではなかったから攻略も結構雑に済ませたのが仇となってしまった。
「ん?大澤?」
「…ドーモ。」
見つかってしまった。巻き込まれると次の授業をサボってしまうことになるから上手く抜け出さないと…。
「貴女誰よ?」
「翔の幼馴染みです。」
「あぁ、数本君の。丁度いいわ。貴女からも恭介に言ってやってくれないかしら?」
"数本翔の幼馴染み"はなかなか便利だな。多数相手だと捩じ伏せられそうだけど、個人相手ならだいたいが納得してくれる。英司と仲良くなり始めた当初も結構妬まれたけど、その言葉で大人しくなってくれた子も多かったし。ライバルにならないと思われたのかな?実際は若干強制で告白されたけど。
「何かあったんですか?」
「恭介にバンド辞めてもらいたいのよ。」
「…はぁ?」
何を言ってるんだこの人。あぁ思い出した。
国立君ルートのライバルキャラの元カノだ。
彼は高校に入学と同時にバンド活動を始めている。それを切っ掛けに破局した2人。国立君は元カノのことなんて未練もなく音楽に没頭、そのルックスも相まって元々の人気が更に上がる。
一方元カノの方は未練タラタラ。でも他の女の子に見向きもしないしファンへの対応も最低限。いつかまた隣に立てると信じて過激派のファンと行動し彼の動向を監視していた。
そこで香織先生の登場である。本来のストーリーだと確かこの時期に2人が噂になってすぐに元カノが突撃な流れだが、夏休み前から噂になってたし、それからずっと付きまとっていたのだろう。国立君御愁傷様である。
「国立君がバンドを続けることに問題が?」
「えぇ。これ以上続けてファンも増えたら、彼がどんどん遠くなってしまう。彼の隣に立っていいのはアタシだけよ。」
本人を前にしてこの自分勝手な発言は如何なものかと。ほら、国立君の眉間に皺寄ってるじゃん。彼の中ではもう終わったことなんだよ。
というか今チャイム鳴ったからね。アンタ達のせいでサボり決定だよ許さん。
「国立君は女を見る目がないですね。」
「俺か?」
「そうですよ。こんな自分だけが国立君に相応しいとか言っちゃってる残念な女が元カノとか。私の方がまだ良い女ですよ。」
「なっ!?」
彼の視線がちょっと痛い。君の為に発言してるんだ、私が良い女じゃないことくらい分かっているから今だけ許してくれ。
元カノの方は見事に挑発に乗ってくれたようで安心。折角だから試したいことがあったんだよね。
目の前で振り上げられた手に、怒りの激情を孕んだその瞳に。
私はちょっとだけ楽しくなった。




