メリークリスマス。
いつもありがとうございます。
だいぶ寒くなってきて風邪ひきそう…。
この扉の先に彼がいる。
あとは若い者同士でなんてお見合いで聞くような台詞をコッソリ囁いて篠崎さんは静かにいなくなった。本当に2人なの?
このまま悶々としていてもキリがない。覚悟を決めて恐る恐る扉をノックする。
コンコン。
………。
「…。」
あれ?部屋にいるって言ってたよね?だから案内されたんだよね?
コンコン。
「…なんですか。嗤いに来たんですか。もう散々嗤ったでしょ?どうせクリスマスに仕事のある残念な男ですよ。僕だって仕事が休みなら…せめて午前だけならっ!すぐさま紫帆に会いに行って完璧なエスコートのもと今度こそお付き合いに了承していただけたらって思ってたのに…!こうしている間にも紫帆は違う男と過ごしていたらと考えると…!」
うわぁ、だいぶ拗らせてるなぁ。
と思うと同時に凄く恥ずかしい。南條さんは篠崎さんだと思ってるみたいだけど、声を発していない時点で違う人の可能性も弾き出して欲しい。
というか、違う男ってなんだ。国立君か?いや、英司?はたまたぐっちー?私の周り男しかいないみたいになってる嫌だ。
コンコン。
「もうっ!いつも通り勝手にはいっ!?」
「最初のノックで確認して欲しかったです…。」
放置してたら更に恥ずかしいことを言いそうだったのでもう一度扉を叩けば、結構な勢いで南條さんが飛び出してきた。こちらから押すタイプで良かった。でなければ今頃扉とキスしてたところだった。
「本当にすいませんでした。」
「気にしてないんで頭上げてください。」
向かい合って座って早々に頭を下げられ、物凄く居たたまれない。正直色々気になる部分はあれど、自爆したくはないので淹れて貰った紅茶を手にして自分を落ち着かせてみる。あ、これ、お礼で買った時の茶葉と同じだ。本当に好きだったのか。
「紫帆には情けない所を見られたくなかったけど…。」
「見たというか、聞いたというか…。本当に気にしてないんで。」
それはそれで意識されてないみたいで云々呟いているけどスルーだ。
話題を変えようと傍らに置いていた袋をテーブルに乗せれば南條さんは黙って視線を移してくれた。
「これは?」
「クリスマスプレゼントのお礼といいますか、私からのクリスマスプレゼントです。」
「僕に?」
「目の前に差し出してるのに他に誰がいると?いらないなら篠崎さんに渡してきますけど。」
私の言葉に素早く袋を回収した南條さんは結構な音を立てて中身を確認しだした。そんなに焦らなくてもプレゼントは逃げないし盗られないけど。
ギフトボックスから取り出された手袋は深めの青に銀の刺繍が入ったシンプルなものだ。少し女性寄りな気がしないでもないが、表面上紳士な彼なら品良く身につけてくれると思ったのだ。
手を通して、外して。終始無言でその動作を何度か繰り返した彼は、そのまま顔をこちらに向けた。その表情はなんというか、子供みたいだ。
「ありがとうございます…!まさか紫帆から貰えるなんて…!」
「よ、喜んでもらえたなら何よりです。」
本当に嬉しそうにしてくれてるので一安心。このまま会話は続行出来そうなのでもう1つ、ついでに話してしまおう。
「南條さん。」
「ん?何だい?」
「私は、南條さんとお付き合いすることは出来ません。」
「っ!」
言った途端にガラリと変わった表情に心苦しくなる。ただまだ絆されてはいけないのだ。それに続きもちゃんと聞いてもらわねば。
「私はまだ南條さんのこと何も知りません。」
「…うん。」
「だから、まず貴方のことを教えてください。」
「え?」
「貴方のことをもっとよく知りたいと思うくらいには、私は貴方を気になっています。」
ボフン、と音がするんじゃないかってくらい勢いよく向かい側に座る彼の顔が赤くなる。そんな私もきっと相当顔が赤いに違いない。
まだ好きだと伝えたわけではないのに嬉しそうにする南條さんは何かを閃いたらしく、私の荷物を持ち、部屋から出るようにと背中を押してくる。このまま外で食事をして送ってくれるらしい。
まさか向かった先が南條さんの実家で、彼の両親に挨拶してからの一緒に食事なんて、この時の私は思いもしない。




