これにて自由の身。
「アレで良かったのかい?」
マスターが確認してくるが首を縦に振るだけだ。
私の望んだお礼を言った時の97番さんの顔は忘れないだろう。笑顔で対応はしてくれたけど、目が面倒くさいと隠すこともなく語っていた。
残された私と南條さん、そしてマスターはそのまま教室の隅に椅子を移動させてお話中。血塗れだった制服は新品のように直され、床の血痕も片付けられている。先程ここで修羅場があったとは思えない程穏やかな時間が流れていた。
「いいんです。代理人さん達にはこれからご迷惑にしかならないから申し訳ないですけど。」
「散々紫帆に迷惑かけてるんだから、あれくらい妥当でしょ。」
「厳しいなぁ…。」
私がお願いしたのは2つ。これから先万が一同じようなトラブルが発生しても巻き込まれないように情報の提供をしてもらうこと。
「彼女がマトモな思考を持てるようになるとは思えないけど。」
「そこは…結花ちゃんを信じるしかないですね。」
もう1つは、結花ちゃんの更正だ。管理人さんの生活する空間で監視と教育を行ってもらい、無事更正できたらこちらの世界での生活を許可して欲しいとお願いした。それを言った瞬間の結花ちゃんと97番さんの表情の正反対さは思わず笑いたくなるほどだった。"アタシ頑張る"って言ってたけど、多分相当厳しくなると思う。期限も3ヶ月としてみたけど、戻ってこれる可能性は低いだろうな。
それでも彼女に賭けたいと思ったのは一種の償いだ。向こうで仲良くすることを諦めて逃げてしまった私の。
「今まで本当に申し訳なかったね。残りは全てこちらで片付けるから、残りのストーリーを楽しんでおくれ。」
"ルートはこのまま変わらないから"と言い残してマスターも消えてしまった。そうか、翔ルートで最後まで行くのか。どのエンディングだろう。既にお付き合いはしてしまっているからノーマルエンドでないことだけは分かるけども。
まぁ、もう自由なんだしひっそり観察すればいいか。個人的にバレンタインイベントが楽しみである。クリスマスは補習の帰りにイルミネーション見るくらいで特に進展はしないし。
卒業後も気になるけど、外部受験で実家も出てしまうから香織先生とはもう会えなくなるのか。それはちょっと残念な気がする。本物の香織先生と1回だけでもお話してみたいなぁ。
そういえばさっきから隣がやけに静かだ。会話にも参加せず私にちょっかいかけるわけでもなく、何か難しい顔して考えている。そこまで複雑な内容の話ではなかったと思うけど。
「…ねぇ紫帆。」
「なんでしょうか?」
「ストーリーとルートって何?」
しまった。その辺りの説明するの完全に忘れてた。




