え?バッドエンド?
「現状は結花ちゃんが思っているより厳しいよ。」
「はぁ?そんなわけないじゃない。」
「そもそも、結花ちゃんは向こうでは亡くなっているんだよ。」
病院に駆け付けた時のことも、お葬式のこともちゃんと思い出せる。よく辿れば相澤さんみたいな子が参列してたな、とか。
誰よりも麗君が泣いていたなとか。
「嘘よ!だってあの人が助けてくれて…。」
「残念だけど本当だよ。あと相澤さんのことだけど、結花ちゃんと仲良くしてた子だったみたいだね。結花ちゃん1人じゃ寂しいだろうから連れてきたんだって。」
もう2渡と会えないけど、と続ければ相澤さんの最後に立ち会ったのだろう、結花ちゃんの顔が青くなっていく。微かに聞こえた"美樹"は、恐らく相澤さんの本当の名前だろう。
「それと、例え結花ちゃんが生きていようともう向こうに戻ることは出来ないよ。」
「え?」
「私も結花ちゃんも、もう麗君には会えないんだよ。」
口に出してどうしようもなく寂しくなる。
マスターに説明を受けた日に少しの希望を持って聞いたそれは、やっぱりなという解答で。それならばと無理を承知で代理人に麗君の記憶から私の存在を消してもらえないかマスターには頼んだ。
麗君が別の人と幸せになってくれるのなら私の存在なんて。そう思っているはずなのに、結花ちゃんが羨ましくてしょうがない。彼の思い出の中に存在し続けることが出来るのだから。
「アタシは戻れるもん!あの人が帰してくれ「いい加減にしなさい!」」
「自分に都合の良いことだけ信じてそれ以外には耳を貸さないなんていつまで子供でいるの?そんな上手い話する得体の知れない存在なんて怪しい以外言いようがないじゃない。私だけでも許せないのにお友達まで巻き込んで帰らぬ人にして何の罪悪感もないの?」
私が元気?平気そう?そんなわけあるか。
既に向こうでは私は亡くなったとされている。それは相澤さんも同じだ。いくらこちらで生きているとはいえ、実行犯はあの管理人とはいえ、彼女が殺したも同然。相澤さんに至ってはまさにそうなのだけども。
「なんで貴女に説教されなきゃいけないの!?全部貴女が悪いんじゃない!お兄ちゃんはアタシのものなのに!」
「説教されるだけのことをしているからでしょうが。麗君は誰のものでもないし。それに、人殺しなんかを麗君が選ぶわけないでしょ。」
「ひっ!?」
「何驚いた顔してるの?相澤さんは結花ちゃんの意思で、消したんでしょう?邪魔だから消したんでしょう?最低ね。」
このまま煽り続けて彼女が自棄を起こしてくれるといいんだけどな。立場上生徒である私から手を出すのは分が悪い。神田先生が来るより先に誰か駆けつけた場合、先生である彼女から手を出したと思わせないと。問題になって拘束なりされればそれを人質に神田先生と交渉も出来るかもしれない。
大嫌いな人間からの言葉はやはり受け入れたくないのだろう。頭を振り乱し拒絶するかのようにイヤイヤをする彼女だけれども、流石に人殺しと言われてショックを受けたのか反撃の様子は見られない。
このままマスターが来て保護するのかなーなんて少し気を緩めたのがいけなかった。
背中への衝撃と強烈な痛み。
自分の体を突き抜けている鋭く光るものを視界に入れて、私は崩れ落ちた。




