急速に色を無くす。
「そうだよ。香織先生は結花ちゃんだ。」
「じゃぁ、相澤さんは…?」
消えた彼女。消された彼女。あの時の会話を思い出す。
ゲームオーバーだと言っていた。次は私を利用するって言っていた。何に使うのだろう。中身が結花ちゃんなら、寧ろ利用するより抹殺したいんじゃないだろうか。やっぱり彼女がこの場に留まってくれていれば良かったなぁ。
「彼女は結花ちゃんのお友達だよ。結花ちゃん1人じゃ寂しいと思って連れてきたんだ。この世界のことも知っていたからね、喜んでついてきてくれたよ。なのに僕との約束を破るなんて酷いと思わないかい?大人しくしてれば結花ちゃんが選ばなかった1人くらいあげても良かったのにさ。逆ハーって?笑えるんですけど。」
「…つまり、サポートで友達召喚したけど、結花ちゃんに手を挙げたのが許せなくて元の世界に返したと?」
「半分正解かな?彼女はもうどこにもいないよ。」
「…は?」
笑顔でとんでもないことを次々と放つ目の前の男に開いた口が塞がらない。望んで来たとはいえ、約束したからって、本当に消されるなんて思ってもみなかっただろうに。逆ハールートがあるなんて勘違いしてたからにしてもねぇ。もし早い段階で私が相澤さんに訂正出来ていれば助かったのかな。こんな面倒な展開になることが分かっていれば何も知らずに相澤さんがサポートしてれば…。いや、中身が結花ちゃんな時点で私が無関係でいるなんて無理か。
「相澤さんは香織先生が結花ちゃんだって知っていたのですか?そもそも、結花ちゃんはどこまで知ってるのですか?」
「結花ちゃんだってのは知らなかったよ。自分がヒロインになれなくて結構悔しがってたみたいだからいつか何かやるとは思ってたけど、本当にやるなんて思ってなかったし。だから夏のあの日、君が身代わりになってくれたのにはとても感謝しているよ。君もモブに助けてもらえたから失わずに済んだしね。」
やっぱり南條さん達はモブなのか。レベル高過ぎでしょ。そういえば、何かあったら相談しろって言われてたなぁ。
というか、結花ちゃんについては教えてくれないのか。
「私が翔が好きだって知っていたから奪って、悔しがる姿を見たかったと?」
「そうだね。そこまで残念がっていないのが予想外だけど。でも、僕は優しいからアフターケアで君に1人あげたんだ。感謝してほしいね。」
「1人?…まさか英司?」
「正解。翔君と英司君の中身を少しいじらせてもらったんだ。愛情のベクトルを結花ちゃんと君に向けるようにね。」
ガツンとおもっいきり頭を殴られた感覚と、目の前の人間に対する恐怖。
そんなのどう頑張っても私に勝ち目などないじゃないか。
さっきの英司は本当に私が好きでさっきの告白をしたわけじゃなくて。2人の話しかしていないけど、もしかしたら他の人間だって。真下君は相澤さんを大人しくさせる為だったのかもしれないし、社君は絢子を遠ざける為に操作されたのかもしれない。もしかしたら私のこの気持ちだって…。
もう何が本当なのか分からなくなってきた。
「ははっ。で、貴女達は私をどうしたいんですか?悔しがればいいんですか?消えればいいんですか?」
負けを認めてそちらが満足するならそれでいい。結花ちゃんの前で泣き叫んであげたっていい。消えろというならそれでもいい。相澤さんみたいに誰の記憶にも残ることなくいなくなれるなら、後ろ髪引かれることもないだろう。
全てを疑いながらこの先を生きるよりは、きっとずっといい。




