アナタはだぁれ?
無理矢理な急展開です、すいません。
いつも読んでいただきありがとうございます。
「ごめん英司。私は君の気持ちには応えられない。」
頭は真っ白にはならなかった。言葉も声にならないなんてこともなかった。
酷く淡々とその言葉を口にできてしまった。
目の前にいる彼は何の反応も示してくれない。いや、私がちゃんと顔を見れなくて実際は変化があったのかもしれない。
ただ続く沈黙がじわじわと私の首を絞めていくようで、だんだん焦りが生まれてくる。
「翔がす「違うよ。」」
「私は誰も好きじゃない。誰とも付き合わないの。」
何回目か分からない台詞を遮り自分に言い聞かせる。
私の気持ちは周りにバレバレなのに、どうして本人は気付いてくれなかったんだ。ただ苦しいだけの残りの高校生活ならいっそ今ここでゲームオーバーでいい。今すぐ帰りたい。
「本当にごめん。」
やっぱり彼の顔を見てなかった。立ち去る瞬間に見た彼は泣いていた。それを止める術など持たない私は逃げるようにその場をあとにした。
「なんでこうなるかなぁ…。」
先程より更に静かになった廊下を進む足は遅い。
今まではそんな雰囲気になっても上手く誤魔化せてたのに。そもそもなんで私がイベントこなしてるんだ。もっと言ってしまえばなんで先生は卒業まで待てなかったんだ…!最終的にはなんで私はこの世界に来たんだ…!?
「大澤さん。」
最早八つ当たりレベルな暴言を内側で吐き出し始めたところで声を掛けられた。ここ最近聞く回数が激減したその声に振り返れば今話題の香織先生だった。その表情は泣きたいのか怒っているのか、物凄く歪んでいる。返事を返すよりも早く腕を引かれ、すぐ横の空き教室に連行されてしまった。なんなんだ、今日は厄日か?
「どうして悔しくならないの?どうして悲しそうにしないの?」
腕を解放されて早々に言われた言葉は怒りを含んでいた。まるで私への嫌がらせを今までやってきていたみたいじゃないですか。相澤さんに喧嘩売られてた時も何も反応なかったから、違和感はあれどただのゲームのキャラだと思っていたんだけど。
「貴女は…誰ですか?」
翔攻略のライバルキャラになりかねない私だけど、ただのキャラなら知識も持ち合わせていないから正規のライバルキャラと話が進むはず。それをわざわざ私にベクトルを向けて正規を無視しているあたり、彼女の中身は私を異物と認識している。上手く誘導して化けの皮を剥がしたいところ。
「すとーっぷ。」
「…神田先生?」
折角気合い入れて目の前の人間と腹の探りあいをしようと思ったのに邪魔が入ってしまった。香織先生と共に噂になっている神田先生は不気味なくらいの笑顔で香織先生に近付きそっと肩を抱いた。恋人か。
「君は戻ってて。僕が全て説明するから。」
「でもっ!」
「大丈夫。彼女に祝福は施されていない。僕達をどうにかしたくても何も出来やしない。」
半ば強引に香織先生を追い出した神田先生に違和感。
ゲームの中で彼は"俺"だったはずなんだけど。
それに祝福って何?
「さぁここからは僕が相手をしよう。」
「いや、あの、私帰りたいんですけど。」
「嘘はいけないよ。それに君が知りたいことを僕は全て知っているからね。」
「はぁ…。」
芝居がかった大袈裟な振る舞いで話す彼は残念なイケメンだ。だがふざけているようで、一切隙がない。最早別人だろうってレベルだ。そしてムカつく。全部知ってる?そんなの、神田先生が私を此処へ連れてきたってことになるじゃないか。
「正解。僕が香織先生と相澤さんと君を連れてきたんだ。」
声に出してないはずの私に大きく丸を作って答えた彼こそ何者なのだろうか。




