勘弁してちょうだい!
「まだ翔と仲直りしてないの?」
「そんな感じかなぁ?別に喧嘩したわけじゃないんだけど、なんとなく気まずいような…。」
壁ドン事件以降翔からの接触は無く、既に1ヶ月以上経過している。口には出さなくても流石に可笑しいと思う人が出てくるかなと思ってはいたけど、直球で聞いてくるとは。
バイトもないフリーな放課後に私のクラスに顔を出した英司は開口一番そう斬り込んできた。
「翔に探ってこいとでも言われたの?」
「いや。なんか百面相する回数やたら多くて気持ち悪かったから観察してただけ。」
「気持ち悪いって…。」
なかなか酷い言われようである。まぁ、様子が可笑しいと気になりはするだろうけど。観察して原因が私って分かるもの?もしかして私の名前とかボソボソ言ってたりする?やだ、そんなの気持ち悪い。
「そういうわけで、かくれんぼをしよう。」
「どうしてこうなった…!?」
人気のない廊下で私は叫んだ。小声で。
英司の意味不明な発言にアホ面するしか出来なかった私は、そのままズルズルとF組へ連行され絶賛かくれんぼ中だ。メンバーは攻略対象5人組に私と絢子、そして香織先生である。補習組が気分転換にとごり押しして始めたコレは、鬼である香織先生が全員を見つけたら補習を大人しく受けると真下君が言い出した通り、補習に関係ない私達も見つけない限り終わらないらしい。
英司が私を参加させたのは時間稼ぎだろう。そうまでして補習したくないのか。というか絢子と社君は帰ったからね。先生がベランダに出てカーテンを引いて数え始めてから皆一目散に飛び出していったけど、あの2人荷物持って私と一緒に最後に教室出たからね。私もそうしようとしたら絢子から後で話聞かせろと脅されたせいでそのまま参加。ツラい。
残りの4人が何処に向かったかは全く検討もつかないので、とりあえず特別教室棟に足を進める。隠れる場所なんて限られるだろうから皆もこちらへ逃げ込んだと思うので、場所が被らないようにしないと。
3階に到着して階段から一番近い視聴覚室へ迷い無く足を踏み入れる。そろそろ香織先生が動き出すはずだから悠長にはしていられない。
この視聴覚室は最近ぐっちーと動画確認をするのに使わせてもらっている。広さもそれなりなので少し体を動かすにも丁度良い。
そしてこの部屋は沢山の機材が置かれている場所でもある。その中の1つ、演劇部が使う機材や大道具のまとまっている箇所へ近づく。
ぐっちーに教えてもらった通りに大道具の裏の細工をいじると、確かに人の入れるスペースが現れる。なんで部員でもないぐっちーが知ってるのか聞けば、なんとフラ子が演劇部だったらしい。見た目ギャルっぽかったのに意外だ。
どうやらこの大道具、内側からもちゃんと開くようになってるみたいなので安心して隠れられそうだ。暗いから作業しにくいけど、そこはスマホさんの出番である。
しかし、いざ行かんと片足突っ込んだところでいきなりドアの開く音がした。香織先生が来るにしては早すぎると視線を向ければ、
「悪い、一緒に隠れてもいいか?」
「…国立君。」
走ってきたのか少々息の乱れた国立君が素早くこちらに歩いてくる。どんな状態でもイケメンですね羨ましい。
「え!?ちょっと!?絶対見つかるじゃん!やだよ。違う教室行ってよ。」
「2階にいたんだが、近くで翔が捕まってる声がしたから逃げてきたんだ。他へ移動する時間もない。」
そう言いながらズンズン近寄ってきてあっという間に私の隣に。え?コレに一緒に入るの?不可能ではないけどかなり密着するんですけど。バレたらファンに殺されそう。
「せめて別の場所にしてよ!2人はキツイって!」
「大きな声出すな。何もしない。」
いや何かあったら私の命危ないから。既に危ないから。
片足突っ込んだままの私を一回退けた彼は先に中へその身を隠し、そのまま私を引っ張って扉を閉めた。
え?本気ですか?




