実はまだ踊ってました。
遅くなってごめんなさい。
いつも読んでいただきありがとうございます。
「紫帆、帰るぞ。」
翌日の放課後。
バイトもなく友人達にも用事があってぼっちな私を呼んだのは翔だった。特に何も約束していないのに珍しい。補習はないのかな?
「約束してないのにいきなり?」
「今さっき母さんから連絡来て夕飯お願いできないかって。」
「また随分急だね。大丈夫だと思うよ。お母さんにも連絡しないと。」
「いや、おばさんには既に連絡したらしい。」
それなら安心だ。以前急に決まった時は、おかずの量が足りなくて翔に奪われた思い出がある。今回は争奪戦せずに済むだろう。
補習の有無を聞けば今日は職員会議で無しとのこと。そういえば担任がそんなようなこと言っていた気がする。
まとめた荷物を手にクラスメイトと挨拶を交わし教室を出れば、いつからか当たり前になった微妙な距離感を保って翔と歩きだす。
先日はだいぶ浮かれてしまったけど、この距離感がそんな私に現実を突き付ける。春はもう少し近かった。少しずつ、確実に隙間が出来ている。それが何を意味するか分からない程馬鹿ではない。
「お、ぐっちーの相方じゃん!次の動画楽しみにしてるよー!」
「この前のダンス良かった!ぐっちーにも伝えといて!」
昇降口に着くまでに擦れ違った生徒はぐっちーの動画の視聴者さんだった。あれからちょくちょくぐっちーに頼まれてお手伝いをしているのが広まっているらしい。フラ子達と活動していたのが文化祭を機に不可能になってしまったからね。勿論身バレしないように工夫はしているけど後夜祭に参加したうちの生徒には隠せず、こうして声を掛けられることもある。
そんな人達の対応をしていたら翔は既に靴を履き替えていて。慌てて駆け寄れば少し不機嫌な翔と目が合った。
「随分人気だな。」
「ぐっちーがね。私はオマケ。」
そう言ったきり自宅まで会話はなかった。途中隣に目を向けてみたけど、特に変わった様子もなく。帰宅して2階の自室へ向かう時もさっさとリビングの方に消えていくし。
私が有名になるのが嫌なのだろうか。彼の設定は所謂天才。物事全てをそつなくこなせるが少々性格に難あり。常に注目の的でそれに辟易しているが、いざ別の人間にスポットライトが当たると面白くないと機嫌が悪くなる。昔の事を探っていた時は私に対してそんな態度はなかったって言われたけど。
「おい紫帆遅ぇよ。」
「うわぁぁ!?なんでいつもノックしないのよ!?私が着替えてたらどうするわけ?」
「お前の裸とかウケる。」
「どういう意味だコラ。」
完全に馬鹿にされてるのが悔しいが、お腹もだいぶ空いてるのでグッと堪えて扉へ向かう。
がしかし、
「なぁ紫帆。」
くるん、と。
立ち塞がっていた翔に上手いこと誘導され壁際に。
ん?壁?
「わぁ、壁ドンだ。」
「は?ドン?」
何故だ。何故私は翔に壁ドンされている?




