楽しいって思えたら成功だと思う。
ライトに照らされてる。
この空間全ての視線が集中するこの場所で、私はこの世界に来て初めてちゃんと楽しめた気がした。
沈黙、のち、割れるような拍手と声援。
それは私とぐっちーが成功したことを明確にする何よりの証。
ガチガチで所々小さなミスを連発した私を完璧にフォローしたぐっちーは素晴らしいとしか言いようがなかった。その安心感から余裕が生まれた私は、分かるところだけで良いからと頼まれた歌の方も全部歌いましたよ。歌詞は全部覚えてたからね。
アンコールも無事終えて袖に引っ込んだ私とぐっちーはガッチリと抱き合う。肩が少し濡れてるのは気付かないフリをしてあげよう。小声だけど繰り返し紡がれる感謝の言葉に私も涙目だし。
それにしてもぐっちーは本当に凄かった。これは動画が人気なのも納得だ。
私も楽しかったし。筋肉痛になりそうな予感もするけど、後悔はしていない。
「マジありがと。大澤いなかったらボロボロだったよ。」
まだ後夜祭は続いているがこの興奮を沈める為に外で涼んでいると何回目から分からない感謝をぐっちーからいただいた。
「いや、ぐっちー凄かったよ。それに楽しかったし。残る問題は…。」
数人分の足音が聞こえて私は口を閉じた。私がいなくなったら来るかなって思ってたけど、予想は外れて姿を見せたのはあの3人だ。フラ子の顔が怒ってるような泣きたいような、要するに汚い顔だ。2人はバツの悪い顔で大人しくしている。
私は英司の所に行こうかなと逃げようとしたけどぐっちーがそれを許さなかった。うーん、修羅場は勘弁なんだけど。
「ぐっちー…。」
「俺、すげー楽しかった!お前達が断ってくれて良かったと思ってる!ありがとう!」
フラ子が口を開いたけど、それに被せるようにぐっちーが満面の笑みで3人に爆弾を落としていく。この世界ってイイ性格してる人多いよね。
「ぐっちー君ごめん。私達…。」
「全部大澤が教えてくれたから何も言わなくていいよ。謝られても正直許せないけど、どうせ謝るなら大澤にしてくれよ。こいつお前らの会話聞いた後から残りの曲死ぬ気で覚えてくれたからな。」
バケモンだよなーコイツ!と笑いながら私の肩を躊躇いなく引き寄せるぐっちーに焦る。この人今何してるか分かってる!?フラ子もう完全に泣いてるからね?私もこんな状態を誰かに見られたらマズイ。完全に誤解される。絢子に知られた場合は爆笑されそうだけど。
「アンタ覗き見とか趣味悪過ぎ。」
「あんな場所で話してたら誰に聞かれても可笑しくないと思うけど。たまたま私だったのが君達にとって悪い方に向かっただけで。」
ゆう君とやらが私を軽蔑するような目で見てくるけどさ、君達のしたこともだいぶ趣味悪いと思うよ。
「もしかして大澤さん?もぐっちー君の人気に肖りたかったんじゃないのぉ?」
「それなら最低ねっ!チャンスと思ってこの状況を利用したのね!」
真奈美ちゃんの発言にハッとしてフラ子も一緒に反撃してくるけど、
「そこまでだよ。」
さぁ、ヒーローの登場だ。




