内緒話はほどほどに。
その後適当な所で南條さんと別れた私は自分のブースへ戻るべく廊下を駆け抜けている。思った以上に時間が経っていたのには驚いたけどまだお昼前だからピークにはなってないはず。急げば間に合うだろう。
昨日通れなかった近道をしようと覗きをしていた角まで来ると、また人の気配。もしかして告白再び?勘弁してくれ。
「マジぐっちームカつく。」
「いい加減落ち着きなよ…。」
今日は覗かないですぐ立ち去るつもりだったのに、知ってる人間の名前が出てきて足が動かなくなる。またぐっちー?
「後夜祭出ないって言えば困ると思ったのに…!」
「さっき見たけど普通だったね。他にアテがあったのかな?」
「それでも1日でどうにか出来るレベルじゃないじゃん?」
声から判断するに女子2人の男子1人。そんで、女子の片方は昨日ぐっちーにフラれた子だね。随分と怒っているようだ。
「アンタ達はどうするの?」
「私はどっちでもいいかなぁ?ぐっちー君と踊った動画あげれば私も有名になれるかと思ったけど今回のやつはあげるつもりないって言ってたし。」
「俺は真奈美が出ないならドタキャンでいいよ。」
フラれた子(もうフラ子でいいか)の名前は分からんが、もう一人は真奈美ちゃんというのか。そんで男子は真奈美ちゃんの彼氏か何かかな?
「じゃぁ断ろうかなぁ?ゆう君一緒に行こー。」
真奈美ちゃんが彼氏らしきゆう君と手を繋いで向こうの方へ歩きだした。フラ子はどうするのだろう。2人が消えてもまだその場にとどまっている。何も無さそうだし私もこのまま去るか?
「これで困ってぐっちーがアタシのこと気にすればいいのよ…。」
ポツリと呟いた言葉は大きくないものの、人気のない廊下ではよく聞こえた。そしてそのままフラ子も2人と同じ方向へ消えていった。
「ふぅ。内緒話は周囲をよく確認しないといけないよねぇ。私も気を付けないと。」
完全に人の気配がしなくなったので近道するために角から足を進める。手元のスマホを操作すれば先程の会話が流れてくる。
不穏な空気でしたからね、ちゃんと証拠は押さえましたよ。断られてショックを受けている所に更に追い討ちを掛ける感じになってしまうけど、これは知っておくべきだろうし。
「ぐっちーの残りの曲がキャラソンだといいんだけどなぁ。」
助っ人を頼まれて且つこんな状況を知ってしまった以上協力するしかないだろう。残りがキャラソンならきっと同じアニメのものに違いないから、曲を知っている分余裕が出来るはず。
問題は私のダンススキルだけだ。
「ファン嘗めんなよコラ。」
覚悟を胸にスマホを手に、ブースまで全力疾走した。
ぐっちーに会う前に流石に遅いと絢子に怒られたのは理不尽な気がしたけど。




