これ、相手が想い人なら最高なシチュよね。
「強引に連れ出してしまって申し訳ありません。」
振り返った南條さんが少し眉を下げて笑いかけてくる。手は校内に入ってすぐに離された。別に残念とかは思ってない。イケメンの隣きゃっほーいなんて思ってないよ、少しだけしか。
「大丈夫ですよ。寧ろ休憩多くなってラッキーって感じでして…。」
「なら良かったです。さて、何処に行きましょうか?先程F組のお化け屋敷とか言ってましたけど。」
「別にお化け屋敷に行きたいとかではないです。幼馴染みがいるから顔だけ見に行こうかなとは思ってますけど。」
「もしかしてあの時の?じゃぁ、あの先生もいるんです?」
小さく頷いて、ふと生まれた疑問。
「南條さん、あの時のこと覚えてるんですか?」
「覚えてるも何も、先生に手を挙げた女の子を止めようとして被害にあったなんてなかなか珍しいと思いますけど?」
「覚えてる…?」
何故だ。この学校の人間は誰も覚えていないのに。当事者の先生も翔も駆け付けてくれた絢子だって、私が足を滑らせただけだと思っているのに。
考えれば考える程分からなくて、気持ちが悪い。先生のバックにいる人がどういう意図で動いているのかサッパリだ。
「紫帆さん?」
「………。」
南條さんはモブ扱いだから特に操作しなかったとか?でもそうするとあの時あの場周辺で目撃してた人は全員記憶に残ってるってことで…。そうなると少しくらい騒がれるだろうし、やっぱりこの学校の人間だけが忘れてるのは…うーん…。
「紫帆。」
「ごめんなさい、ちょっと気持ち悪い感じがとれな…え?」
「気持ち悪い?保健室行くかい?」
「あ、そういう気持ち悪いではなくて、はい。えっと、南條さん?」
「ん?どうかしたかい?」
「いや、今、名前…。」
聞き間違いではないはずだ。今、紫帆って呼ばれた…?
「っ!?」
「あ。顔真っ赤。」
よく分からない展開に色々ついていけてないが、なんだこの人は!?そんな素敵笑顔で呼び捨てされるとか恥ずかしいからね!?真っ赤にもなりますよ?そして周りの視線がブスブス刺さってるからね?
なんでそんなに可笑しそうなんですか…。
「ふふっ。紫帆は可愛いねぇ。」
「あんまり呼んでくれる人がいないから慣れてないだけです…。からかわないでください…!」
「そんなつもりないんだけどなぁ。ごめんごめん。」
この場に翔がいなくて本当に良かった。こんなの絶対勘違いされて笑い話にされる。笑い話どころか、翔の中で南條さんが私の彼氏ポジションに収まってしまったら…。失恋確定していても色々ショックで立ち直れない。
急にフレンドリーになった南條さんに対応出来ず散々からかわれ拗ねた私は、またしても手を繋いだ状態でF組に向かうのである。
翔に遭遇するまでにこの手をなんとかしないと…!




