キラキラは駄目です!
「紫帆、お客様よ。」
目まぐるしく働く私に表から声を掛けてきたのは絢子だった。顔がニヤニヤしている。これは私にとって良くないことが起きそうだ。そもそも名指しで私を指名する人間が一般客にいるとは思えないけど。マスターかな?ちゃんとコーヒー淹れてるかの確認とか?
「なんか楽しそうだからそのまま休憩してきていいわよ。」
「委員長が許さないでしょ…。」
「もう攻略されてたから即OK出るわよ。」
絢子は本当に楽しそうに笑っている。何ですか攻略って…。
もう嫌な予感しかしないまま表に回り、絶句。
「篠崎さん、南條さん…?」
「あぁ紫帆さん久しぶりだね。」
「お久しぶりです。茶葉、美味しくいただきました。」
本日もマフラー絶好調なダンディ篠崎さんに、スーツではない少しカジュアルな、でも品のある装いの南條さんがいる。なんだろう、凄いキラキラしてる。横に委員長がいるけど、うん、攻略済みだわ。
「お久しぶりという程でもない気がしますが…。お二人は知り合いだったんですね…。」
「以前話した優秀な部下ですよ。私もまさか貴史が紫帆さんの恩人とは思いませんでしたけどね。」
確かに電話の相手を聞いた時に優秀な人間の話はしていた。確かに南條さんは優秀だと思う。顔面偏差値も中身もパーフェクトですよ。
チラリと南條さんに視線を向ければ素敵な笑顔。駄目だ、キラキラしている。精神年齢は28歳なんだ、ドキドキするのも許して欲しい。
「篠崎さん、白々しいですよ。紫帆さん、もしよろしければ一緒に催し物を見に行きませんか?」
「えっ!?お二人とですか!?」
「篠崎さんはこれから仕事があるので僕と2人ですが…。」
これは…ヤバい。南條さんと2人?こんなキラキラ爽やかイケメンと学校内歩くの?私刺されたりしない?大丈夫?
確認の為に振り返ると、とても良い笑顔の絢子が。凄く楽しそうに追い払おうとしているのが分かる。
「やっぱりお忙しいですかね?」
「うぇ!?いやっ大丈夫です!こんなちんちくりんで良ければ是非ともご一緒させてくださいっ!!」
ぎゃー!ションボリしている南條さんズルい!後ろから黄色い悲鳴聞こえるよ!?
「ははっ、紫帆さんはとても可愛いですよ。では行きましょうか。それでは篠崎さん、お仕事頑張ってください。」
そう言って篠崎さんに頭を下げた彼はそのまま私と手を繋いで歩き出した。大事なことだからもう一度言わせて欲しい。私と手を繋いでいる。南條さんが。
「しばらく帰ってこなくてもいいわよ。F組のお化け屋敷でも楽しんできたら?」
キラキラにやられて次々に悲鳴が上がる中、絢子の楽しそうな声に見送られ私は思わぬ長時間休憩をゲットすることに成功したのであった。
私、生きて帰って来れるのかしら…。




