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逆ハールートは存在しません。  作者: うかびぃ
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盗み聞きしてもいいかな。

いつも読んでいただきありがとうございます。

ストックがなくなってしまったので更新に時間がかかるかもしれないです。


翔のことが好きと認めても何かアプローチするわけでもなく、残りの夏休みをせっせとバイトに費やしている。

好きだけど身を焦がすような情熱的なものでもないし。そもそも負け戦、勝算ないのに挑むわけないじゃないか。元の世界に帰れなくてもそこはちゃんと理解してるからね。



「紫帆ちゃん。」

「あ、いらっしゃいませ篠崎さん。」



マフラーさえなければ素敵なオジサマなお客さん。すっかり常連になった篠崎さんは毎回オススメを頼んでくれるのでオーダーを取る必要がなくなってしまっている。

でも確か、今日が最後だって昨日言っていた気がする。



「今日が最後ですよね?」

「そうだよ。学べることは学んだしこれからに生かしていけるといいんたが。」

「篠崎さんなら出来ると思いますよ。熱心に取り組んでるのはこちらにも伝わってきますし。」

「嬉しいこと言ってくれるね。もし紫帆さんが教職を目指すのであれば是非同じ職場にいて欲しいね。」



教育について熱く語る篠崎さんへの対応が良かったのか、数日前からこうしてお誘いを受けることがちょくちょくある。かなり上から目線な物言いになってた時だってあったのに、彼は怒ることなく聞いてくれていた。



「そう言っていただけるのは私も嬉しいです。ただ私、調理の専門学校行こうかなって。ここでバイトさせてもらって凄く楽しいですし、調理師はなんだかんだ役に立ちそうですし。」



最近お店の調理場の方のお手伝いもさせてもらえるようになってから考え始めたことだ。

専門学校は外部だから多少勉学を優先しないといけないけどそこまで成績も悪くないし、何よりバイトを続けながら基本的なことを学んだ状態で入学できる(受かればだけど)。

バイトを辞めなくていいのは大事。お金大事。



「そうなのか。個人的には残念だが、働いてる紫帆さんは凄く楽しそうにしているからね。とてもいいと思うよ。」

「ありがとうございます。」



それから運ばれた料理に手をつけ始めた彼とそっと距離をおく。

以前お喋りを始めて止まらなくなり料理が冷めてしまってしょんぼりしているのを見てから、食事中はせっせと別の業務をこなすことにしたのだ。



別のお客さんの話し相手になったり、奥でマスターの手伝いをしたり、料理の基本を教えてもらったり。一人暮らしのOL生活でそれなりにこなせていたと思っていたけど、マスターの知識量半端ない。足元にも及ばない。

「高校生でそこまで知ってるのは凄いよ」って褒めてくれたけど、逆に恥ずかしかった。



そろそろコーヒーかな?と思い気付かれないように隙間から覗く。

お皿は綺麗になっている。なっているけど、ボソボソ聞こえる感じどうやら電話中のようだ。微かに笑い声も聞こえてくる。

どうしよう。すぐ終わるならコーヒー持っていってもいいんだけど、長くなるなら冷めてしまうからまだだよね。



うーん。それにしても何を話しているんだろう。

……。



「もうちょっと近付けば内容聞こえるかな…。」



終わりそうになったら引き上げてコーヒー淹れればタイミング良い感じになるからーなんて、盗み聞きする気満々な私はそのままコッソリ壁に張り付いた。





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