マフラーおじさんさんは普通でした。
オジサマもといマスターにバイトの件を二つ返事で了承してもらえた私は、その後気持ち悪いくらいのスピードで課題を片付け労働に勤しんでいる。英司に知られたら全力で引かれそうなので秘密だ。
「すいません、今日のオススメ1つ。」
さて只今絶賛接客中なのだが、目の前のカウンターに座るお客さんがなんか変だ。今夏なんだけど、なんでマフラーしてるの。
見た感じ40代前半?マフラー以外は極めて普通の装いで、纏う空気は凛としてる。本当になんでマフラーしてるの。
「はい、かしこまりました。」
とりあえずオーダーは受けたので奥に引っ込む。聞こえてたのかマスターは既に手を動かしていた。
「オススメ1つお願いします。」
「うん、分かったよ。」
完成には少々時間がかかるのでこの場での仕事は終わった。終わったけど、カウンターに戻るのもマフラーおじさんが目の前にいるのはなぁ…。
まぁ我儘を言うわけにもいかないので戻るしかない。おじさん以外にもお客さんは一応いるし、そっちに意識を持っていこう。
「お嬢さんは学生さんかな?」
作戦失敗。うわぁ絡まれたぁ、なんて思ったが表情には出さずに済んだ。誰か褒めてくれ。
「あ、はいそうです。近くの清蘭に通っています。」
「あぁ、清蘭ね。大学が併設されているから受験はそこまで苦じゃな感じかな?」
「そうですね、エスカレーターなのは有り難いです。ただ自分の進みたい道に行くためにはある程度の結果を残さないと希望の学部に進めないこともあるので、将来のことちゃんと考えてる生徒は必死だと思います。」
「お嬢さんはもう進路は決まってる感じかな?」
なんか凄い突っ込んで聞いてくる。自分の子供が清蘭受けるから気になるとか?だとしたら悪い印象与えるのもマズイよね?
「私はお恥ずかしながらまだ決まってないんです。受験生だから先生にもいい加減決めろとは言われてるんですけどね。」
「外部の有名大学にも進めるくらい進学に力を入れているみたいだし、教師側ももっとレベルを上げたいと思っていそうだね。」
「それで生徒に差がつきすぎるのもどうかと思いますけどね。」
現に難関大学に進学を希望する優秀な生徒が中心の特別クラス(A組のことである)が去年から導入されたらしいし。今はそれだけだが、数年後には学力ごとにクラス分けなんてこともあるかもしれない。
「そこは教師のレベル次第だろうね。まぁなかなか難しいだろうが。」
そこで丁度マスターから呼ばれ、完成した料理を持って再びマフラーおじさんの元へ。彼はにこやかにお礼を述べそのまま食事を始めた。
なんか、マフラーはともかく話せば普通にまともな人じゃない?
次回もマフラーおじさんとの絡みだけになりそうです。




